短編書庫
□たまには素直になってほしくて、
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「っふ、ふ、ぅ…!」
「ん、あぁ、これ?」
口の聞けない律に高野は勝手な解釈をするとグリッ、と中に入れていた指を折り曲げる。
「ん、んんっ」
どうしてこうなった、とか考える暇がない。
まあ状況的に分かることはヤられてる事となんか特殊な趣味を持つ人たちがよく口につけてるあれを自分の口にもつけられていることと色々緊迫されていることだった。
いつもなら、いつもならこんなはずじゃないのに。
いつもなら、もっと甘い───…
「おい小野寺、腰あげろ、いれんぞ」
高野のその一言により思考は遮られた。
「、…ッ」
ぐぷ、と音をたて高野の屹立が律の中に侵入してくる。
「ッ、ふ!ふぅっ…」
ゆっくりと、少しずつ時間をかけて律の中に入りきったそれはぴくぴく、と生き物のように動いていて なんだか生々しい。
(…でも、)
いつもなら、高野は少し間をおいて律が慣れてから動いてくれる。だから…
「動くぞ」
「ッ、!?」
そう、思っていたけど高野は間をおくことなくそのまま律動し始めた。
「ッ───!!、!」
声にならない悲鳴が、律の体内にこだまする。
「んんん、ん、んんー!!」
高野さん、もうやだ、
そう言おうとしても言葉にならない。寧ろ、これ以上喋ろうものなら例の道具が律の口を裂こうとする。
「ッ…は、小野寺…」
高野はそんな律の気持ちを知らずに 快楽を追って自己中心的に、腰を動かす。
(…あれ、こんなの、ちがう)
おかしいよ、こんなの。
いつもの高野じゃない。いつもの、情事じゃない。
こんなの───…
「…小野寺?」
高野は律の異変に気づくと腰の律動を止める。
「っ…ふ、ふぅうう…!」
律は、その緑の瞳からをポロポロと涙を流していた。
「…律、」
「…ぅ、ううっ、」
言葉にはならないけどひたすら泣きじゃくる。
するとしばらくして情事の最中とは思えないような気まずい空気を取り払うように重い口を高野が開いた。
「…道具、外してほしい?」
その問いに律はコクコク、と頷く。
「…そうか」
高野はそれだけ言うと嵌めていた手錠に、口の自由を奪っていたあの道具、その他もろもろを外していくと少し赤みのできた手首と浅い傷ができた口元に先程とはうってかわっての優しい口づけを落とす。
「…たか、のさ…」
自由になったその口で言葉を紡ぐと高野はぎゅ、と律を抱き締め「調子に乗りすぎた、わりい」と言うと ニヤリ、といつもの笑みを見せる。
「今ならいつもみたいに、優しくしてやれるけど…どうする?」
その問いに、いいえの答えは許されない。
「…はい、」
たぶん、きっと嬉しさか安心感かで紅潮しているであろう自分の頬の熱さを無視して高野に差し出された手を受けとる。
…はてさて、今回"いつもみたい"に 優しくしなかった高野の真意、とはなにか。
たまには素直になって欲しくて、
(たまには甘くお前から誘ってみろよ、)
(いつもみたいに、じゃ刺激が足りない)