VampireKnight

□絆の罰
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※4巻派生






「支葵は僕に懐いてるから"一条派"だね。明らかに」

自らの肩で安らかに眠る支葵を見ながら一条は言う。

何気ない一言だったはず。
なのに、僕はなぜかムキになって

「僕は玖蘭派だ!」

と反論した。

当たり前だ。
吸血鬼として枢様、いや玖蘭家を敬わないなんて僕には考えられない。
一条や支葵は一体何様なのだろうか。


すると、

「私の方がもっともっと"玖蘭派"よ」

後ろから、凛とした瑠佳の声がした。
振り返ると、ふっ…とドヤ顔をされる。

でも、玖蘭派であることに変わりはない。
悔しいが、一応僕の味方であるのだ。

……いや。
やはり許せない。
瑠佳をもう一度見ると、彼女はじっと僕を睨んでいた。

奇遇だ。同じことを思っていたのか。

バチバチ…僕達の間で火花が散る。





「暁!お前は!?」

僕は味方が瑠佳だけだと心配で、従兄の暁に同意を求めた。


「俺は…どっちも尊敬しているからな…」

興味ないような顔で予想外な答えを返してきやがった。

僕は思わず絶句した。
一条が『見てよあの顔!』とか言っているが、今の僕にはどうでもいい。

暁は、藍堂家と血筋が繋がっている王家懐古派の架院家の子なのに、玖蘭派でないとは有り得ない…!

それに…


僕の味方になってくれないなんて…。




「暁!こっちこい!」

枢様の姿が見えたため、こんな話題は恥ずかしくてできない。
僕は部屋に暁を無理矢理引っ張っていった。

***

「なんだ?さっきのことか?」

「そうだ。なんで…暁は曖昧なこと言って僕の味方になってくれなかったんだ」

寂しさとイライラが心を渦巻く。

暁はというと、僕の言葉を聞いて笑っていた。

「なんだそんなことか」

「そんなことって…僕は…」

好きな人が自分の味方をしてくれないというただそれだけのことかもしれない。
でも、僕にとっては何より嫌なこと。
独占欲が強いと言われても嫌なことには変わりない。


「嘘だ」

急に穏やかな、僕を諭すかのような声になった。

「!?」

「俺は揉め事とか嫌いなんだ…だからさっきはあんなこと言った」

「え…?」

「俺はいつでもお前の味方だってこと」

揉め事を避けたかったから、僕に嘘をついて…?
暁の言葉が何度も脳内で反響する。

「暁は…僕が例え一条派だと言っても僕の味方だってこと?」

「ああ」

「本当に…?」

「本当だ」

「……」

考えてみれば、幼い頃からそうだった。
どんなに無茶なことでも暁はめんどくさがりながらも一緒にやってくれた。
いつも。
本当にいつも、僕の味方でいてくれた。
そんな絆があるのに…。

次第に僕は自分に腹が立ち、一つの気持ちが芽生えた。



「暁」

意を決して話しかける。

「どうした」

「僕の血…を…飲んでくれ」

そう言って僕は自分の首筋を傷つけた。

「いきなりどうした?」

「いいから…飲んでほしいんだ…」





愛する人を信頼しきれていなかった僕に、お仕置きを………。

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