ニコラシカ
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鳴り響いた着信音で、眠りから目が覚めた。
枕元のケータイを手探りで取り、ディスプレイに表示された文字を見て溜息をつく。
こんな夜中にかかってきた時点で大体想像はできていたけれど、嫌なものは嫌だった。
だからといって無視もできない。
仕事関係の電話だった。
『もしもし』
「夜中に悪いね。急ぎの頼みだ」
電話の向こうの男は、ボンゴレの古株の代表のような存在だ。
9代目のような穏やかさなど皆無な、冷酷な男。
9代目守護者たちにはけむたがれている。
もちろん、私だって嫌いだ。
でも、無駄に権力を持っているから消すこともできない。
だったらうまくやって気に入られた方がいい。
ツナがボンゴレを継いだとき、目をつけられないように。
『何でしょう?』
そのまま依頼の内容を聞いて、了承したら電話をきる。
舌打ちをしてからつい口にだしてしまった。
『……老害が』
* * *
「寧々!おきろー!」
ばたばたとやかましい足音と、お腹のあたりに突然かかった重みに目が覚めた。
ランボが上から私を覗き込んでいた。
いつもは起こす側の私が寝坊だなんて。
夏休みだからいいんだけど、少しくやしい。
『おはようランボ』
「ママンがごはんできたっていってるんだもんね!」
『わかった。ありがとう。すぐ行くから先に行ってて』
ランボはぴょんとベッドから飛び降りて素直に出て行った。
ランボは生意気な子だけど、私と母さんにはわりと素直な気がする。
寝癖のついた頭を梳かしながら、心の中で昨夜の電話に悪態をついておいた。
あんな電話のせいで寝坊するハメになったんだから。
欠伸をしながら階段を降りてリビングに行くと、朝食の準備がすんだテーブルに皆がついていた。
『ごめんね、お待たせ』
いただきます、と口にしてからはじまった朝食。
「寧々が寝坊なんて珍しいな」
『夜中に電話が掛かってきて起きちゃったの』
「え、なんかあったの?」
心配そうなツナに首を横に振ってみせる。
『ただの間違い電話だったよ』
「なんだ」
パンを一口食べたツナが、ふと思い出したように言った。
「そういえば、明後日の祭、行く?」
『祭?ああ、そういえば並盛神社でこの時期お祭りとかあったね』
小さいころは毎年行っていたお祭りだった。
花火とかもあって、このあたりだとそれなりに大きなお祭りだと思う。