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□照れ隠し
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「康太!」

僕はたまたま廊下にいた彼を呼び止める。

「………工藤愛子…」

実は僕達はついこの間付き合い始めた。
でも、振り返った顔は相変わらずの無表情、そしてこの反応の薄さ。
付き合う前と何も変わらない。
ただ、僕には彼の態度よりも気になるものがあった。

「恋人にもなってまだ下の名前で呼んでくれないの?」

そう。ムッツリーニ君は未だに僕のことをフルネームか名字で呼ぶのだ。
付き合い始めた日に、下の名前で呼び合う、って決めたのに。
勿論、僕は見ての通り、『康太』と呼んでいる。
なのに、なんで…っ?

「………特に理由は…ない」

康太は気にするな、といった表情をする。
でも、どうしてもそういうことを気にしてしまうのが女心なのだ。

「僕は『康太』って呼んでるのに、なんで?」

僕は一歩、康太に迫る。
僕達は付き合い始めたばかり。
だから康太が僕に愛想をつかせたなんてことは有り得ない…ことのはず。

「………」

答えは、ない。

「康太のメイド服写真コピーして全校に配るよ?」

早いが最終手段を取るのことにした。
写真はついこの間、坂本君から入手していたもの。
いやあ、もういっそのこと女の子として生きるのもいいと思ったくらい、たまらなく可愛いんだよね。



「………そっそれはっ…」

明らかに焦る康太。

「じゃあ、下の名前で呼ばない理由、教えてよ」

これはもう絶対に大丈夫だ、と確信した僕は少し勝ち誇ったような声で言う。

「………分かった」

康太は渋々腹を割った。
というかここまできて冷静な人物もあまりいないと思うけれど…



康太の話は省略するとこうだった。




『なぜか愛子、と呼ぶと、鼻血が止まらない。』









「なーんだっ!」

僕は笑いが止まらなかった。
それは康太の理由があまりにしょうもないことだったから。
…そしてもう1つ、そんなしょうもないことを、あんなにも僕は知りたがっていたから。










「愛子って呼んでみてよ」
「……それは…っ」
「呼ばないと…そうだなあ…康太のパンチラ「……もういい」
「おっ?」
「……やってみる……………あ、あいk…(ぶしゃああああ)」
「!?あ、あはははは!…康太ごめん!」

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