捧げもの、頂きもの

□例え、その会話に意味なんてなくても
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――某日、並盛町の木村家


やばい、やばいやばいやばいやばいやばいって!

あ、おはようございます。木村輝一です。
え?何がやばいか、ですか?

えーっと……
並中の門が閉められるのって、大体8時10分くらいなんですよね。
で、ぶっちゃけ今起きたんですよ。
現在時刻は7時50分。
家から並中まで約15分。
すなわち遅刻暫定。


「咬み殺されるよな、これ」


並中をこよなく愛する、漆黒の暴君の顔を思い出し、思わず戦慄する。

とりあえず、現実に戻ろう。
そして早く朝食を食べてしまおう。
本気で間に合わなくなる。

制服に着替え、鏡を覗きながら手櫛で寝癖を直す。
鞄を引っ掴んで、階段を駈け降りる。
母さんに挨拶をして、朝食を胃に詰め込んでから玄関へダッシュ。
この時点で時間は8時ジャスト。

走って滑り込みか、それとも……
…………考えないようにしよう。
本当になりそうで怖い。


「行ってきます!」

「いってらっしゃい、気をつけてね」


母さんに見送られて、これまでの人生で最も速いであろうスピードで走って行く。

あ、俺今なら風になれるかも。

遠い目をしながら全力疾走していると、約数メートル先に見知った人影を確認する。

重力に逆らった、柔らかそうなススキ色の髪。
俺よりも小柄で華奢な体躯。
幼い顔立ちを焦燥に染めて、同じクラスであり、我らがボスである沢田綱吉その人が、俺と同じく全力疾走していた。


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