ニコラシカ
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中学校生活二日目。
今日の私の目標はツナのクラスでの立ち位置と、クラスメイトのツナへの接し方のチェックだった。
誰がツナの周りに相応しいか、敵は誰が、知っておきたい。
「―――だよ。……寧々聞いてる?」
授業の間の休み時間に学校内を案内してくれているツナの説明を聞きながら考えていると、そんなふうに言われてしまった。
『聞いてるよ。ここが音楽室でしょ?』
「うん」
もともと二つのことを同時にこなすのは得意だし、並中の地図は脳内にきちんとインプットしてある。
こっちに来ることが決まった時点でそのくらいはしておいた。
だから今日はその記憶と実物を繋ぎ合わせるだけで、随分楽なものだ。
ぐるりと校内を一通り案内してもらってから教室へと帰るために廊下を歩いていた。
『そういえば、ツナって好きなひととかできた?』
「な!?ななな何だよ突然っ」
『…いるんだー…へー』
「…顔こわい。もしやとは思うけど、変なことしないよね…?」
『大丈夫だよ。…ツナに想われるに値する女だったら』
青ざめてるツナには悪いけど、次期ボンゴレなんだから仕方ない。
将来、変な女に唆されて組織が傾いたりしようものならたまらないのだ。
まぁボンゴレの血を引くのだから、超直感でそうはならないと思うし、できればツナには自由に恋愛してもらいたいけれど。
とりあえず今は見極めないと、心配だ。
『ねー、誰?』
「言わない!なんか危ないしっ」
『人畜無害だよ』
「どこがだよ!昨日鈴木にチョーク投げておいてっ」
あの少年は鈴木っていうのか。
ブラックリストに入れておこう。
「てゆうか俺のそんな話はどうでもいいだろ!?寧々こそイタリアで好きなやつくらいいなかったのかよ」
『…私は好きなひとなんかできてもムダだからねぇ』
「え?」
なんでもないと笑ってごまかす。
私は、恋愛をするつもりはない。
その方が、後々都合がいいと知っているから。
『ほら、教室ついたしぼさっとしてないで入ろ』
「う、うん」
『次の授業なんだっけ?』
「体育だよ」
残念ながら体育は男女別だ。
今日は男子がソフトボールで女子が陸上らしい。
更衣室に向かうため自分の席で着替えを用意していると、声をかけられた。
「ねえ、沢田さん」
『なに?』
声をかけてきたのは二人組の女の子だった。
ショートヘアの柔らかい雰囲気の女の子と、黒いロングヘアーの大人っぽい女の子。
どっちもかわいい。
「更衣室、一緒に行かない?」
『え?』
「沢田たちは男子だから場所違うし。まだよくわかんないでしょ?」
ニコニコしている彼女たちからは好意しか感じなかった。
『ありがと、そうする。じゃあツナ、私一緒に行ってくるからまた後でね』
「え、うん」
ツナは待っていた山本と獄寺と慌ただしく出て行った。
その後を、私たちも更衣室に向かって歩く。
「私、笹川京子っていうの。よろしくね」
「私は黒川花」
『笹川さんと黒川さんね。私は寧々って呼んで。沢田だとツナとダブるでしょ?』
「じゃあ私も京子でいいよ」
「私も呼び捨てで全然いいし」
『了解』
京子も花も根がいいこなのだと思う。
親しみやすくて、数分で驚くくらい意気投合してしまった。