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□じゅう
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・・・・さて。

『いつまでそこにいるつもりですか、光くん?』

 謙也さんを見送ったあとに言うと、木の後ろからバツの悪そうな顔で光くんが出てきました。

『盗み聞きはいけませんよ』
「盗み聞きちゃう。ここでサボっとったらアッキーと謙也さんがやってきて話し始めたんや。何や重そうな雰囲気やったから出るに出られず話を聞いてもうたんや」

 よくもまあ、しれっとそんなことを。ポーカーフェイスが上手ですね、言い訳も。
 もちろんボクは光くんが尾けてきたのを知ってましたけど、ボクは光くんよりも年上ですから。ここは黙っておいてあげましょう。

『そうですか。で?』
「は?」
『は?ではありませんよ。光くんはボクたちの話を聞いていたでしょう。謙也さんは 彼 の味方だと言いましたが、君はどうなんですか?』
「味方や。決まっとるやろ」

 鮮やかな即答でした。もうすぱん、という音がぴったりなくらい。

「あんなアホ女の言うことを信じるなんてただのアホやろ。そもそも『―――――』はそんなことするような人間ちゃうし、そんな度胸も持ってへんわ。バカやしな。あの女もあの女や。襲われた言うなら絶対”男”に対して何がしか恐怖心をもつはずや。やのに他の男に抱き締められて顔赤く染めるなんてありえへんやろ。ちょっと考えればわかんのに何でわからへんのかが俺にはわからへんわ」

 お、おお・・・嵌めた方も嵌められた方もバッサリと斬り捨てましたか。中々斬新です。

『・・・・ちなみに、光くんは四天宝寺の中で誰が敵で、味方で、傍観者か知ってますか?』
「知っとる。白石部長と千歳先輩は敵。味方は俺と謙也さんや。残りの銀さんと金ちゃんとホモ×2は傍観者」

 ホモ×2って絶対金色さんと一氏さんですよね。すごい酷い扱いです。光くん、恐ろしい子・・・・!
 とはいえ、四天宝寺は何とかですが均衡がとれてますね、人数的に。白黒さんは何となくどんな人なのかはわかりますが、千歳さんがどういう人なのかがわからないのが少し心もとないですね。でもまあいっか。どうせ後で会うんですし。




「・・・・・・か!・・・・・・・・・・・わ!」
「・・・・・!・・・・・・や!」

 何やらコートが騒がしいですね。何かあったんでしょうか。ってそういえば謙也さんって白本さんと対立してましたね。

「ええかげんにせえ忍足!『―――――』ばかりか零崎の肩も持つやと!?」
「ああそうや!俺はあいつらを信じる。琴村の言葉なんか信じられへん!」
「っ何やと・・・!?那月に謝れ!!」

 はっきり言いましょう。白井さん、あなたは子供ですか。「○○ちゃんの悪口を言うな!○○ちゃんに謝れ!」って言ってますよね。え、何なんですかこの低レベルな人。
 もしかしなくても2人のケンカの原因はボクですよね。うう、割って入りたくなんかないのに・・・。

「お前らも早よ気づけ!あいつの言うことを何でもかんでも鵜呑みに―――」
『はい、ストップ。そこまでですよ、謙也さん』

 あーもう。こうなったら”なるようになれ”です。



「朱識!」
『ただの手伝いであるボクが言うのは差し出がましいですが、今は練習中じゃないんですか?せっかく合宿に来ているんですから、練習しないと損だと思いますよ』

 ボクの言葉に、金色さんも同意しました。

「せやで蔵リン、謙也さんも。練習に戻りましょ」

 流石に白鳥さんもそのあたりの理性は残っていましたか。すっごい憎しみと弱い殺気が含まれた視線をボクに向けながらも渋々練習再開の指示を出していました。

「・・・・零崎」
『何ですか?』
「・・・・あとで話がある」
『わかりました』

 あなたの試験(もどき)はそこで行いましょう。今は他の方のを進めるのが先決ですね。
 傍観者4名か、それとも敵だという千歳さんか・・・。

「なあにーちゃん」

 くいくいと服の裾を掴まれたので振り向くと、赤味がかった髪の少年がにこにこと笑って立っていました。
 四天宝寺の人だというのはジャージを見たらわかりますが、さて誰なのか・・・・。

「にーちゃん、名前何て言うん?」
『零崎朱識、と言います。君は?』
「わい遠山金太郎いいます。よろしゅうよろしゅう!」

 元気な子ですねえ。自己紹介もハキハキしていて、とても溌剌としています。ボクの周りにはこういう人は少ないので、少し珍しいタイプの人ですね。あーいや、舞織も元気ですけど、若干病んでいるといいますか・・・玖渚さんもパワフルですけどどっかで狂ってますし。ていうか絶対あれネジが何本かぶっ飛んでるでしょ。

『はい、よろしく。ところで、何か用ですか』
「あんな、にーちゃん 何しに来た ん?」
『・・・・・・・・・・・・・え?』
「せやから何しに来たん?合宿の手伝いちゃうんやろ?」

 ・・・・・鋭い。そして、聡い。
 ボクがここに来た本当の理由を、彼は本能で感じているんでしょうね。まるで野生の動物みたいに。

「何かな、にーちゃんのこと危ないって思うねんけど、でも必要やって思うねん。何で?」
『・・・うーん、ボクにはちょっとわかりませんね。でも、その直感は大事にした方がいいですよ』

 危ないけど必要、ですか。――――面白い。

『遠山くん。君は『―――――』くんのことをどう思いますか?』
「んー・・・・わからへん。わいは話しか聞いてへんから、ほんまにそんなことがあったんか知らんもん」
『・・・そうですか』

 遠山金太郎くん。やっぱり君は、賢い。

       ≪財前光 合格≫
     ≪遠山金太郎 合格≫



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