SketDanceU
□妄想、今、未来
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「笛吹ー」
『お前がなんでここにいるんだ』
「いいじゃねーか」
俺の前になぜか立っていたのは生徒会長の安形だった。
『帰れ』
「どーしてそういうこと言うんだ?」
『俺は気分が悪いんだ』
視界に安形が入るのが嫌になって目を閉じる。
「まあまあ」
顔は見えないが恐らく笑っているのだろう。
それに、38度の熱が出た俺の傍に来るなんて風邪がうつりたいとしか思えない。
「俺、なんかあったかいもん作ってくる」
そう言って安形は部屋を出ていった。
俺に返事を求めなかったせいで、『人の家を勝手にあさるな』と言うタイミングを逃してしまったじゃないか。とりあえず母さんがいないのはせめてもの救いだが。
パソコンから手を離して体を大の字にする。…だるい。
…………………。
***
キッチンから帰ってくると、笛吹は心地よい寝息を立てていた。
「なんだ…寝ちまったのか」
残念そうな言葉を口にしながらも笑っている自分がいた。そう、今は最高にラッキーなのだ。
「どれどれ…」
隠れていた髪の毛をそっとかき上げると、俺が描いていたままの端正な顔が現れる。
俺は、風邪のせいで真っ赤になってしまっている頬をそっと撫でた。
心臓のばくばく鳴る音がはっきり聞こえる。
身体中が熱くなってくる。
気づけば俺の手は頬ではなく笛吹の上半身にあった。
抱きしめたい。その衝動に駆られながらも気持ちを必死に抑えようと努力したが、撫でる手は止まらない。
「ほんっとかわいいな…」
無防備な寝顔、ない眼鏡。
それに、さっきからいくら触っても起きる雰囲気は感じられない。
本当はベロチューしたい。ヤりたい。笛吹のそれが俺のに入ったらどんな気持ちになるのだろうかとも考えてしまう。
まあ今は心の中だけで興奮していよう、と自分に無理矢理言い聞かす。なんだかんだ起こすのは可哀想に思う。
それに、今は急がなくてもいい。
笛吹から俺にそれを求める日が必ずや訪れるのだから。
俺は笛吹の寝顔を横目に粥にラップをかけた。