SketDance
□cher...
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「あーがたっ!おはよ!」
「おー道流」
いつものように一日が始まる。
でも今日は特別な日。
そう、
俺の誕生日…。
でもどうせ安形はそんなこと覚えてはいないだろう。
人一倍他人に興味ない彼のこと。
朝からこの様子じゃ、俺の思った通りだ。
……なぜかそう思うと胸が苦しくなる。
***
一時間目が終わった。
二時間目が終わった。
三時間目が終わった。
四時間目が終わった。
昼休みが終わった。
どんどん時は過ぎ、放課後になった。
まだ安形からおめでとう、の一言も聞けない。
廊下ですれ違った時におめでとうございます、と言ってくれた椿ちゃん。
教室までわざわざ来てくれたミモリンとデージーちゃん。
大量のプレゼントをくれたファンの皆。
沢山の人から祝福を受けたのに、一番心から愛している人からは何もない。
こんな気持ちにはなったこと勿論一度もない。
もどかしさが胸を渦巻く。
それでも、何故か俺は気づくと生徒会室に引き寄せられていた。
ギィ…
重い足取りのまま、みんなもういるんだろうなあとか思いながら、俺は扉を開いた。
すると、
パンッ
クラッカーが弾ける音と共に赤、青、黄色、ピンクなどの鮮やかな色が宙を舞い、ひらひらひらと俺の頭に乗る。
部屋には安形一人。
そして間違いなく、今のは安形がしたことだと分かる。
「安形…?」
「道流…誕生日おめでとう」
「え…」
予想外すぎる出来事に驚きと同時に頬を涙が伝った。
感情が溢れだす。
今日、同じ言葉を贈ってくれた人の中でやっぱり断トツに嬉しかった。
「あ…あぁた…っ」
「泣くなよ」
「でも、」
頭をぽんぽんとされる。
俺の涙が止まる気配は見せない。
「今日ずっと言えなくてごめんな」
「いいよ…別に…」
安形が覚えてくれていたならそれだけで俺は満足だ。
「道流」
安形は俺を自分のほうにグッと寄せ、髪を撫でながら小さくキスをした。
「生まれてきてくれてありがとな」
安形は、少し体を離して俺の目を真っ直ぐ見た。
そんな彼は、キラキラと背に太陽の光を受けていて誰もが惚れそうなくらいかっこよくて、輝いていた。