全力疾走
□会場+笑顔=好キノ再確認
1ページ/2ページ
「来てしまった」
鞄を胸に抱き、大きい会場を前に私は立ち尽くしていた。
今日私は立海を応援しに来た。だってあのブン太くんが誘ってくれたんだ!なんで唐突に誘ってかれたのかは分からないけど、きちんと彼の試合を目に焼き付けようと思う。
「はい、チケット出して。じゃこれ半券ね」
「ありがとうございます」
やっとの思いで受付をと降りすぎ抜けた扉。
その先で初めに目に飛び込んできたのは観客席に座る人、人、人。そしてそれに囲まれるように位置するテニスコート。
「す、すごい」
ありきたりな陳腐な言葉しか浮かんでこないけど、素直にそう思った。これからここでブン太くんが試合をするんだ。
夢見心地で歩いているとテニスコートの端の方に見慣れた赤い髪があることに気づいた。瞬間的にブン太くんだと分かって頬が緩む自分はすごいと思う。
ブン太くんの方も私に気付いてくれたのか、一瞬動きが止まる。そんな彼も格好よくて私は手を振りながら彼に近づくために階段を駆け降りた。
「こんにちはブン太くん!ジャージ姿も格好良いですね!」
「お前は…いや、いいわ……」
「おう、名無しさんじゃなか」
「こんにちは仁王くん。お言葉に甘えて試合見に来ちゃいました!」
「そうか。応援、期待してるぜよ」
「はい!任せてください!」
元気よく返事をすれば仁王くんは目を細めて私の頭を撫でてくれる。なんだか子供扱いされている気もするけど、まあいいか。
「ブン太くんはここで、このコートで戦うんですよね!」
「まあな。向こう側、揃いのジャージ着てるやつら見えるか?」
「はい」
「あれが俺達の相手、青学だ」
「青学…」
それが彼ら立海の最後の相手。
.