SketDance

□安形先生と道流くん
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※入試面接パロ
※ギャグ…?←
※安+榛
※捏造有



「どうぞ」

その声と同時にガラッ、と俺は閉ざされていたドアを開いた。

「失礼します」

座っていたのは20代であろう、若い先生だった。
へえ……伝統校にもこういう先生っているもんなんだなあ、と俺は感慨深く思う。

「お座りくだせえ…ふあ」

……お座りくだせえ?
え、何聞き間違い?空耳?しかもこの人今欠伸を懸命に抑えていたような……

「……はい」

とりあえず、今のは忘れよう。
自分にそう言い聞かせ、俺はしゃきっと背筋を伸ばして座った。受験前に気を付けろ、って言われていたところだ。

「よし。じゃあ試験始めるぞー」

ゆ、緩い……しかもまだ始まってないとか……

「…はい…?」

「まずお前…榛葉道流?の志望動機を教えてもらおうかー」

無駄に挑発的だった。
もうこの人はこういうものだろう、と開き直り、練習した時のことを思い浮かべて口を開いた。

「はい。僕は去年の秋に文化祭に来て、学校の雰囲気に惹かれました」

第一人称を『僕』にすることもきちんと心がけた。

「秋…?そんなこともあったっけなー」

「はあ…」

というかこの人、深くまで聞いてこないの?例えば文化祭のどこが良かったのですかーとか。

「とりあえず次」

「……」

「趣味は?」

「そん…あ、料理です」

しまった。思わず『そんなこと聞くんですか』って言いそうになったじゃないか…。

「料理かー。男にしちゃあ珍しいな。どんなの作るんだ?」

「なんでも…ですけどケーキは特に作るの好きです」

初めてされた普通な質問に戸惑いながらも落ち着きを取り戻して答える。

「誰にあげるんだ?」

「友達です」

「……友達か…いいな」

「え?」

「道流の友達が羨ましいんだ」

なぜか呼び捨てにされた。

「そうです…か…?」

「俺お菓子作り得意な奴を嫁にしてえと思ってて…。お前ならぴったりだ」

「嫁…?え、嫁…?!」

「だからつまりな、「安形先生、そろそろ次の方、良いですか?」

妙に熱く語り始めた彼を止めたのは、室内に入ってきた別の教師だった。
時計を見てみると15分も話しているではないか。当初の予定は5分程だから、時間がかかりすぎだ。
それに、面接の効率が悪くなってしまう。

俺は教師の登場に少し安心しながらも、内心は安形先生のことについてなぜか気になっていることは否定できない。


心配そうな顔をしていた教師が出ていった。
また二人になる。

「えっと…安形先「お前入学したらすぐ俺のとこに来いよ」

「俺のとこ?」

「…いいから行け」

「……ありがとうございました」

ドアの前でそう言ってから外に出た。


廊下を歩きながら、不思議な人だったなあと改めて思った。あんなに不真面目に面接しても教師という職を持っているのだ。


ふと、先生が最後の方に言っていた言葉を思い出す。

『入学したらすぐ俺のとこに来いよ』

あれは一体どういう意味だったのだろう。俺にはさっぱり分からない。
でも、入学したら、と言っていたということは俺はもう合格確定なのだろうか。

いずれにせよ、俺は合格した後のことを既に考えていた。




安形先生のクラスでありますように、と。

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