一万打

□クルリ様
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「奥村くん?おーくーむーらーくーん」



大きな声で呼び掛けても返ってくる声はない。いまの今まで会話していたはずの彼は俯いてしまっている。



「どないしたん?」



数メートル離れた位置に腰かけていた男の方へ近付く。



「ん……ふぁ……ねみぃ………」



そういうなり彼は志摩に寄りかかって寝息をたてた。



「え?!嘘やろ!?」



燐の手に酎ハイの缶があるのをみて、酒に酔ったのだということに志摩はようやく気付いた。
しかしこのままにしておくわけにもいかず。
仕方なく、自分と対して変わらないその身体を持ち上げ自室へと向かった。














「おっも……」



体力筋力ともに人並みである志摩にとって、燐を担いで運ぶという作業は身に堪える。
布団でも敷いてやるかと立ち上がり押入れから布団をだしていると、その音に反応したのか燐が目を覚ました。



「志摩?」


「ああ、堪忍、起こしてもーたな」



布団を敷くからそこで寝ていいよ、そう声をかけると燐は大人しくしたがった。



「志摩……ちょっと、こっち」


「ん、何?」



次の瞬間、志摩は自分の身に何が起きたかすぐには把握できなかった。
目の前に燐の火照った顔があって、唇には生暖かく柔らかな感触、そして酒の匂い。



「ん……?!」



その刺激がようやく脳にまで届いて、志摩は燐を突っぱねた。



「な…、な…………!?」



何も言うことができず、ただその幼い顔を見つめた。悪戯っ子のように笑ったそれは、再び志摩の口を塞いだ。
決して深くない、戯れるようなキス。
ちゅ、ちゅ、とわざとのように音をならされて、志摩は赤面した。



「ちょ…っと、酔ってはるん?!」


「酔ってねーよばーか」



完全に酔っぱらった雰囲気で絡んでくる燐は正真正銘男だ。
もちろん自分も男。
そして自分が好むのは、柔らかい、女だ。
そんなことわかりきっている、けれど不思議と嫌悪感は全くない。



「な、俺とキスすんの、いや?」



だから、嫌だなんて言えなかった。



「嫌や、ないけど……」



そう答えると、燐は安心したように顔を綻ばせた。



「じゃ、もっとしよう?」



どんな目的でそう言っているのかはわからない。
彼の気持ちを聞いたわけではないのだから。
でも、彼の言葉や仕草が志摩をこの上ないほど煽る。
気持ちなんてそんなもの、どうでもいいじゃないかと言うかのように。



「あ、志摩っ……ん…、ふ…っ」



今度は自ら仕掛けた。そして唇を探り舌を侵入させる。
驚き逃げようとする燐のそれをどこまでも追いかけ、吸い付いた。



「ふぁ…っ、ぅん…っふ、」



たまらずくぐもった声をあげる燐。
それにも酷く興奮する。
つまり、知らぬ間に夢中になっていたのだ。



「ふ、……は、」



唇を解放すると、燐は瞳にうっすら膜をはり、肩を震わせていた。そして、小さく反応する下肢に気付いた。



「あ…っ?」


「ここ、きついやろ?」



ズボンの上からそれに触れると燐は羞恥に顔を紅く染め、みじろいだ。
嫌がっているのではないと確信づいた志摩はファスナーをおろしそれに直に触れる。
自分は本当に、何をしているのだろう。



「あぅ…っ、」



他人のものに触れたのは初めてだったが、やはり嫌悪感はない。
勝手もわからず、自分で処理するときと同じように手を動かせば、面白いくらいに反応を示した。



「あ、あ…っ、は…」


「イきそ?イってええよ」



顔を覗き込んでそういえば



「う、ぁ…っ、志摩…、き、きす、しろ…っ」


「かいらしな」



心からそう思った。小さな唇にキスをして、絶頂を迎える燐の声を飲み込む。



「は、ぁ……」


「寝てええよ」



そう口にして子供騙しのようなキスを落とすと、燐は小さく笑って意識を手放した。















「ほんまに?覚えてへん?」


「知らねえって!朝飯んときから言ってるだろ」


「せやけど……」



燐の酔い方は最悪だ、志摩は肩を落とす。
結局燐の昨晩の行動がただの悪酔いだったのか、本心の現れだったのか、何もかもが判然としない。
ただ、わかったことがひとつ。



「奥村くんは、俺のこと嫌い?」


「はぁ…!?嫌いじゃ、ねぇ、けど……」


「俺は好きやで、奥村くんのこと」


「だから何だよ……」



俯きながらもじろりと睨むその仕草が可愛らしい。
その態度だけで十分だった。



「うん、おおきに」



彼の気持ちはこれからゆっくりと探って、そしていつか自分のものにしてやろう。
前途多難な日々を予感しながら、志摩は任務へと向かった。
















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はい、酔ってキス魔になる燐です!
クルリ様と少し話がでまして、本当に勝手ながら、原作沿いのようにさせていただきました…これでよければもらってください。若干リクエストとずれてしまった可能性もありますので、不服でしたら、クルリ様からのみ書き直しの依頼をお受けいたします!リクエストありがとうございました!

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