拝啓、大嫌いな『仲間』たち
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4月。桜が咲く、入学式。俺は「柳蓮二」として、立海大附属中学校に入学した。2度目の人生なので中学入試など恐ろしく簡単だったが、目立ちたくなかったので、首席合格にはならないよう試験では手を抜いた。
ここで一つ補足しておくが、俺はテニスはやっていない。貞治はやっていたが、俺は彼のサポート役(トレーナー的ポジション)に徹していた。
テニスをしたところで俺には何のメリットもないし、「柳蓮二」と同じ人生を歩むことにも抵抗があったからだ。
などと思いながら1−Bの教室へと入る。黒板にある座席表を見ると、俺は右端の列の後ろから3番目だった。
席に着き、周りを見回してみる。ふむ・・・おっさん臭い言い方だが、何というか、皆若いな。うん、若さに溢れている。
俺は体は子ども、精神は大人(どこかの探偵マンガのようだ)だが、同級生たちは体も心も子どもらしく、実に初々しい。
それにしても、皆もう友人関係を築き始めているのか。早いな。
……ふむ。このままだと、多分俺は友達を作れず一人ぼっちで中学デビューを果たすこととなるだろう。
特に困ることはないが、しかしそんなことで同級生たちから遠巻きにされるのはいただけない。
学校というのは一種の閉鎖された空間だ。ここで彼らと距離をとってしまえば後々困ったことになるかもしれない。
が。
……………皆話し中で、話しかけられるような者が一人もいない。困った。
『………………』
おや。
「………………」
一人でいるやつ、発見。早速近づいてみるか。
『………やあ』
「!……お、おう」
はっきり言おう。正直、声をかけるべきか一瞬迷った。原因は彼の容姿にある。
色黒の肌。きれいに髪を剃ったスキンヘッドに、ラテン系と思われる整った顔立ち。
そう、彼は見るからに外人、もしくはハーフで、日本語が通じるかわからなかったからだ。
だが、今話しかけたら反応があった。というか返事をした。ということは日本語は通じるみたいだ。良かった。
『…俺は柳蓮二だ、よろしく』
「俺はジャッカル桑原。ジャッカルって呼んでくれ」
桑原、ということはハーフか。それなら日本語が上手いのも納得がいく。
「皆すごいな、もう友達作ってるなんてさ」
『そうだな。ハングリー精神が旺盛なようにも見える。良い傾向じゃないか』
確かにすごい。入学早々友人作りなど、精神年齢がおっさんな俺にはできない芸当だ。
別に皮肉を言っているわけではない。客観的な事実だ。
「…発言が親父臭くないか?」
『言わないでくれ。自覚はしているんだ』
ただ、それを指摘されるとやるせない気分になるだけである。
あれだ。心と体のギャップがすごいからだ。…………いや、いい。何も言わないでくれ。自分でも無駄な言い訳なのはわかっている。
ともあれ。
「これからよろしくな」
『こちらこそ』
友人1号、ゲットである。