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05/18(Fri) 15:04
節制ちゃん

「これでいいんでしょー?」
「よしよし、物分かりが良くて結構だ。良いオレンジジュースを出してやろう」

満足そうに受け取った小切手を懐にしまうと、飲み物を淹れる為に奥へ引っ込んだ銭兄。
それを見届けてから、黄金は不満そうに口を尖らせて喋る。

「むぅ…何故かここに来る度不当な請求をされるなぁ…」
「黄金様が物を壊すせいです」
「え!?黄金ちゃんが悪いの!?だってだって、鍵がかかってる方が悪くない!?そりゃ壊すでしょ!」
「壊しません、馬鹿ですか貴女は…。私が『八尾様にご連絡したら』と提案したにも関わらず、助走をつけてドロップキックをするなんて常識的に考えて100%黄金様が悪いです、大変悪質です…大体ですね、いつもいつも主は」
「うぇー!ゆーくんヘルプッ!さっちゃんがいぢめるぅー!」

皐月さんに説教をされ始めるという所で、狙ったのか、はたまた本能なのか…俺の後ろに回り込んで盾代わりにした。
すると、皐月さんは呆れた表情で深い溜め息をついた後に『もういいです』と言う。
そんな彼女の肩をポンと叩いて紅茶を差し出したのは銭兄。

「さ、飲み物も入った所で座ろうか」

彼の声に一同は、近くの席に腰をかける。
少し大きめのテーブルに、俺の向かいに銭兄、隣に黄金、そしてその隣に皐月さんと、席をずらした変則的並びで。
その並びが気にかかったのか、ただ一人向かい側の銭兄が引きつった笑顔を浮かべた。

「…もしかして皆、僕の事嫌いなのかい?」

その言葉に、俺と黄金は顔を見合わせた後正面を向き、きっぱりと、そして笑顔で答える。

「「はいっ!」」
「お前ら…お兄さんはそんな子に育てた覚えはないぞ…?」

銭兄は、俺達の答えにガックリと項垂れて頭を抱えた。
そんな時、質問に答えていなかった唯一の人物、皐月さんが机を叩いて勢い良く立ち上がり喋り出す。

「わ、私は別に銀『さん』のことが嫌いという訳では無くてですね、従者として黄金様のお側を選んだだけでしてっ!………あ」

そこまで捲し立ててから、ようやく自らに突き刺さる三つの視線に気がついたのか…ハッとなった彼女は少々気まずそうな顔をして座り、消え入りそうな声で『申し訳ありません』と呟いた。

その行動を見た俺はピンと来たのだ。
銭兄の言わんとしていた憂鬱の正体を。

そうと解れば即行動、俺は席から立ち上がる。

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05/18(Fri) 16:50
節制ちゃん

「おや…どうした、ユー?」
「トイレ?」

当然、俺の突然の行動に疑問を持つだろう…約一名を除けば。

「………」

そう、珍しく取り乱していた皐月さんである。
頭の良い彼女の事だ、何となく意図に気が付いているはず。
まして、自らの失態後にすぐ起きたのだから尚更の事。
その証拠に彼女は沈黙し、俺から微妙に視線をそらしていた。
それらを踏まえた上で、俺は発言する。

「ちょっと『用事』を思い出しました。少し出掛けてきます」

その言葉に、真っ先に反応するのは黄金。

「えー!?………ゆーくんが居なきゃツマンナイから黄金ちゃんもついて行く!」

予想通り、俺が欲しかった台詞を見事に喋ってくれた黄金。
しかし、ここで彼女は黙ってはいない。

「ならば、私もお供を…」

そら来た。
だが、そうはさせない…というか、させては『もらえない』。

「だーめっ!さっちゃんは待機!今からゆーくんと二人っきりの『デート』するんだから!」
「で、ですが…」

尚も食い下がる皐月さんに、俺が追撃をかけた。

「大丈夫ですよ、少しの間ですから。黄金の事は俺に任せてくださいよ」

流石の皐月さんも、二人がかりの言葉攻めに耐えきれず折れた。
『承知しました』と、いつもの無表情を貼り付けて口に出す。

「それじゃ、黄金…行くか」
「おー!」

そうして、俺と黄金は二人を残して店を出る。
外に出た途端手を繋いで、にへらっと笑う黄金。
すっかりデート気分なのだろう…やれやれ。

「さっ!ゆーくん、レッツゴーだよ!」
「はいはい、レッツゴー」
「…で、どこ行くの?」

そう聞かれた俺は、誤魔化すように空を見上げて呟いてみる。

「んー?………うーん、と………何処だったっけなぁ…忘れちゃった」
「あっはは!ゆーくんは忘れんぼうだなぁ」
「そうだなぁ…ま、歩いてりゃその内思い出すさ」

他愛のない話もそこそこに、俺は黄金の手を引いて、アテもなく歩みを進めることにした…。

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05/18(Fri) 16:52
節制ちゃん

―銭と皐月が残された店内―

縁と黄金が出て行くと、何とも言えない沈黙が空間を支配する…。
お互いがチラチラと相手の様子を、出方を伺っていた。

『八尾様に気を遣われてしまった…けど、どうしようコレ…』

そんな皐月は静かにミルクティーに口をつける。
一方、銭はというと…。

『にゃろう…ユーの奴、僕にいらん気を遣いおってからに…』

同じく、縁の行動の意図に気がついた様で、目を細めコーヒーを啜っていた。

ふぅ、という溜め息と同時にカップを降ろす。
二人とも、全く同時に。
そして、相手の様子を伺うべく目を正面に向ける。
これまた同時に。
そんな事になれば、当然目が会う訳で…二人して身体を硬直させた。
息がピッタリである。
硬直が解けた二人は、何とも微妙な笑顔を浮かべて何を言うか迷っている様子。
そして…。

「あのっ!」
「ねぇ」

沈黙を打開したのも二人同時。
夫婦かっ!?…と、ツッコむ者はこの場には無く。
そんな訳で、また沈黙。
しかし、この沈黙は長く続かなかった。

「なんだい、皐月ちゃん」
「あ、いえっ…銀さんこそ、どうされました?」
「んー…多分、君と同じ事を言おうとしてた」
「!?」

銭が、にんまりとした笑顔と共に吐いた台詞に驚いた様子の皐月、貼り付けた無表情を少しだけ崩して目を泳がせている。
そんな彼女に、銭は優しげに語りかけた。

「さっきの台詞なんだけどさ…いったいどの質問に対する答えなのかな?今日?それとも…」

その言葉に、皐月は更に視線を泳がせて落ち着かない様子を見せたが…やがて、短い答えを口にした。

「今日の、です…」

そう、彼女が答えると銭は笑う。

「そっか…なら、僕はまだ君にフラれちゃいないって解釈しても構わないのかな?」

その問いに頬を朱色に染めた皐月は、少しだけ、本当に少しだけ首を縦に動かした。

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05/18(Fri) 16:55
節制ちゃん

―一方、縁と黄金はというと…―

「ゆーくん、あのぬいぐるみも取ってー」
「またかよ…お前どれだけぬいぐるみ取りゃ気が済むんだよ…店員さんめっちゃ睨んでるじゃねぇか…」
「えー?悪いのは黄金ちゃんじゃなくてワンコインでゲットするゆーくんだよぉ?…だーかーらっ、今回はお金いーっぱい使って取ってね!もち黄金ちゃんが払うから」
「はぁ…わかったよ、しょうがねぇな…」

大小様々なぬいぐるみを沢山抱えた黄金の願いを渋々承諾する俺。
用事なんて特に無かった俺は、黄金の『ゲーセン行きたい』発言に何も考えず安易に乗ってしまったが為にこのザマである。
こんな事なら、嘘でも良いから『風邪引いてるんだ』とか言って薬局にでも行けば良かったと思ったのだが…今更遅い。
仕方無しにUFOキャッチャーをプレイするのだが…。

「あーあ、ゆーくんまた取っちゃたね。まだ千円しか使ってないのにぃ…いっけないんだー、悪いんだー」

取り出し口から今しがた取ったぬいぐるみ―口から血を垂れ流し、爪やらなにやらにも血が付着した恐ろしい血みどろクマさん―を引き出して、他のと一緒に器用に抱えながらそんな事を言ってのける黄金。

「…あのさぁ、この状況って一般的には喜んでお礼言って貰える所なはずなのにさ…何故俺は責められ罵られてる訳?」
「………さっ!次はお菓子ねー!」

そんな黄金の笑顔を見つつ、俺は心の中で叫んだ。

『鬼か!?』

…なんて、鬼でした実際。

そうして、店員さんの鋭い視線に晒されながらも大量のお菓子をゲット。
黄金のホクホク顔を横目に見つつ、その手を引いて逃げるようにゲームセンターを後にした…。



「よし、そろそろ頃合いか…」

外に出た俺は、携帯電話にて時間を確認する。
店を出てから一時間は経過していた。

「ゆーくん、どしたの?頃合いって何?」
「いやいや、こっちの話さ…行くぞっ…とぁ!?」

黄金の手を握り直した瞬間、背筋に強烈な寒気が走り、思わず身を震わせる。

「ほぇ?ゆーくん寒いの?」
「あぁ…今とんでもない寒気が…何だか嫌な予感がする」
「アハハ!大丈夫大丈夫!黄金ちゃんがついてるから!」
「はは…尚更不安…」
「え!?なんでさ!?」

そんな会話をしながら『White rabbit』へと戻る俺達。
この時感じた嫌な予感、俺はその正体をすぐに知る事となった…。

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05/18(Fri) 16:57
節制ちゃん

―時は少しだけ戻り、『White rabbit』内の出来事―

「ははっ、一年半位前に君へ告白してからパッタリと来なくなって連絡もないからさ…てっきり嫌われたかと思ったよ」

可笑しそうに笑い混じりで喋る銭に対して、申し訳無さそうに俯く皐月。

「申し訳ありません………あの、告白をして頂いた数日後に赤青が失踪してしまって…すっかりお返事を返しそびれてしまいました…その、告白の、お返事なのですが…」
「決まってるの?」

銭の見透かしたような笑顔に、皐月は少しだけ微笑んで首を横に振った。

「…私も、銀さんの事をお慕いしておりました…だから、とても嬉しかったんです、あの、告白…まるで夢みたいで、すぐにでもお受けしたかった………けど、ふと現実を見てみれば………私は、この通りメイドなんです…仕える主の世話やその他諸々…とても忙しい毎日なんです…息をつく暇もない位に。ですから、銀さんの告白をお受けしたとしても…きっと思い描いた恋人らしい事など何一つ出来ないし…して、あげられません…。そう思うと、どうしても…」

長く心に秘めていた思いの丈を告白し、とても悲しそうな笑みを浮かべる皐月は、テーブルに置かれた自らのティーカップを強く握っている。

「かといって、主人である赤青を捨てる事も出来ない。優しく真面目な君の事だ、そこの所を悩んでいるのだろう?」

銭は、彼女の気持ちを見透かした様に問いかける。
その問いに、困った様な表情を浮かべた皐月。

「…優柔不断な女で、すみません…」
「謝らなくてもいいさ…僕は君のそんな所も含めて惚れたんだ」
「し、銀さん…!?」

それは一瞬の出来事だった。
銭の言葉に驚き、顔を上げた皐月の唇に、身を乗り出した銭の唇がそっと触れる。
彼女は、今の状況を理解して驚き、焦り、どうしたらいいか悩もうとしたが、唇に触れた愛しい人の温もりに、気がついたら目を閉じて受け入れていた…。
誤って倒してしまったカップから飛び出たミルクティーが、自らの服を濡らしてしまっている事など気付かぬ位に…。



短く、しかし、とても長いキスも終わり、銭は名残惜しそうに唇を離す。
それは皐月も同様で、『あっ…』と短く呟いて瞳を潤ませていた。

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