SketDance

□多分嫉妬したんだな
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椿との喧嘩なんて日常茶飯事だった。だからここでこっちが下手に出たら 「どうかしたのか」と逆に心配されて反発して、更に喧嘩が繰り返されるオチになるのは見えていた。それと同時に今回ばかりはヤバイかもしれないと も頭の片隅で思った。しかしだからと言って引き下がるわけにもいかず、臨機応変に対応することを知らず。その末に導きだした答えが黙りを決め込 む、という行動だったのだから仕方がない。

藤崎佑助と椿佐助は目下喧嘩中だった。

喧嘩のきっかけなんてほんの些細なものだったと思う。もう忘れてしまった。椿はまだ(と言ってもたった15分前以内のことだ)覚えているのだろう か。これはもう頭の取れたトカゲ…いや尻尾の取れたトカゲだっただろうかと、佑助は一人で頷く。

生徒会室の隅に押しやられた古いソファの後ろ辺りに佐助の机はある。その 席の右側に置かれた机だとか、向かい合わせ、あるいは左隣、またあるいは 斜め左の机に座っているはずの面々は、今はいない(椿に仕事を振られる前に 帰ってしまったのだ)。

念のため、もう一度だけそれを確認してから佑助はいかにも恐る恐るといった感じで佐助の方を振り返った。きっと椿も喧嘩の理由を忘れているはず だ、彼だって困って俺の方を見ていると思いながら。

しかしどうか。
佑助の予想と反して佐助は机に向かったまま。こちらなど気にしていなかっ たのだ!

「つーばき、おい椿」

堪らなくなって思わず話しかけた。

「聞いてんだろ」
「………」
「藤崎バレンシアお見舞いするぞ?」
「………」
「はいきたシカトー!睫毛野郎の新必殺技シカトきたよー!!」
「………」
「………………」

しかし返ってくるべき返答はなく、完全なる無視である。佑助もこれはさすがに頭にキた。

「…バ、バーカバーカバーカ!」

滲んできた視界を情けなく思いながら、またどうしようもなくなって適当な 言葉を絞り出した。が、変わりはない。くそっ、と小さく呻いて目を擦り溜 まった水滴を追い出した。そして開けた視界に再び入ってきた椿はくらりく らりと頭を揺らしていた。ようやくここで先程までの椿の行動の理由を理解した。

彼はいつの間にか眠っていたのだった。

「んだよ…」

喧嘩相手が眠っていたことを知って一気に現実に戻された気分をたっぷり数秒間 味わってから、再び湧いてきた感情は呆れよりも空回りしかけた怒りである。

見ていろよ、バカ。

少しだけ勿体ないとは思ったが。佑助は眠りこけている佐助の腰に飛び付いた。そしてようやく佑助は佐助に喧嘩にならない程度にかまってもらうことに成功し たのだった。


後で椿から聞いた喧嘩の理由は、俺が彼の仕事を邪魔したからだった。

マジでか!


Fin.

*****

愛露様、素敵すぎる双子ありがとうございます(^o^)
喧嘩してるけど仲良しな藤椿、とリクエストさせて頂きました。

初めて覗かせて頂いた時にキリ番踏んで、運命感じました(
リンク貼って下さると聞いた時はすごく嬉しかったです。
これからもよろしくお願いします!

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