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□キスの前に
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※生温い




「なあ明久」

「何?雄二」

僕達は全裸で立っていた。
…別にそういう趣味があるといった訳では決してない。断じてない。

理由を説明すると。
僕と雄二は付き合っています。雄二が僕の家に泊まりに来ました。キスもまだだから、まずは裸の付き合いから始めようということになりました。僕が裸の付き合いは風呂入るってこと?と雄二に聞きました。雄二は笑ってじゃあそうするかと言いました。
……で、今に至るわけ。

いくらお互いが好きだからと言って一緒にお風呂に入ることには抵抗がある。まあ、異性ならあまりこういう思いはしないのかもしれないが。


「とりあえず入るか」

割り切った様子の雄二がずかずかと風呂場に入った。こいつ、絶対他人様の家だってこと忘れてやがる。

全裸で待ってるなんて御免だから、僕も雄二に続くように入った。真の変態にはなりたくない。



風呂場に入ると雄二は既に湯船に浸かっていた。

「僕先に体洗うね」

「裸の付き合いすんだろ?」

意地悪そうに雄二は口角を上げた。折角僕が空気読んだのに。
いや、正直初めはまあ銭湯気分で入ればいいか、と思った。でもいざこの空間に足を踏み入れると、恥ずかしくてしょうがない。狭い風呂場に高校生の男子二人がいるのだ。

「…僕はいいよ、ほら、狭いし」

「なんだ?お前の言う裸の付き合いってこれのことじゃないのか?」

「うん、ちよっと間違えた」

「へえ。じゃあ本当の聞かせてくれよ」

「…………うん、ほら、うん」

「明久。湯に浸かれ」

頑張って逃げたものの、無理だった。
というか両思いだって知る前から僕は雄二に口では絶対に勝てない。神様は不平等だ。


「失礼します」

緊張して何故か敬語になる。
恐る恐る右足を入れた。パシャ、と水の音が風呂場の壁に反響する。
もう片方も思いきって入れた。

その瞬間。

「え、…っ?」

僕の体が宙に浮き、気づいたら全身が水に浸っていた。しかも、雄二に抱き抱えられた状態で。

「あのさ、雄二。これどういうことかな?」

「いいだろ別に」

「よくない」

本当に、絵的によくない。

しかも、大変なことに僕の性器と、雄二のそれが僅かながらに接しているのだ。…まあ、このことは黙っておこう。その先が恐い。



「明久、キスしていいか」

「うん、ってええええ」

ちょっと待てよ。なぜ今する。

「ちょっとムラムラしてな、ほらこれのせいで」

雄二の口からムラムラなんて言葉が出る日が来るとは思わなかった。
というか、さっき言った僕達のあれが接している件についてバレていたようだ。


「ひゃあ」

突然僕の胸を雄二が撫で始めた。
何これ?ただ胸を触られているだけなのに異様に気持ち良い。

今度は雄二は胸の先をつまんできた。またもや気持ち良い感触。けど今度のは効果音がついたらコリコリコリという感じ。

もう何もかも初めてで雄二が何をしているか僕には全く分からなかった。ただやられっぱなしでどんどん体の力が抜けていく。

「嫌か?」

「嫌じゃない…」

この後何が待ち構えているかはまだ未知の世界だが、別に止めなくてもいいかな、と思う。

「そうか」

雄二はそう言ってまたさっきと同じ行動を始めた。あれ、なんかさっきより勢いよくなった気がする。

というかだんだん体が…熱くなってきたような…

「ひあっ」

いきなりあそこを掴まれた。

「な、何すんだよ」

「明久の勃ってるぜ」

「……っ!?」

自分でもまじまじと見たことない(見たくもない)あそこを、他人に、しかもこんな状態で見られている。
もう僕はどうすれば良いか分からなかった。風呂場という密室から抜け出す方法なんて今考えたって無駄に決まっている。

そんなことより。
キスもしたことない僕らがこんなことしてるってちょっとおかしくない?
しかも今日の約束は裸の付き合い、ってことのはず。僕の体をこんなふうに触るなんて一言も了承していない。


「雄二」

「どうした?恥ずかしいのか?」

雄二がおかしくなってきた。

「僕、そろそろ体洗いたいんだけど」

「その状態でか?」

「…うん」

もう今日は黒歴史決定だな。

「そうか」

あれ?以外とあっさりしてる?

「出てから楽しみにしてるからな」

「……」


今までにない黒いオーラを発する雄二が怖くなって、僕は逃げるようにして風呂場を出た。

でもどうせ出たって逃げ場はない。
今日は姉さんも不在にしてるし。

…そういえば体洗うの忘れてた。
でも今行ったらまたさっきと同じ思いするだろうし。

とりあえず雄二が出てきてから色々考えよう。
うん、と僕は一人で頷いた。




まだ夜は始まったばかり。

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