SketDance

□高鳴る鼓動と
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「おーうじっ!」

ある秋の日の放課後、突然後ろから誰かに抱きつかれた。
俺は驚いて振り返る。

「ロ、ロマン!?」

見ると、早乙女浪漫が俺の腰に顔をうずくませていた。

「何してんだよ?」

俺からの問いに、ロマンはふふふーと、小さくはにかんだあと、

「トリックオアトリートっ」

抱きしめていた腕を離し、弾けるような笑顔で答えた。

上機嫌なロマンとは対照的に、俺は緊張で爆発しそうだった。
近頃の俺はロマンといるだけで胸の鼓動が早くなる。
その上、今のようなことをされると更に加速しちゃうじゃないか…。

まあ勿論、俺の気持ちが恋であることは分かっている。
最初は驚いたが、間違っていないはずだ。

「あーそういえば今日ハロウィンだったな」

できるだけ自然に接する。

「うん!だから、」

ロマンはポシェットから、包み紙にくるまれた小さなものを取り出すと、俺の掌に握らせた。

「お…、さんきゅ」

俺は好意に甘えてありがたく頂くことにした。
包み紙を開き、口に放り込む。中身はオレンジチョコだった。

「おいしい?」

「うまい!」

「じゃあ…」

ロマンはほら、と俺のほうに手を差し出す。

「お菓子くれなきゃ悪戯するぞっ」

そう言って悪戯っぽく笑った。

「お菓子かあ…」

俺は何も持っていないと分かりつつも、念のためポケットをあさる。
当たり前だがどんなにかき回しても何もなかった。

「あ」

俺は名案を思いついた。

「ロマン、ちょっと目つぶってくれないか?」

ロマンは一瞬不思議そうな顔をしたものの、俺の言う通りにした。
顔が少し赤くなっているのは気のせいだろうか。

相変わらず幸せそうな顔してるよな、とか思いながら、俺はその頬に小さなキスをした。

お菓子のお返しは、俺からお前へのこの気持ち。

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