SketDance

□似た者同士
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「ふ、藤崎っ」

「ん?」

「実は…その…」

ある日の休み時間。
俺は廊下ですれ違いざまに、双子の弟、椿佐介に呼び止められた。
つーかなんで俺がこんな奴と双子なんだよ…
俺こんな奴に似てんのか?

「渡したい物がある」

俺がぐちぐち心の中で不満を吐いているのを知るはずのない椿は言葉を続けた。

「お前が俺に渡したい物?」

「そうだ」

まさか、

「ダサいTシャツとかか?」

よくあんなセンスないもの好きだよなあ、とほざく。

「…っ!」

椿はイラッとした表情を浮かべた。
相変わらず変に素直な奴だな。

「俺ちょっと用あっからー」

めんどくさくなった俺は場を離れようとする。



しかし、

「藤崎!待て!」

絶対に離さまいというかのように椿は俺の腕を強く掴んだ。

好きな奴に腕を掴まれて懇願されて、その手を振りほどくことができる人がいるだろうか。

「…用あんならさっさとしろよ」

勿論、俺にはできない。
むしろ呼び止められてどこか喜んでいる自分がいた。

「ああ…実は藤崎に渡したい物がある」

「それさっき聞いたような」

しかも少し照れながら言ってたな。

「まあいい。とりあえず受け取れ」

そう言って椿は小さな袋を無理矢理俺の手に収めた後、走り去ってしまった。



「…??」

掌の物をしばらく凝視する。
綺麗にラッピングされた濃紺の袋。

でもまあ見ててもしょうがない、と思い、とりあえず開けてみることにした。

丁寧に巻かれた白いリボンをほどいて…


「…ネックレス…ッ?!」

驚き、嬉しさ…さまざまな感情が交錯し、思わず声が出てしまう。


そう。
入っていたのは星のネックレスだった。

『藤崎へ。誕生日プレゼントだ。感謝しろ』
短い言葉で綴られた手紙も一緒に入っていた。


俺はポケットの中身掴む。
実は渡すものは俺にもあった。
当たり前だ、俺達の誕生日は一緒なのだから。
ずっと前から時間をかけて選んだプレゼント。
あー渡すタイミングなくしちゃったな、と心の中で呟く。



好きな人に素直になれない。
俺達はやっぱりどこか似ている。






『キーンコーンカーンコーン』


休み時間の終わりを告げる鐘が鳴ると同時に俺はやばいなあ、と思いながら教室へと走る。
でもなぜかその感情は頭の片隅にしかなくて。

俺は椿の顔を思い浮かべていた。

プレゼント、靴箱の中にでも入れとこっかな、なんて他人事みたいに思いながら。

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