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□いち
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―― 拝啓、お兄ちゃん、可愛い妹、そしてわが片割れ。
 ボクは今日も元気に華麗に美しく――最低です。





 ボク、零崎朱識は現在一人ぼっちです。いや、こんなことを言うととてもウザい子みたいな感じだけど、ボク個人としては本当にそんな気持ちなんです。
 ボクはほんの少し前まで、優しい家賊たちと暮らしていました。かっこいい兄(一部変態含む)と優し妹と放浪癖のある片割れ、そしてボクの6人家賊でした。
 ところが、です。ある日、ボクの前に『赤』が現れました。『赤』とは人間です(一応)。『赤』は言いました。
「へえーえ。これがかの有名な零崎人識の弟にして”人類最低”ね。中々可愛い顔してんじゃねーか」
 ボクはそれなりに有名だったみたいですね。少なくとも『赤』にモブキャラ扱いされてないぐらいに。
 『赤』はこう続けました。
「お前、学校にはちゃんと行ってんのか?」
『いいえ。ボクは今年で19ですが、学校は中学1年までです。』
 それも1カ月で中退しましたが。
「おいおい。今時高校まで行っとかねえと世の中生きていけねえぞ」
『別に無理して行く必要はないと思います。勉強する必要があるのなら自分ですればいいだけですし』
 それに、ボクは軋兄や双兄に教えてもらって、高校3年までの内容なら学び終えています。だから行く必要性は皆無です。というか、それ以前にもうボクは年齢的に高校生にはなれませんし。
「寂しいこと言うなよなー。学校っつーのはな、勉強だけをする場所じゃねえんだぞ?」
『では、他に何を学ぶところなのですか?』
「色々だ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・この人は何を言いたいのでしょうか。
 まさかとは思いますが、三流の小説やマンガのように年齢を偽って高校だか中学だかに通えとかそんな展開じゃ―――――。
《チャーチャーチャッチャーチャッチャチャーチャッチャチャー》
 あ、●ース●ーダーのテーマ。双兄からの着信ですね。
『もしもし』
≪やあ朱識くん!元気かな?私はとても元気だよ!まあ朱識君が元気なのは毎日合っているからわかりきっているけどね!だけどお兄ちゃんとしては≫
『あーはい、そうですねー。双兄、用件を簡潔にお願いします』
≪もう照れ屋さんだね、朱識くんは。明日から中学2年生として、中学校に通いなさい・・・≫ぶつっ
 ・・・・・・・・は?
 混乱しながら『赤』を見上げると―――。
「そういうことだ。頑張れよ」
 ここで殺意がわき起こったのは仕方ないと思います。



 とまあそんな長ったらしい前置きがあり、そのせいでボクは今氷帝学園という超金持ちに通っているのですけど。・・・え?断れるわけないじゃないですか。それはすなわち『赤』とのバトル→ボク負ける、ですよ?確実に死にますよ。デスロードまっしぐらですよ。
 だからボクは仕方なく、し・か・た・な・く通っているのですけれども。
 〈 死ね 〉
 〈 消えろ 〉
 〈 この世に存在するな 〉
 ・・・・・・今時の中学生って怖いですよね。くつ箱を開けたら呪いの言葉が書かれた紙に生ゴミですよ。臭いし、環境にも悪いですよね。というか、おぼっちゃんたちが生ゴミ持ってる姿ってシュールですね。
 どうしてこんなことになってるのかと言いますと・・・・・・・・・・・何ででしょうか。ボクが”人類最低”だからでしょうか。うーん、謎です。ボクはいつもと同じようなことしかしてないのになあ・・・・・・・・・。本を読んで、授業を受けて、女の子から告白されたから『ブスだからむり』って言って断って、帰りに不良に絡まれて腕一本折って。いたって普通の生活なのに。
「おい」
 うーん、どうしてでしょうか。授業中にも本を読んでいたのがダメだったのですかね。
「おい てめえ」
 あ、それとも転校早々にあったテストで全教科満点取っちゃったから・・・・・・?
「おいっつってんだろうが!無視すんな!」
『・・・・・何ですか?』
 振り返るとそこにいたのは―――えーと、どなたでしたっけ?
「ハッ俺様の名前も知らねえのか。跡部景吾だ。よく覚えておけ」
 はい、アホ部熊五郎さんですね。覚えました。でも俺様って・・・・・・・ダサ。
「跡部景吾だっ!!」
『す、すごい・・・・・ボクの心を読んだなん』
「全部口に出てんだよ!」
『そうですか、すみません。ではさようなら』
 そう言って立ち去ろうとしたら、肩を掴まれました。むう、少し痛いです。爪が食い込んでて。
「おい、待ちやがれ」
『待ってますから、手を放してくれませんか?』
 仕方がありません。ここでちゃんと彼に付き合ってあげないと面倒なことになりそうですし。いや、付き合っても結果は同じような気もします。
「ふん、いいだろう。そうやって大人しくしていたら俺様も何もしない。いいな」
 ・・・・・・・・・・今ものすごくイラッとしました。何ですか、このナルちゃん野郎は。
 腹が立つから逃げましょうか。そもそもボクがこのナルちゃんに付き合う義理などありません。
「あぁっ!?待ちやがれ!!」
 待てと言われて待つバカがどこにいるんですか、バーカ。
「待てっこの・・・・・・最低野郎があ!!」
 えぇ、知ってますよ。だってボクは―――――



                                         ”人類最低”


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