SketDance
□その唇より温かく
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「おせーな…」
俺は腕時計を見つめる。これで5回目。待ち合わせ時間になっても康太―ムッツリーニ―はいっこうに現れない。
「はあ、」
溜め息をつく。
まさかあいつ、すっぽかしたのか?
すると、
「雄二」
背後から何かの声がした。
突然のことに驚いて振り返ると、康太が寒いからだろう、頬をほんのり赤めて立っていた。
「こ、康太」
「……お、遅れてごめん」
「き、気にするな」
まさかの二人とも声が上ずっていた。
「どこ行くか?」
このままでは折角の初デートが台無しにしまう、と俺は話を進める。
「俺はどこでもいい」
「…そうか」
「雄二は?」
「俺?」
忘れてた。俺、今日の為にみっちりプラン立ててきたんだった。
「…よし…!」
「……どうしたの」
「俺についてこい!」
どこかで聞いたことあるようなフレーズを口にして俺は康太の手をとった。
***
その後、『プラン』に従って俺たちは動いた。
康太は文句一つ言わずに、クリスマスネオンが光る街中をひたすら俺の手に引かれているまま。
俺に意見が言いにくいのか満足なのか分からないが、様子を見る限りは楽しそうだ。
「………雪」
康太がぽつりと言った。
俺は始め気のせいだろう、と思ったがそうでもなかった。雪は激しさを増してきたのだ。
「リアルホワイトクリスマスだな」
「…うん」
「なあ」
康太はは空を見上げたり掌に落ちた結晶を見つめていた。
「…抱きしめてもいいか?」
今の俺の心は楽しみな気持ちと恥ずかしさが半々。
「……」
康太は何も答えなかった。視線を下に戻したまま動かない。
でも、俺はそれが彼が拒否を示しているものだとは到底思えないのだ。
「康太」
伸ばした手を止めることはできず、俺は康太を抱きしめた。
「康太、好きだ」
「……雄二」
康太の頭を撫で、指で唇をなぞる。なぞった唇は冷たかった。
俺が温めてやる。
俺はそう呟き康太の口に自分の舌を入れた。
「……はぁっはぁ」
「…こうた、っ」
もっと、もっと君が欲しい。
いつも側にいるのに、告白の時にあんなに色々なことしたのにまだ足りない自分が恨めしくなった。
「……はぁっ」
寒空に、俺達の舌が交じり合う音と康太の喘ぎが響き渡った。
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