ニコラシカ

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黒い髪に同色の鋭い瞳。
黒い学ランを靡かせ、腕には風紀の腕章。
ぞっとするくらい綺麗な顔の少年だった。
そのくせ、獰猛な肉食獣を彷彿とさせるのは気のせいなんかじゃない。
彼はこちらに歩み寄ってくると、私に目をとめた。

「君、例の転校生か」
『例の……っていうのは解せないけど、そうだよ』
「ふうん。早く教室行きなよ。授業に遅れたら咬み殺す」
『かみ……?』

まさか本当にかみつくわけじゃないだろう。
意味がわからなくてツナに解説を求めて視線を送ると、青くなりながら首を激しく横に振った。
その必死の形相は、お願いだからおとなしくしていてくれ、というものだと解釈した。

『ツナ、行こう。間に合わなくなるよ』
「う、うん」

歩きだそうとしたところ、雲雀に睨まれた。

「待ちなよ」
『何ですか?』
「君じゃない。沢田綱吉だ」
「お、俺っ!?」
「君は遅刻だ」
「遅刻って……」
『挟まってたから……?』
「うん」

あっさりと頷く雲雀。
いやいやちょっと待て。

『それは横暴でしょ。閉まった時既に体は中だったし、裾だって抜けたんだから』
「うるさいよ。君が咬み殺されたいの」

途端に私に向けられる敵意。

『かまれるのは好きじゃないけど……ツナに向けられるよりはマシかな』

口の端を僅かにあげた雲雀が、取り出した一対の金属。
見慣れないものだけど、この武器は知ってる。

『へぇ、トンファー使うんだ。近接武器で最強とか言われてるよね。実物ははじめてみたけど。どんな感じなの?』
「やってみればわかるんじゃない」

言い終わるか終わらないかというところで雲雀が素早く接近してきた。
容赦ない初撃を飛びのいて避ける。
ちょっと待て。私は女だぞこら。

「ワォ、正直驚いたよ」
『どうも…?』
「いや褒められてんのそれーーっ!?」

ツナのツッコミが響く。

「君、沢田綱吉と双子なんだっけ」
『そうだけど……』
「ふうん。……君は草食動物なのかな」

尋ねるわけでもなく雲雀が呟く。
どことなく愉しそうだ。
こういう人間は今までに何度か見たことある。
こいつは戦闘狂の類だ。

『ま、ベジタリアンじゃないけど。…っていうのは見当違いな答えなんだろうね。あんたの言いたいことは何となくわかる。多分、考えてるのであってるよ』

にこりと笑って見せた。

「久々に楽しめそうだ。ねぇ君、名前は?」
『沢田寧々』
「そう。寧々、君も武器持ったら。あるんでしょ、得意にしてる何か」
『あー…ごめん。一般人相手には使わないから』
「その言い方……まるで自分は普通じゃないみたいに言うんだね」
『ふふふ、どうだろうね。まぁ、その威勢に免じて何か使いたいところだけど生憎何もないんだよね』






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