SketDance
□木の下の魔法
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『榛葉道流さんへ。
今日の放課後、校庭の木の下で待っています。』
女の子らしい丸文字でそう書いてあった。
俺の靴箱に宛名のないラブレターが届いたのはある日の朝のこと。
また今日の帰りも安形のこと待たせちゃうな、と心の中で呟く。
そう、俺はその手紙がいつものようなものだと思っていた。
***
放課後。
約束の木の下に行く。
なんか場所がくさいなあ、と思いながらもしばらく待ってみる。
すると、
「よー道流」
来たのは女子ではなく男子だった。
しかも、置物会長、安形惣司郎。
「なんで安形がここにいんの?」
俺のこと探しに来てくれたのかな、とか考えてみる。
でも答えは予想範疇を大きく越えたものだった。
「俺が呼び出したから」
今、なんかこいつさらっとすごいこと言ってなかった?
「ごめん、もっかい言って」
念の為もう一度聞いてみることにする。
「もっかい言うのか?ま、いーや……俺がお前をここに呼んだ」
へーそうなんだ。
………って、
「えええええ!?」
俺は全く状況が飲めなかった。
「ダメか?」
「いや、そういうことじゃなくて、」
心の整理を数秒し、真っ先に疑問に思ったことを聞いてみる。
「あの丸文字ってまさか安形が書いたのじゃないよね?」
だとしたら相当キモい。
「かっかっか。まさかな。サーヤに書いてもらったんだよ」
よかった、とりあえず安形の脳はまだ危ないラインをギリギリ越えてないらしい。
「で、俺を呼び出した理由は?」
本題にさりげなく戻してみる。
「道流、ここが何の木か知ってるか?」
質問したのに逆に質問で返された。
「さあ…」
周りをよく見渡してみる。
しかし、これといって特別そうな木ではない。
知らねーのかよ、と安形は呟いた。
「ここで告白すると必ず結ばれるっていう噂があんだよ」
「そんな噂があったんだ」
俺は割りと学校の流行については疎いのかもしれない。
ん…?待てよ、
「じゃあ安形がここに呼び出したのって、」
「んあ?お前に告白するためだけど?」
月曜日の次は火曜日、みたいな当たり前の口調で言われてしまった。
でもつまり安形は俺のことが好きで…
「…」
「どうした?顔真っ赤だけど?」
安形はわざと鈍感なふりをする。
このSめが。
「……俺も安形のこと…」
「俺のこと?」
安形の顔は明らかに楽しんでいる。
俺の気持ちなんて分かりきってるくせに………
((安形のこと、好きだよ))