拝啓、大嫌いな『仲間』たち

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翌日。俺はかなり沈んでいた。傍目にはわからなかったかもしれないが、確かに沈んでいた。

理由などわかりきっている。昨日、文芸部に無理やり入部させられたことだ。あの後職員室に確認しに行ったら、特に問題もなく受理されていた。判子を押すところには、おかしなことに俺の筆跡でサインがされていた。どういうことだ。何故あの人たちは初対面の人間の筆跡がわかったんだ。

気になる。ものすごく気になるが、それには放課後にもう一度あの部室へ行かなければならない。彼女たちのクラスなど知らないので、部活のときに会うしかないからだ。けれど、部室に行くのには少々葛藤を覚える。

『・・・・・・・・』

テニス部に入らないという選択をした結果、こんなしっぺ返しを食らうとは思ってもいなかった。

だがまあ救いは行きたい時に行けばいい、という非常に気楽な部だったことだろう。これが、絶対に毎日来なければならない、とかいう部だったらすぐさまボイコットしてやっているところだ。

「よ、柳」

『・・・ああ、ジャッカルか。どうした?』

なぜか苦笑を浮かべている。何かあったのだろうか。

「いや、ちょっとな。入学してたった1週間で英語の辞書をなくしたなんてありえねえって思って・・・」

『・・・・・・まあ、辞書ならどこの書店でも売っているから、なくしたなら新しく買えばいいだけだ。そんなに落ち込むな』

「俺じゃねえよ!なくしたのは俺の友達だよ」

非常に失礼だと思うが、ジャッカルが“友達”という単語を口にした瞬間寒気がした。似合わなさすぎて。

しかし、ジャッカルの友達か・・・。いやまあ彼だって友人くらい何人もいるだろうが、俺が思いつくのはたった1人。そう、丸いブタ――ではなく、丸井ブン太だ。

おもいっきりテニプリのキャラである彼と接触する確率は低い方だとは思う(何しろ彼との接点は、ジャッカルの友人であることくらいだからな)が、気をつけておくべきだろう。ジャッカルだけならまだしも、この上彼とまで関わりを持つと面倒だ。彼は赤毛で目立つしな。ジャッカルはいい。いかにも目立ちそうなのに、大して目立たないからだ。(特に他意はない)

「柳、携帯鳴ってるぞ」

『ん?ああ』

貞治からのメールだ。

〈今週の土日に会えないか?近況報告がしたい〉

ふむ。特に予定はないからいいだろう。

行く旨を返信すると、ジャッカルがじっとこちらを見ていることに気づいた。

『何だ?』

「お前・・・メールする相手いたんだな」

『失礼だな』

彼の中での俺は一体どういう人物なのだろうか。ぜひとも聞いてみたいものだ。

ああ、それにしてもどうしようか。部室に行くか行かないか。俺の心情から考えれば行かない方がいいに決まっているのに、行ってみたいという好奇心も消えない。

いや待て。別に今すぐ行く必要はない。来たいときに来ればいいと彼女たちも言っていたではないか。そうだ、また今度行こう。1週間後、いや2週間後でもいいはずだ。

だから俺が今日部室に行く必要はない。そう、それでいいんだ。

ああよかった。やっとすっきりした。


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