全力疾走
□準優勝+誘イ=波乱ノ予感?
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俺達の最後の関東大会が終わった。
初めて奪われた王者立海の座。
今回は挑戦者として挑む全国。
借りはきっちり返すんが俺ら立海じゃけえ、これからは今まで以上に練習時間が増えるんは想像に容易い。
そうすると名無しさんと話す時間も必然的に減るわけで。
「……」
そこまで考えた俺は自然と行動に出とった。
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「遊園地、ですか?」
「そ。知り合いからチケット二枚貰ったんやけどいかんか?」
「私なんかより丸井くんと行ったらどうですか?仲良いんですし」
「男二人で遊園地なんてむさいだけじゃ。それに俺は名無しさんと行きたいなり」
そうですか、と呟いた名無しさんは少し考えてから顔の前で両手を叩き笑顔で頷いた。
「分かりました!一緒に行きましょう!」
その笑顔に思わず俺の顔も綻ぶ。
それにしても、さっきの言葉少し考えれば俺が名無しさんに好意を抱いてると分かるんに、コイツはそれに全く気づかん。鈍感と言うわけでもないはず。
きっと良くも悪くも丸井しか見えとらんのだろう。
「全く、俺も不毛な恋をしとるぜよ」
「ん?何か言いました?」
「いいや。ほんじゃ、今週の土曜日9時に駅前な」
「はい、楽しみにしてますね!」
「俺こそありがとさん」
表面上はあくまで冷静に、心の中ではガッツポーズを決めて教室に戻った。鼻唄なんかを歌いながら席に戻れば隣の丸井が話しかけてきよった。
「どうした仁王。珍しくご機嫌だな」
「…知りたいか?」
「おう!」
「名無しさんとな、デートの約束をしたんじゃ」
「……デート?」
「今度の休みに遊園地に誘った。じゃけえ、お前さんより一歩リードだな」
牽制のつもりで言った言葉に丸井は想像以上に衝撃を受けていた。
まあ、自分に好意を寄せている女がまさか違う男とデートなんて、な。
「名無しと…?」
「ああ、名無しさんとデートじゃ。羨ましいか?」
…名無しさんがデートと思ってる確率は限りなく低いが。それはこの際置いておく。
「…別に。アイツが誰と行こうが、お前がアイツを誘おうが俺には関係ねえし」
「そうか。なら遠慮はせん」
「好きにしろよ…」
そう言ったきり前に向き直り難しい顔で黒板を睨む丸井に俺は何も言わんかった。
アイツが本当はどう思っていようと、俺はチャンスを逃さず掴みに行くだけじゃ。
俺は丸井を見ながら力強く拳を握った。
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