一万打

□和菜様
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「ただいまー」


「廉造、おかえり」



市街地から少し離れた場所にある住宅地。
決して大きくはないが小さくはない、そんな平凡な家。
それが俺の家だ。
帰ったら必ず俺を待っている人がいる。



「おかえりなさーい!!」


「愛造(ういぞう)ただいまぁ、ええ子にしとったか?」


「うん!」


「さっすが俺の子やー」



そういって息子の愛造を抱き上げる。
奥村くん、いや、燐と同居を始めてからあっというまに何年もの年月が過ぎた。
俺の就職が決まってすぐに、結婚の話を持ちかけた。
周りの反対も多かったが、それを押し切って今の俺たちがいる。
不安なことや大変なこともあったが、いつの間にやら子供までできて、不自由なく生活している。



「おい、飯と風呂どっち先?」



愛造を抱いて遊んでいると、燐がそう声をかけてきた。



「んー、とりあえず燐やなぁー」


「飯な」


「ちょ、スルーせんでよ!」



年々上がる燐のスルースキルに怯えながらも懲りずにちょっかいを仕掛ける。
しかし、これが楽しみでもあるのだ。



「うるせーな子供の前で変なこと言うんじゃねぇ」


「えーやーん、な?」



調子に乗って燐の腰に抱きついた。



「いだぁ!」



案の定殴られた。



「もー、燐がいじめるから俺寂しいわー愛造慰めてー」


「えー」


「えー、やない!ほーら、つーかまーえた!」



そう言って再び愛造を抱き上げる。
ぎゃーぎゃー騒ぎながらも楽しそうに笑う愛造に口元は緩みっぱなしだ。



「愛造は燐によー似とるなぁ」


「ん?」


「目がな、垂れてへんわ。燐みたいに、きりっとしとる」



愛造は俺の家系の象徴でもあるたれ目を受け継がなかったのだ。
でも、そのほうがもちろん好都合で。



「俺に似らんでよかったわー、自分の顔に似とる子供可愛がるの、気色悪いし。
あー、燐に似て愛造はかいらしなぁ」



そういって愛造を抱きしめる。



「苦しい、くーるーしーいー!」



もがく愛造を、思わずいつかの燐と比べた。



「あかん……これ…おれ、愛造がおっきくなったらうっかり犯してまかもしいだぁあぁ?!」


「エロ魔人!自分の子に手ぇ出すんじゃねぇよ!」


「じ、冗談やて、堪忍や」



最低なことを言いかけた俺に燐の制裁が再び下る。
冗談で済むことを祈る。
















「仕事お疲れ。どうだった?」


「今日は変な客がおってなぁー対応するんがめんどくさかったわぁ」



愛造が眠りについたあと、ダブルベッドで二人、仕事や家事の話をするのが日課だった。



「愛造のやつ、まだ3歳のくせに肉ばっか食いたがるんだよ」


「そら、奥村くんに似たんやな」



容易く想像できる光景に笑みがこぼれる。



「テレビで可愛い女の子映ったらくぎ付けだし」


「はー、誰に似たんやろなぁ…」



今度は苦笑いが漏れた。
そうしていると、布団の中で燐が俺の手を握った。



「燐?」


「俺と愛造重ねんじゃねーぞ犯罪者」


「まだ犯してへん!」



そうツッコミを入れると、燐は俺のほうを、俺の目を見て、



「俺と愛造には、違う愛情注げよ」

「な、…」


「おやすみっ」



そう言うなり、燐は俺に背を向けてしまった。
だからその肩をぐっと引き寄せ唇にキスをする。



「あ………」


「久しぶりやんな、ちゅーすんの」



愛造という息子ができてから、甘い雰囲気というのはやはり減った。
それに、互いに大人になり、身体を繋げることだけが愛ではないとを知った。
久しぶりの色事に、燐は一瞬で顔を赤らめる。



「初めてちゅーしたみたいな顔しとるよ?」


「っるせぇ!」


「な、今日、せぇへん?」



露骨に頼んでみる。



「う、愛造が起きる、から」



思った通り、燐は焦ったように困ったように目を泳がせた。



「奥村くんが声出さんければええんやで?」



そうやって、いつかと変わらない言葉で挑発すれば、燐もまた、昔と変わらない反応で────













end.




―――――――――――――――
はい、夫婦ネタです!
どうやって子供が生まれたかは秘密です(^q^)
成長した愛造を書こうか迷いましたがとりあえずショタに(意向が見え透いている
というわけで、和菜様のみお持ち帰り可能です、書いていて楽しかったです、リクエストありがとうございました!!

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