SketDance
□信頼の本当
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「榛葉さん」
「何?椿ちゃん」
「このことなのですが……」
「あーこれね。俺もちょっと分かんないなあ」
なんだか近頃妙にイライラする。
道流と椿が話してる『これ』ってなんのことか俺にはさっぱり分からない。というかどうして二人が教えてくれないのだろうか。
まあ俺が会長として何もしないのが理由だと思うが。
「どうしたんですか?」
「なんか、背後から妙にブラックなオーラを感じるんだけど」
道流がこっちを横目でちらっと見ると同時に俺は胸の燻りを無理矢理抑えた。
「あれ?」
それが幸を奏したのか道流は不思議そうな顔をして辺りを見回す。
机を片付けるミモリン、道流の机、
「デージーちゃあああん!」
消しゴムを高速で切っているデージー。
どうやら道流の言うブラックなオーラとかいうのを発していたのは俺だけではなかったらしい。
そういえばこの行為、道流の料理のアシスタント決める時もしてたな。また例のぬいぐるみとかに何かあったのか。
「なにしてんの、怖いよ怖いよ!」
道流は構ってもどうせ何も変わらない上に自分にも仕打ちがくるのを忘れているのだろうか。
また、イライラし始めた。
さっきは道流と椿が俺の知らないことを話していたからそう思った。
しかし今度はどうだろう。相手は何も答えないのに構っているだけだ。しかも相手は女子。
こんなことで同じ生徒会メンバーを嫉妬している自分が恨めしくなった。
***
廊下を歩いていると向こうから安形の声が聞こえた俺は歩くスピードを速めた。
しかし、安形の姿が見えた瞬間俺は止まった。
だって、安形が椿ちゃんといたから。
俺と安形は正式に付き合っている。なのに、あの二人がいると、なぜか邪魔しちゃいけない、という気持ちになるのだ。
その上嫉妬だと思われるモヤモヤが胸を渦巻く。
無理だと分かっているが、あの笑顔は俺だけに見せてもらいたい。
俺は素早く方向転換し、先に何があるのかさえ忘れた階段を登った。
***
「帰るか」
「うん」
今日もまた二人がで学校を後にした。
「安形、話があるんだけど」
「話?」
「うん」
安形はあまり真面目に俺の気持ちを受け止めていないように見える。
「椿ちゃんとは何もないよね?」
「椿と?」
「だから、…俺じゃなくて椿ちゃんのこと…好きになったとか、そういうの」
「かっかっか。そんなことあるわけないだろ」
「…だよね」
本人に完全否定されたのなら俺がこれ以上しつこく問い詰める必要はない。
安形の言葉を聞いてほっとした。
それに、仮に嘘だったとしても俺は絶対そうは思えないから。
「お前こそどうなんだ?」
「俺?」
「なんか二人でこそこそやってんなーって?」
「生徒会の仕事だよ?」
「これとかあれとか言ってたじゃねーか」
「あ、あれは今度行われる…」
「俺はそんな話聞いてない」
「言ったし、安形が俺はやりたくないとかなんとか」
まあ寝てたからどうせ覚えてないんだろうけど。
「そうだったっけ」
「うん」
安形の意図が読めない。
沈黙が流れた。
「デージーは?」
「デージーちゃん?」
「女子として見てるとか、」
「俺はレディーとは付き合わないよ?」
「そうか」
安形はいきなり笑顔になった。
俺はと言えば、興味を持った暁に手伝ってくれるのかと期待していたのだが。
二人で肩を並べていつもの帰路を辿る。
俺はこの男が好きだ。ふと改めてそう思った。
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