SketDance
□X
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XContrail
俺は安形と空港で会い、ターミナル内に彼が入るまでの時間潰しをしていま。某ファーストフード店で昼食を取ったり、当てもなく本屋に入ったり。端から見れば大したことないことだが俺にとっては本当に充実した時間だった。
「道流」
安形が携帯の画面を指差す。
「俺、もう行く」
「もう…?」
「中に入るのは早い方がいいだろ」
遅れたらダメだしな、と安形は付け加えた。
「ふうん…」
十数年一緒にいて初めて知った。完全に安形のことを俺が知っているなんて有り得ないのに、少し悔しくなった。
***
「結構混んでるね…」
あの後、結局俺達は荷物検査する列に並んだ。今更だが未だに俺はしなくてはならないことを成せていない。人混みの中、しかも歩きながら告白なんてできる訳がない。
「荷物はこの中に入れてくださーい」
警備員の声がどんどん大きくなっていく。俺はもうそろそろこの列から外れなければならない。
「道流、そろそろ抜けた方がいいんじゃねえか?」
俺の心を見透かしたように安形が言った。
「…うん」
1時間前までの気合いは何だったんだよ、俺。弱気になった瞬間、ふとそう思った。
「ありがとな、道流」
「元気でね、安形」
ダメだ俺、阿呆を通り越して完全たるヘタレじゃないか。
「向こう着いたら連絡頂戴ね」
自分がする行動が全て思いに反している。
俺は、列を離れた。
どんどん俺から離れていく安形をただ眺めていた。時折安形は俺の方を振り向いて彼には珍しく悲しい表情を浮かべた。
今から告白するなんて絶対に無理だ。できないならここにいる意味さない。むしろ心が痛むだけだ。それなのに足は全く動こうとしない。
安形が手を振った。数歩でもう見えなくなりそうな所にいる。
俺の頭は真っ白になった。