SketDance

□W
1ページ/1ページ


WAgain and again


安形が旅立つ今日は、雲一つない快晴。


俺は、初め見送ることを躊躇っていた。昨日のこともあるし、思いを伝えられるとは限らないからだ。でも、俺達が半年で会えるなんて確証も保証もない。再会がいつになるのか見当がつかないのだ。もし次に会うのが十年後だったら……と考えると今日どうしても見送りに行く必要があると思ってしまうし、現に俺も安形に会いたい。

そんな思いで空港直通の電車に乗り込んだ。目的地までノンストップ。しかもなぜか今日は空いていて(元から利用者が少ないからかもしれないが)、お陰で俺の隣には誰も乗り合わせなかった。

足を組み、とパックの緑茶を啜(すす)りながら窓を眺めた。やることはなくはないが、今は気分的にやりたくない。
窓から見えた景色は緑一色だった。一軒家も目に留まはなくはないが、それでも俺が住んでいる場所よりは遥かに自然豊かだ。ずっとそれを見ていると、不思議と今まで思い悩んでいたことを忘れた。

***

『次は終点〜〜〜〜』

車内アナウンスで目が覚めた。別に寝ていた訳ではない。車窓からの景色を眺めていただけなのだ。自分のことながら驚いた。


列車のドアが開くと同時に、空いていた車内からは想像できない程多くの人がホームに散った。俺もその波に添って出口へと歩を進める。



「よし、」

誰にも聞こえないように呟く。


俺はラストチャンスを必ず成功させる。今までと同じ失敗はしない。これまでの人生一体何人のレディ達から告白されたと思ってるんだ?そんな俺に安形が惚れていないわけがないだろ?

ただ、胸の中で誓いを立てようと思っただけなのに、今までの俺からは想像できないほどの自信がどこからか湧いてきた。


ホーム上の時計を見る。只今13時。安形の出発まで1時間半。時間は十分にある。




榛葉道流は、安形惣司郎に思いを伝える。



俺は強く右手を握りしめた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ