VampireKnight

□君の唇と温もり
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「一条さん」

「何?」

支葵に呼ばれた僕は、ベッドに座っている彼の側に行く。

「ポッキンチョコいる?」

「うんいるー」

そう言って断りも無しにベッドに上がる。


「……」

しかし、手にポッキンチョコを持ったまま微動だにしない支葵。

「あれ?なんでくれないの?」

「俺が一条さんに食べさせてあげる」



ほら、というかのようにポッキンチョコを僕の口へと向けてきた。

「いらないの?」

「あ、ごめん。じゃあありがたくもらうね」

口をあーんと開けて支葵に食べさせてもらう。

むしゃむしゃ…
口にチョコとビスケットの甘みが広がる。



そういえば、

「支葵、今日珍しく積極的じゃない?」

「そう?」

「そうだよ」

「…?」

首をかしげて、不思議そうな顔を浮かべる支葵。
どうやら本人には自覚がないようだ。



「じゃあさ、」

僕は支葵の手からポッキンチョコの箱を奪う。

「いつもみたいに僕が支葵に食べさせてあげる」

「…いいけど」


普通、照れたら少なからず顔が赤くなったり、なんなり変化が出るはずだ。

支葵は基本的に無表情。
でも僕には分かる。
今、かすかに口元が緩んだのを。
恐らく少し照れているのだろう。


これはずっと一緒にいる僕だから見抜けることだ。たまにこれを誇らしく思う。

まあ、莉磨も分かると思うけど…。





「支葵あーん」

僕はチョコのついたほうを支葵の口元に近づける。

支葵は逆らう様子を一切見せず、黙って口を開く。



ぱくっ、支葵の口内にポッキンチョコの先端が入った。

「支葵、食べるのストーップ!」

一瞬で食べてしまいそうな支葵に一旦待ったをかける。


「??」

戸惑う支葵を見ながら僕は彼の口からポッキンチョコを抜いた。

「え?」

唇に僅かながらチョコをつけた支葵は更に困惑する。

「これは僕が食べるからね?」

ぽきぽきっ…音を立ててポッキンチョコは僕の胃袋へと入っていった。


「間接キス…」

ぼそっと支葵が呟く。

「何?直接してもらいたいの?」

そう言って僕は返事を聞く前に、支葵の唇に優しくキスをした。

だって、どうせ返事なんか分かりきってるから。



「支葵の唇甘くてあったかい」

「チョコついてるしね」

「チョコはあったくないよ?」

「俺そんなこと知らない」

「僕もよく分かんないな…でも…」

ぎゅっと支葵の体を抱きしめる。

「支葵のこと大好きなのは分かるから…」

唇以上の温もりが皮膚に触れる。


俺も、とかすかに支葵の声が聞こえた。

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