ニコラシカ

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7月の下旬、快晴。
こんなうだるような暑さの中、今日は終業式だった。
蒸し暑い体育館でくだらない校長の話なんて一体誰が好き好んで聞くのか謎だ。

もちろん式をサボった私はどこで時間をつぶそうか。
とりあえず、サボりといえば屋上かなという単純な考えで屋上にでる。
日差しから逃げるように貯水タンクの裏側の影にまわって、先約を見つけた。
ふわふわと漂う白い煙。
その出所になっているのはタバコをふかしている獄寺だ。

『あ、獄寺もサボり?』

声をかけると慌ててタバコの火を消す獄寺。
いまだに彼は私に対して10代目の姉、という意識が強いらしく、タメ口にはなったけど気を使われてる。

「ああ。寧々もサボりか?」
『うん。校長の話なんかかったるいよね』

獄寺が場所をあけてくれたので、隣の日陰に座り込む。

『タバコ、本当に吸うんだね。健康によくないよ……なんて、もう言われまくってるんだろうね』

獄寺は無言だったけど、それはつまり肯定だろう。

『スモーキン・ボムって言われてるのに今更か。でも控えめにしなよ。じゃないと……』

勿体振ると、獄寺は先が気になるらしく、なんだよと促して来る。

『背が伸びないぞー』
「うるせぇ。俺は伸びる」
『…じゃあ、彼女に嫌われるぞ』
「いねぇし」
『未来の話』
「…なんでだよ」
『においつくし。あと…キスがまずくなる』
「な…っ!」

顔を赤くして何言ってやがる!と怒る獄寺。
無駄にモテそうなのに、案外純情なのか。

『冗談だよ、冗談。それにしてもイタリア人らしくないね』
「うるせぇ!」

拗ねてしまった獄寺が少しかわいい。
ま、でもイタリアにもシャイな人はいたしね。
誰でも彼でも軟派なわけじゃないし。

『そーいえば、』
「何だよ」
『もうすぐ夏休みだね』
「そうだな」
『皆でどっか行って遊べるといいね。私、夏休みって久しぶりなんだ』
「…は?」

キョトンとする獄寺。

『何て言うか、イタリアでは忙しくて遊ぶ暇、なかったし。学校も行ってなかったの。…ツナにはナイショね』
「なんでだよ」
『ツナ、変に気を遣いそうじゃん?…ま、そういうわけだから今年は夏を満喫したいんだ!お祭りもあるし、海も行きたい。肝試しも!』
「ガキみてぇだな」
『うわ失礼』

まだ出会って間もないけど、獄寺は素直じゃないやつだと思う。
素直じゃないのに、わかりやすい。
でも結構いいやつ。
そんな感じ。






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