一万打
□あきろん@乃衣香様
1ページ/1ページ
「なー、燐くーん」
「うるさい」
「うわーん燐くんのいけず!」
「泣くな!」
ここは旧男子寮、正十字学園にお入学した俺が住んでいる場所だ。
数日前、そこに何故か、京都にいるはずの恋人金造さんがやってきた。
どんなルートかは知らないが、どうやらここの鍵を入手したらしく、最近よくやってくる。
「つーか、不法侵入だろ、人ん家の鍵持っていつでも入れてたら」
「ここは第二の俺の家やさかい、関係あらへん」
「ここは俺の家だ」
きてくれるのは別にいい、むしろ嬉しいのだが、金造さんは間が悪い。
雪男がいるときに入ってきそうになったり、俺が今のように珍しく勉強に集中しているときに入ってきたり。
「なー燐くんー」
声をかけるだけだった金造さんはいつの間にか俺の後ろに立っていて、肩を揺さぶってきた。
「いま課題してんだよ!あと少しで終わるから、ちょっと待っ」
「待てへん」
そういった金造さんの、肩に置かれていた手が胸の辺りまで下りてきて、さらさらの金髪が首筋に触れる。
つまり、後ろから抱きしめられた。
「ちょ、金造さ」
「なぁ、俺のこと、好きやろ?」
金造さんは耳元で囁いた。
「そんなら、もうちょぃ構ってや?寂しいやん?」
俺は金造さんの声に弱い。
バンドのボーカルをやっていることだけはあり、金造さんが時折だす声は綺麗で、耳元で囁かれれば、鼓膜を犯されたような錯覚に陥る。
これが故意的であるならば、やめろと跳ね除ければいいのだが、そうではないから質が悪い。
「何や、何で黙っとるん?」
「あ、…」
金造さんは無意識でその声を時々発すのだ。
だからそれにいちいち反応するのはおかしなことだ。俺が意識するのが悪い。
でも俺の身体と心は意識するよう、これまた無意識に開発されていて、その声を聞くと俺はたちまち力が抜けて何も言えなくなってしまう。
「うわぁぁぁあああ燐くんが俺に放置プレイ強いてくるー酷いわー!」
俺があんまりにも黙っているものだから、金造さんは俺から手を離して大袈裟に泣きまねをした。
いつもの声に戻ったおかげで、身体の緊張が解れてくる。
「今日は、もう課題やめっから」
「ほんまー?!」
子供みたいに目を輝かせた金造さんが、立ち上がった俺に飛びついてきた。
力には自信があるから、それを難なく受け止めた俺だったが。
「大好きや、愛しとるで」
再び耳元でそう囁かれ、俺は完全に体勢を崩し、その場に崩れ落ちた。
end.
―――――――――――――――――――
はい、金造の声に弱い燐くん!
なんか金造をばかみたいにしすぎた感があるけど彼はこれくらいバカみたいな方がry
駄文ですがあきろん@乃衣香様のみお持ち帰り可能です、リクエストありがとうございました^^