SketDance
□U
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UGod is unfair
神様は不平等だ。俺に対しては特に。
***
ことは突然起きた。
『タランタララララーン』
初期設定のままの着メロ1が部屋にこだまする。
「はあ、」
めんどくさい、と思いながらもメールの差出人をチェックする。液晶画面には『安形惣司郎』とあった。
「…安形!」
俺は急いで携帯を開く。なんて書いてあるのだろう、とそわそわしながらボタンを押す。
しかしそこには、俺の期待を裏切るかのように、
『アメリカに行くことになった』
とあった。
この瞬間俺は絶望の淵に立たされた気がした。…というか、落ちた。
気持ちの整理もつかないまま、親指が
『いつ行くの?』
と文字盤上を無意識に動いていた。
送った後、部屋の壁と向き合って今の心境を分析してみる。正直、悲しいやショックとか、そういう気持ちはない。ただ、心の中にすっぽり穴が開いたような、空っぽになったようなそんな感じ。自分の心境を分析してるだなんて端から見たら随分冷静なんだな、と思われるだろう。でも、説明はできないが冷静では絶対ない。自分の体なんだからそれくらいは分かる。
再び着メロ1が鳴り、俺は急いで携帯を手に取る。
やはり、安形から。
『24日』
メールにはそう書いてあった。
今日は5日。つまり、俺に残された時間は19日、たったそれだけ。
確かに、安形がアメリカに行くと決まっていなくても俺が思いを伝えられる可能性はこれっぽっちもないかもしれない。でも、これはあまりに急すぎる。
誰が決めたんだよ、と枕を思いっきり壁に向かって投げてみる。勿論、枕は俺に仕返しをしたりしない。
再び、部屋には静寂に包まれる。
先程の空っぽな気持ちと苛々に加え、ものすごく悔しくなった。安形に対してか、俺に対してか、はたまたアメリカに対してか。自分でも分からない。
でも、ただ一つ分かることは神は俺の味方では決してないということ。
神が平等なんて誰が決めた?本当に全員が平等の扱いを受けたわけじゃないだろ?
神は不平等だ。なのに崇拝されている。なのに逆らえない。
きっと、これが俺が悔しく思った原因なのかもしれない。
ふと、隣にあったぬいぐるみを抱き締めてみた。ふかふかなそれに頭を突っ込む。
すると突然、思いに反して涙が溢れてきた。いくらぬぐっても止まらない。
「安形、安形あ…っ」
気付けば大好きな人の名前を叫んでいた。
「行くなよ、安形っ」
いくら呼んでも届かないと分かっているのに呼んでしまう。やっぱり悲しくてショックだったのだ。分析だなんて偉そうに言っていたけれど、本当は現実から逃げていただけ。
「…っ、っ」
俺の嗚咽が暗闇の部屋にこだまする。
カチカチと時計の音が聞こえた。
それも俺を慰めているような気がして、嫌になる。
誰も俺に構うなよ。同情すんなよ。受け止めてくれる人なんていらない。
その夜、俺は涙が枯れるまで泣き続けた。