SketDanceU
□桜並木
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「三年間…色々あったね」
桜並木の下を歩きながら道流は俺に言った。
「あぁ、そうだな」
道流が少し上を見た。俺も同じ方を向いてみると、桜の花弁が風に乗ってゆっくりと落ちてきた。
長いようで短かった高校生活。本当に色々なことがあった。まあ思い出せる限りのことは殆ど楽しいことだけど。
学校に対して別に未練もない。あるとしたら生徒会室に気軽に帰れなくなったこと、くらいと、
「俺、ほんと心配したんだよ?安形がサーヤちゃんのことで頭おかしくなった時!」
こうして道流と毎日いれなくなるかもしれないこと。あほみたいな、他愛ない日々がもうすぐなくなるのだ。
「安形?」
道流が俺の顔をじっと見つめる。
「なんだ?」
「え?何って、手……」
「手?」
俺は驚いて自分のそれを見てみると、どうしてだか、確かに道流の頭を撫でていた。
「わりぃ」
本当に無意識だった。
俺はどれだけこいつに依存しているのだろうか…。
「……安形」
「どうした」
「いや、だからさ、別に…その、俺はさっきの嫌だとか言ってないから!」
いきなり道流が大きな声を出した。恥ずかしいことに周りの人が皆一斉に振り向いた。
一応空気を読んで二人で小さく謝っておく。
そして、俺は道流を見た。
そして、もう一度道流のふかふかな頭に手を乗せてみる。
勿論、今度は故意で。
「やめなくていいんだろ?」
お前そう言ったんだろ、と付け足す。
「だから…いや…あれは…」
道流は下を向いて言葉を濁した。表情はよく見えないが恐らく顔を真っ赤にしていることだろう。
「かっかっか」
なぜか笑いが込み上げてきた。
「なんで笑うんだよっ!」
すかさず道流が反論してくる。
俺達のいつも通りの一ページ。
これからも、ずっとこれからも、こうやっていたい。
満開の桜の木の下で俺はそう強く願った。