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05/22(Tue) 19:00
節制ちゃん
そんなことを思いながら皐月さんに笑い返す。
すると、黄金の奴がようやく記憶漁りを終えて怒鳴りだした。
「さっちゃん!黄金ちゃんそんな事してないよ!」
「えぇ、していませんよ?流石は黄金様、よく覚えていらっしゃいましたね」
「ムキィー!またからかってぇー!!」
そんな黄金に、笑顔でさらりと言ってのける皐月さん。
からかわれたのを理解した黄金は地団駄を踏んだ。
その二人の様子を見て、ついに俺は耐えきれず笑い声を上げたのだった…。
「…で、結局何しに来たの?」
一通りコントを見終えた後、立ち話もなんだったので家の中に二人を招き入れて用件を聞く事に。
居間の食卓に二人を座らせ、俺は紅茶を淹れながら問いかける。
席に着くなり蓮香との勝負―あっち向いてホイ―に夢中な黄金が答える訳もなく、その問いは空を切る。
それに対して、仕方無い、といった感じでため息をついた優しいメイドの皐月さんが宙を舞う問いを受け止め、答えを俺に投げ返してくれた。
「…はい、実は花火大会のお誘いに伺いまして」
「花火大会?」
その答えに思わず聞き返してしまう。
記憶が正しければ、祈常市に花火大会なんて催しは無かったはずだが…。
そう疑問に思っているのが顔に出たのか、皐月さんは言葉を付け加えた。
「黄金様主催、でございます。せっかくの夏休み、花火をやらずに何をやる!…と、おっしゃいまして」
「あぁ、成る程。それで誘いに来た、と…」
俺は彼女の補足に納得し、頷く。
なんともまぁ黄金らしい発想だと思ったから。
そこで、勝負に決着がついた黄金―向かいの蓮香が項垂れているのを見る限り、勝利したのだろう―が上機嫌で話へ入ってきた。
「そう!新しい友達が二人も出来たしねっ!ここは親睦………で合ってる?さっちゃん」
「はい」
「…と、親睦を深める為のイベントとしては持ってこいじゃん!花火大会!二人共来るよね!?」
そう、目をキラキラと輝かせて喋る黄金。
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05/22(Tue) 19:01
節制ちゃん
俺も特にやる事がなく、暇していた所だし…親睦の為というのなら断る理由は見当たらない。
それに、黄金がこんなに楽しそうな顔をしているのに断るのはあまりにも不粋だ。
考えるまでもなく誘いを受ける。
「あぁ、そういうことなら勿論行くさ。な、蓮香?」
「ん?…あぁ、勿論じゃ。折角の誘いを断るほどの用も無いしの」
蓮香も笑顔で承諾してくれた。
ここで行かないとか言ったら大変だっただろうな…なんて考えていると、黄金が再び口を開く。
「やったぁー!ね?ね?茨子はっ?茨子も一緒に誘おうと思ったんだけど!」
そう言って、居間の中をキョロキョロと見回す黄金。
茨子の姿を探し、見えないと分かると蓮香に向かい『寝てんの?』なんて質問している。
蓮香は、申し訳なさそうに笑って質問に答えた。
「すまんの黄金、茨子の奴は朝はように行き先も告げず出掛けてしもうてのー…いつ戻るやら」
それを聞いた黄金は残念そうな顔をしたが、すぐに元通りの笑顔で喋る。
「そっかー…残念。でもいっか!また花火大会開いて誘えば良いし!ねっ?」
そう振られた蓮香は、困ったように笑うのだった。
念の為、茨子に書き置きを残して家を出た俺達は、黄金に促されるまま外に停まっていた黒光りする高級車に乗り込む。
「よっしゃ!次はヨッシーを迎えに行くぞー!おー!…て訳で、さっちゃん頼むよー」
「はい、黄金様」
そう黄金が喋ると、運転席に座る皐月さんは車を走らせ始めた。
ヨッシーの家へ向かう道すがら、俺達は話をして暇を潰すことに。
「ヨッシーの所まで迎えに行くとは思わなかったよ」
「え?何で?」
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05/22(Tue) 19:03
節制ちゃん
「いや、アイツの事だ…呼び出せば走って駆けつけるだろ?アホだから」
不思議そうにする黄金にそう返す。
すると、愉快そうに笑いながら声を上げた。
「あはは、そーだけどさ。今日はヨッシーだけじゃなく良姉も誘おうと思ってたから…久し振りに顔見たいし」
良姉とは、勿論良さんの事である。
黄金は、かつて『祈常の悪魔』と呼ばれる程の実力を持った彼女を尊敬しており、そういう念を込めて良姉と呼び親しんでいるのだ。
良さんも、そんな黄金を気に入っているらしく、自らの妹と公言する程で…二人はとても仲が良いのだ。
なので、迎えに行く理由にも頷けた。
「ほぉ、根子月殿の姉上も誘うのか」
「おぉ!蓮香も良姉の事知ってるの!?」
「まぁの、何度か家に招いた事もある。のぉ…縁?」
「あ?…あぁ、うん」
と、蓮香の振りに曖昧に返事をする。
その理由は、言わずもがな…。
いつぞやの『俺が良さんに浮気している』と誤解を受けた事があったからだ。
あの時は、蓮香が数日間口を聞いてくれなかったのだ…嫌と言うほど覚えている。
しかし、後日…蓮香は良さんと会合、後に和解したと言って機嫌を治してくれていた。
しかもその後は、度々二人でお茶をするようになったのだから、謎が謎を呼ぶ。
二人の間に何があったのか…それを知らない俺は、未だ不安を感じているのだ…。
「でねー!良姉ったら…」
「ふふっ、そうなのか。意外と可愛い所があるんじゃの」
と、俺が一人深い思案に耽っている間に、女の子二人は楽しそうにお喋りを興じていた。
どうやら、良さんの恥ずかしい話題で盛り上がっている様である。
女の子ってのはお喋りが好きだよなぁ…なんて頭の片隅で思いつつ、すっかり蚊帳の外になってしまった俺は、窓の外に流れる景色へと意識を飛ばすのであった…。
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05/22(Tue) 19:05
節制ちゃん
どれ程時間が経ったろうか…。
心地好い揺れと流れる景色のお陰で、俺の意識はすっかり闇の中へ落ちていた…。
そんな闇の中、俺はフワフワと漂っている。
一瞬、何故こんな所に…なんて思ったが、すぐに夢を見ているんだと理解した。
『いつの間にか寝入ってしまったのか…やれやれ』
そんな事を呟いてみたが、俺は一向に夢から覚める様子がない。
本当にやれやれだな。
諦めた俺は、仕方無しに夢が終わるのを大人しく待つことにした。
ヨッシーの所に到着したら、蓮香か黄金が起こしてくれるだろうし…多分…いや、きっと………あれあれ?ちょっと自信が無くなってきたぞ…?
と、不安な思いが沸き上がってきた瞬間だった。
目の前に『それ』が現れたのは…。
闇の中、本来浮かぶはずもないそれ。
しかしそれは、今、俺の目の前にはっきりと映っている。
闇を切り抜いたような…『漆黒』…漆黒の存在が。
その漆黒は、周囲の闇に同化する事なく輪郭を映し、鋭い双眸で俺を睨んでいた。
その姿に、俺は見覚えがある。
『狐………蓮香、か?』
そう、昔似たような出来事があった。
車に轢かれて、蓮香に助けられた時だ…。
あの時に見た蓮香の姿…狐の姿にそっくりだった。
しかし、色が違う…彼女は美しく輝く白銀色をしていたはずだ。
『なら、こいつは…いったい…』
そこで、俺は改めて漆黒の狐を見る。
良く見たら、その尾は八本…俺はそこからある人物…いや、狐を連想した。
「茨子…なのか?」
そう、自らの義妹の名を呼ぶ。
その途端、漆黒の狐の目が邪悪に光り、白く鋭い牙を剥き出しにして俺へと襲いかかってきた。
あまりの速度に抵抗する間もなく、その牙は俺の喉へと突き刺さり、捕らえた部位を食い千切る。
叫び声をあげる事も出来ず、俺の意識はブッツリと途切れてしまった………。
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05/22(Tue) 19:07
節制ちゃん
「…………」
混濁する意識の中で、俺の耳は声を捉える。
「……!…………!」
俺を呼んでいる気がして、揺さぶるそいつの腕を掴む。
その瞬間、意識がハッキリと戻り、失っていた感覚を取り戻した。
クリアな視界、音が広がっていく。
「おい!八尾っち!大丈夫か!?」
そう、永久の眠りから目を覚ました俺の目に映ったのは、素敵な愛妻狐でもなければ、可愛い鬼娘の友人でもない。
とってもハンサムな王子様、根子月君でした。
そんな素敵な王子様に目覚めさせられたお姫様の俺は、一目で恋に…。
「おっ!よかった、気がついたか!」
「気がついたか…じゃねぇよ!?」
「ぐはぁっ!?何故にぃ!?」
落ちませんでした、そりゃそうだ。
だって俺、姫でもないしBLの趣味もないもん。
そんな訳で、腹いせにヨッシーを殴りました。
殴られたヨッシーは、大袈裟にも車外まで一直線に吹っ飛ぶ。
良く見ると、扉が開いているではないか。
………て、事は。
「根子月様の自宅前、でございます」
と、運転席に座っている皐月さんの声で疑惑が確信となる。
やはり、俺が眠っている間にヨッシーの家に着いていたようだ。
「大丈夫ですか?お休みの途中から魘されていたようですが…」
バックミラー越しにこちらの様子を見ている皐月さん。
どうやら心配してくれている様だ…。
それに比べて、蓮香や黄金のなんと薄情な事か…心配どころか車内にすらいない。
お喋りに夢中だったのか、はたまた寝ている俺に気を遣ったのか…どちらにせよ悲しいことだ、ちょっと声をかけてくれたって良いだろうに…。
そんな考え事をしていたら返事が遅れてしまい、皐月さんに更に心配をさせてしまった様である。
「体調が優れないのなら病院に…」
「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと嫌な夢を見ていただけですから」
「成る程…悪夢、ですか…いったいどの様な夢だったのですか?」
差し支えなければお聞かせ願いたい、と皐月さん。
恐らく、夢から俺の心理分析でもしようってとこなのだろう。
まぁ、別に隠しておく程でもないので、俺は先程見た夢の内容を教える…。
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