HENTAIシリーズ

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『…ボス』
「チサトさん、どうかしたの?」
『お願いがあるんです…』
「何?」
『配属先変えてください』
「あ、それは無理」

申し訳なさそうに、でもあっさりばっさりそう言ったボス。
前だったら断り切れずにいただろうに、なんだかんだ成長してやがる。

「チサトさんが大変なのはよくわかるよ。でもね、チサトさんを骸から引き離したらもっと面倒なことになると思うんだ」
『……………確かに。すみません、ボス』
「謝らなくてもいいよ。チサトさんが大変なのはわかってるから」

死のうと追い詰められるくらいになったら考えるからまた来てとボスが言った。
うーん、ボスも本当成長したねぇ。
もちろん悪い方にね!

「…というわけで、悪いけどこの書類骸に渡してきて」

ニコニコ笑顔のボス。
…したたかに成長したんだなぁ。





* * *





長い廊下を歩いて、見慣れた骸さんの仕事場部屋の前で立ち止まる。
ドアノブに手をかけた時に、中から話し声が聞こえてそのまま止まった。
お客様がきてるのかもしれない。
ちょっと身嗜みを整えて、ノックしてから失礼します、とドアを開けた。

「「あ」」
『あら』

ドアを開けた先、ソファに座る骸と、その隣に腰掛けた女性。
そして女性の手は骸のベルトを緩めてる最中だった。

「あ…あの、チサト」

なんだか青ざめてる骸さん。
そんなに焦らなくてもいいのに。
こんなの今にはじまったことじゃないんだから。

『あ、すみませんお邪魔しちゃって。これ、ボスから書類です。ここ置いときますんで。この間にランチしてきますから終わったら連絡ください。それから、鍵は一応閉めた方がいいかと』

それでは、と部屋を後にして、今日のランチはどこにしよっかなーと軽い足取りで廊下を歩く。
駅前にできたとかいうお店にしようかな。
なんでもパスタがやばいくらいおいしいらしいし。
そうしようと決めて歩くスピードを早めようとしたその時。
がっと肩を掴まれた。
何事かと振り返ると骸さんだった。

「待ってください!」
『え?どうかしました?』
「さっきのは誤解です!確かに誘われてはいたんですが、やんわり断ってる最中で…」
『そうですか』
「だから、本当に違うんです」
『そんなに言い訳してもらわなくても、骸さんが仕事さえしてくれればそれでいいんで』
「え」
『じゃあランチ行ってきます。早くあのひとの所に戻ってあげた方がいいですよ。なんだかかわいそうですし』

変な顔で立ちすくんだ骸さんを残し、軽い足取りで歩きはじめる。
きーめた。今日はミートソースにしよう。






 

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