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□タイムリミット・上
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※こちらは短いですが、区切りがよいため上・下に分けようと思います。
 …次が長くなりそうなので。

*****

「相馬さんー山田の相手して下さいよー」

「今ちょっと無理なんだけど…」

今日も山田が相馬に付きまとっている。
背中に飛び乗ったり、抱きしめたり。
正直、この光景がかなりイライラする。

「山田、仕事しろ」

ついつい口調に感情が表れてしまう。
俺は自分ではあまり独占欲が強いほうではないと思っていて、確かにその通りだ。
今まで好きな人ができてもそうだった。
でも、相馬に対してだけはなぜか違う。

「ありがとう佐藤くん、助かったよ」

そう言って相馬は笑う。

「別に」

情報屋だと知っていてもこの笑顔には俺はどうも弱いのだ。

相馬がバイトに来たあの日。
最初は同い年の男、という関係だったのに気づけば俺はこいつに惹かれていた。
だが理由は全く分からない。

「さとーくん、さとーくん」

「どうした」

「轟さんがね…………」

相馬は未だに俺が轟のことが好きだと勘違いしている。
変なところには勘が鈍いらしい。

「〜〜〜〜〜〜」

本当にこういうことを話すときのこいつはやけに輝いている。
でも、勘違いな話をされていても相馬が俺のことを構ってくれている、という事実だけでどうしたことか、俺は幸せなのだ。

先程言った通り、相馬は恋沙汰にはなぜか鈍い。
そのため、俺のこの思いが自然に伝わることは決してないだろうし、男同士の恋なんてあいつは理解できないだろう。
でも、俺は相馬が好きだ。
それは変わらない。
だからといって相馬に面と向かって言って理解が得られなかったら、今の関係が壊れてしまいそうで怖い。
まあ確かに元々轟のことも叶わぬ恋であることに変わりはなかったのだが。


このまま俺は一生ワグナリアで働けるわけがない。
大学を卒業したら就職して、勿論バイトとはさよならだ。
だからこそ、俺はこんなにも急いでいるのだろうか。
終わりがきてしまうから、己の気持ちを押さえられないのだろうか。






色々考えた挙げ句、俺は相馬を遊びという名のデートに誘うことにした。

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