SketDance
□病弊
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※卒業後、同居パロ
*****
家に帰ると、椿がいつも2人で寝ているベッドに横たわっていた。
時刻を確認すると、午後3時。
規則正しい椿のことだから昼寝なんて有り得ない。
「椿ー…?」
俺は心配になって声をかけた。
すると、
「あ、惣司郎さん…おかえりなさい」
椿がこちらを向いて答えた。
布団の中にうずくまっていた顔は、微かに赤くなっていて、どこか苦しそうだ。
ここだけの話、会長の座を降りてから俺は椿に自分のことを『惣司郎さん』と呼ばせることにした。
だってずっと『会長』ってのはおかしいし、それに恋人同士がそんな呼び方をするのは流石におかしい。
まあ、本当は呼び捨てが良かったのだが、椿がそれにはうなずいてくれなくて…。
「体調、悪いのか…?」
「いえ、少し目眩がするだけです」
「ちょっと顔…近づけろ」
どう考えても大丈夫じゃない椿を諭す。
いつもこんなに近くにいるから、改めて言うのはどこか恥ずかしいものだ。
俺の言葉に対して椿は素直に起き上がる。
でも、その様子もどこか弱々しくて。
そっと、近づけられた椿のおでこに手をおいて体温を確認した後、自分のも確認する。
やはり椿の方が熱い。
しかし、俺はといえば、数センチの距離にある椿の顔にドキドキさせられっぱなしだった。
おまけに椿は俺が体温を確認している間、なぜか目を閉じていたのだ。
こんな状況下で自制心を保てる人がいるだろうか?
「惣司郎さん、えっと…、」
俺が何も言わなかったため、椿が恐る恐る話しかけてきた。
「ああ悪い…やっぱ熱あったから椿は寝てろ」
心の中とは正反対に、俺はできるだけ冷静に応じる。
「すみません…」
なぜか椿は謝り、そしておとなしく再度ベッドに横になった。
……俺の方を向きながら。
これはもう嫌でも椿のことが視界に入ってくる。
長い睫毛、きめ細かい肌に整った顔立ち。
可愛いな、と分かりきったことを心の中で呟く。
というか俺の方を向いて寝る時点で誘っているのではないかと思わざるを得ない。
このままここに自分を置いておくとまずい、と脳が必死に俺に信号を送ってくる。
おまけに心臓の鼓動がどんどん早くなる。
しかし当の俺はというと、やっぱり俺はこいつのことが好きなんだな、と再認識しながら視線は椿に固定されたまま。
「惣司郎さん、惣司郎さん」
ああ、もう俺の名前を呼ばないでくれ、
「…はあはあっ…」
このままだと俺は、
「惣司ろ…」
自制できなくなってしまうから…っ
***
気づいたときにはくちゅっ、くちゅと二人の人間の唾液の音が聞こえてきた。
勿論それは紛れもなく俺と椿のもの。
そして俺は自分が無我夢中で椿と深いキスを交わしていることを知らされる。
舌を絡ませ、歯を丁寧に上から下へとなぞり、強く強く椿を抱きしめた。
酸欠になりそうなほど俺達はその行為を続け、俺はその時間を思う存分楽しんだ。
「ぷはっ、」
終えた後の椿の顔は更に赤みを増し、更にエロくなっていた。
たまらず俺は、
「椿、キスしようって言ってくれ」
と躊躇せずに本心をぶちまける。
さっきは俺が無理を強いてしたこと。
だから今度は椿の口からキスを願う言葉を聞きたい。
「でも、惣司郎さんに風邪うつっちゃうかもしれない…」
椿は少し俯く。
こいつは本当にどこまでも真面目というか、変なところだけ空気ヨメ男じゃないというか。
まあそんなところも含めていとおしいけどな。
「俺、椿の菌ならむしろ欲しいぜ?」
「………じゃあ……そ、惣司郎さん、キスして下さい」
少し背の高い俺に向かって上目使いで言う椿は最高に可愛かった。
そそられるにきまってる。
俺は遠慮せず勢いよく椿を抱きしめ、さっきよりもっと深く、熱いキスを交わした。
病気の椿も悪くないな。