SketDanceU

□ハッピーバレンタイン
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女の子達の呼び出しなどに駆け回っていたら、すっかりこんな時間になってしまった。

チョコを渡したい、
話がしたい、と
皆約束を取り付ける。
告白をしてくる子はいない。
今日は生徒会があったが、誰も呼びにこないあたり、この事態を察して気を使っているのだろう。
しかし。

(誰か呼びに来てくれないかな…)

寒い。疲れた。
いっそのこと生徒会を言い訳にしてこの状況から逃げたいくらいだ。
しかしそれはオレのプライドが許さない。

(えーっと、次は…)

メモを見ようとするが、両手がふさがって開けない。

(確かこの辺はベンチがあったはず)

今いるのは新校舎裏だ。
見回せば、少し離れたところにベンチの背が見える。木の下にあるため、夏場は涼しそうだ。

「あれ…安形?」

ベンチを覗けば、安形が寝ていた。

「んあ?」

「こんなとこで寝てたら風邪引くよ?」

「おう…さみぃなー」

安形が起き上がって空いたスペースに両手を塞いでいた荷物を置く。
と同時に、近くのスピーカーから部活動終了の放送が流れた。
もうそんな時間か。
ポケットの中からメモを取り出す。

「おほっ、6時か」

「そういや安形、生徒会は?」

「ミチル」

「何?」

「この木、分かるよな?」

メモから木へ視線を移す。

「ん?モミの木?…あ」

そうだ。ちょうどこの木の下は、学園で一番有名な告白スポット…

「好きだ、ミチル」

さっきまで寝起きの顔をしていた安形の表情が真剣な眼差しでオレを捕えた。

気が付けば、オレは安形の腕の中だった。

「ちょっ、安形!誰か見てたらどうすんだよ!」

「で、ミチルは?オレのこと好き?」

「…それは…」

分かりきったことを聞くあたり安形らしい。
しかしいざ言葉にするとなるとなかなか言えなかった。

「なあミチル」

「……す、」

「早く言わなきゃキスするぞー」

「っ…好きだ…!」




運命の樅の木の伝説−−

それは、この樅の木の下で放課後6時に告白すると100%成就するという伝説。

しかし実際には100%フラれない者しか告白せず、
相思相愛確定のカップルが形式的に告白するスポットだ。

ここで結ばれたカップルは、幸せになれるらしい。




ハッピーバレンタイン
(で、チョコくんねーの?)

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