VampireKnight
□「恥ずかしくないのかい」
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「藍堂、」
僕の名を呼ぶ枢様に応じる。
「はい」
「ここで、僕の血を飲んでくれないか」
「!???!」
一瞬、枢様の言葉が嘘かと思ってしまった。
僕が、枢様の血を吸う。
純血種である枢の血を、誰かに見られる可能性が大いにある月の寮の入り口で吸う。
そのことがどんなに恐ろしいかなんて考えるまでもないこと。
「君は僕に逆らう気…?」
僕の思考を読み取ったかのように、枢様が言う。
「いえ…」
勿論、僕は枢様には逆らえない。
「し、しっつれいします…」
緊張のあまり声が上ずってしまう。
プツッ…
おずおずと僕は枢様の首に牙を立てる。
枢様はただそこに座っているだけで、何も発しない。
でも、僕の喉を伝っていく液体は今まで味わったことのないほどの美味で。
僕は牙をもっと奥まで突き刺し、無我夢中でそれを貪り続ける。
「あ、」
ハッ、といきなり我に返らされた。
「か、枢様…申し訳ありません…」
恐ろしさのあまり声が震える。
いくら恋人同士で、しかも枢様が純血種だとはいえ、これほど多く吸ってしまうのはよくないことに決まっている。
頬を叩かれる覚悟をして俯く。
「藍堂は恥ずかしくないのかい…?」
驚いて顔を上げるとそこには微笑む枢様。
「申し訳ありません、枢様のが美味しくて…」
「違うよ藍堂!」
僕がお詫びの言葉を口にしていると
、いつもの如く満面の笑みとハイテンションな一条が現れた。
「なんで一条がいんだよ!?」
僕は動揺を隠せない。
というか、一条がこんなタイミングよく現れたって、つまり……
「藍堂大胆だよね!僕感心しちゃったよ」
や、やっぱり……
「あああ」
僕は頭を抱えて後悔する。
本当に恥ずかしいことをしてしまった…
そして、その後一条のせいでみんなの笑い者にされたのは言うまでもない。
***
「ねー枢、あんな人目につくところで吸血させたのってさ」
「見せびらかそうと思ってね」
「やっぱり。結構効果、あったんじゃない?僕以外も見てる子、いたし」
「藍堂はあげないよ」
「僕藍堂はいらないな…って、あ!僕漫画読み途中だった!じゃね、枢!」
「……」