捧げもの、頂きもの

□大丈夫、大丈夫。
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大丈夫、大丈夫。
俺は、君さえ笑っていてくれればそれでいいんだ。
だから笑ってくれないか、泉…?



俺は、みんなの仲間になってからも、無意識に一歩下がった位置からみんなを見ていた。
無邪気に笑うみんなが、君が眩しくて、近づきすぎたら焼かれてしまいそうだったから。
だけどある日、君が独りで泣いているのを見た。
きっと、拓也も輝二も誰も知らない、そんな涙に俺が気付いた。
拭ってあげたいって、そう思ったんだ。

大丈夫、大丈夫。
俺が守ってあげる。
泉が傷つかないように、もう泣かなくてもいいように、俺が守るから。

宥めても君は泣き止まない。
そんな君が震える声で言った。

「あなたの嘘が哀しいの」
「嘘なんてひとつもついてないよ?」

微笑んで言えば、また君は泣き出した。なぜ?

「輝一くんは、ちっとも本当の表情を見せてくれないじゃない。
少しは本当の輝一くんを見せて?
怪我した時は痛いって、辛い時は喚いて……!
私たち、子供なのよ?
恥ずかしいことなんてないんだから……!
大丈夫、不安なら、私も一緒に泣いてあげる」

温かい雫が一筋、頬を伝い落ちた。
パキパキ、何かが割れる音がする。
仮面が剥がれた。
泉を抱きしめて、小さく囁く。

大丈夫、大丈夫。
泉が教えてくれたから、忘れかけてた俺の本当の顔を教えてくれたから、不安はないよ。

大丈夫、大丈夫。
魔法のようなその言葉。
ほら、君の嫌いな嘘つきはもういないよ。

(君の優しい魔法が溶かしたんだ)


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