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□Pseudo love
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参考:闇色アリス/samfree feat初音ミク


時は真夜中。窓の外の雨音が静寂に包まれた部屋に反響する。
なぜか怖くなった私は、レンに抱きついた。――私達の関係が終わりを迎えるなんて目に見えているのに。
私は別れることを受け入れられなかった。レンは私に抱きつかれながら、じっと時計の針見つめる。こちらを振り向く様子はない。
さっきより強く抱きしめてみる。今まで私だけを見てくれた筈だったからか、胸がちくちくする。体の力を緩ませたら、涙が零れ落ちてしまいそうなほど。
お願い、私だけを見て……心の中で何度も何度も叫んだ。

偽りでもいい。だから、せめて夜が明けるまではレンの優しさを感じていたかった。今まで当たり前だと思っていた彼の言動が愛しくてしょうがない。去年の冬、クリスマスイルミネーションを見た時のレンのはしゃぐ様子。付き合いたての頃、遊園地で一つのジュースを二人で飲んだこと。レン、恥ずかしそうに『間接キスだね』とか言ってたっけ。
次から次へと溢れ出す思い出たち。
その頃と今を照らし会わせると、やはり私は刹那の時に溺れていただけかもしれない、と思わずにはいられない。
馬鹿らしい。阿呆らしい。『永遠』なんてあるはずがないのだ。


レンの体から腕を離し、彼と同じ方を向いてみた。

「ねえ、レン」

「……」

「レン」

「……」

「レン」

「……何」

何度か彼の名を呼ぶと、ようやく小さな声で応じてくれた。
私は思い立ったことをそのまま口にする。

「キスして」

「……」

「いつもみたいに、ね…?」

最後くらい甘い記憶で終わりたい。

「……今日だけだからな」

そう言ってレンは自分の舌を私の口内に無理矢理押し込んだ。今までのキスからは想像つかないほど荒れたやり方。それほど彼も思い悩んでいるのだろうか。
雨と唾液の音が交互に部屋に響く。不思議なことに、その二つは違和感なく闇に沈んでいくのだ。

「はぁ、ふあ」

酸欠になっていく私のことなんてお構いなしにレンは上から下に、歯茎を丁寧に嘗める。私はその柔らかい感触が好きだ。

このまま時が止まればいい、と思ってしまうのは現実逃避なのだろうか。


外はまだざーざー降り。
止まぬ雨は私の気持ちを流してくれているようだ、と意識が遠退いていく中、ふと思った。



「ミク」

久しぶりに聞く、私を呼ぶ彼の声。
夜が明けるまでの残り僅かな時間しか触れることのできない優しさを感じた。偽りでも今の私には充分すぎるくらい。

レンが私を抱き締めるのと同じか、それ以上に強くレンの細い腕を握った。私のことを忘れないように、彼の記憶から失われないように。



愛に縛られる最後の夜はそうして更けていった。

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