全力疾走

□春+彼女=溜メ息
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――春、新しい季節を迎え俺は最高学年に進級した。


新しい出会いなんかを期待して楽しそうに登校してくる奴もいるけど、俺が楽しそうにしてるのは決してそんな理由じゃねえ。




「お、ブンちゃん」




新しい教室に入り指定された席に着いた時、入口の付近から女子のやっかましい叫び声が聞こえてきた。

かけられた声にまさかと思えば我らが詐欺師が立っていて。




「今年は同じクラスなんか、」




周りの女子には目もくれず真っ直ぐに俺の隣の席に座る仁王は、相変わらず女に興味が無さすぎだと思う。


まあ俺も人のことは言えねえけどな。




「おお、よろしくな仁王!」

「何かいつにも増してウザ、…楽しそうじゃなあ。どうかしたんか?」

「…はあ、クラス分けの張り紙見たか?」

「阿呆、見たからここにおるんじゃろ」

「…、今年はなアイツと同じクラスにはならなかったんだぜぃ!」




俺の言うアイツが誰だかすぐに分かったのか、見る間に仏頂面を崩す仁王は見ていて少し面白かった。


そういえばアイツは仁王のお気に入りなんだっけか?




「なんじゃ、同じクラスにはならんかったんか。残念ぜよ」

「残念!?こんな嬉しいことはないだろぃ!」

「仁王、丸井静かにしろ!」

「…あんな可愛い子に好かれて羨ましい限りナリ」

「そう思うなら代わってくれよ」

「プリッ」




いつの間に来たのか、教卓の隣に立っている先生に煩いと怒られ。


それでも懲りずに話しかけてくる仁王に俺も小声で言い返し机に突っ伏した。



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