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05/18(Fri) 11:09
節制ちゃん

口で宣った通りに最上級の得意顔を浮かべて、小さな体に似合わぬ重そうな胸を張る。
…相変わらず無駄に大きいな、おい。
と、そうじゃなくて…。

「黄金、いつまで力也の服着てるんだ?…サイズが合わないから、その胸についた二つの塊がシャツからはみ出そうだが…替えの服位あるんだろ?」
「はぇ?」

何とか肩で引っ掛かっていたボロボロのシャツが、彼女の動いた拍子に間抜けな声と共にずり下がる。
俺は一応予測していたので、先にあらぬ方向を見ることで黄金の半裸を見ることはなかった。

「ひゃあ!?ホントだ!?ゆーくん見るな!?って何で見てないんだよ!見ろよ!?」

パニックからなのか、良く解らぬ発言をしながらも手近な毛布で身体を隠す黄金。

「…意味わかんねぇし…アッチ向いててやるから早く着替えろよ」
「うぅー…わかった…で、ゆーくん」
「なんだ?」
「黄金ちゃんの着替えは?」
「無いのかよ!?」
「見るなー!!?」
「へぶほっ!?」

アホな発言をされたものだから思わず黄金の方を見てしまい、顔面にとんでもない速度の白い物体(枕)が飛んできた。
勿論、顔面キャッチです。
お陰で、黄金のあられもない姿を見ずに済んだので良しとしよう。

「ばーか!ばーか!ゆーくんの変態!ばーか!ばーか!」
「…見てないだろ、鼻が痛い」
「何で見てないんだよ!?えと、えぇと…もう一回ばーか!」
「はぁ…」

予想通りというか何と言うか…疲れる。
嫌では無いけどさ…。
それでも、ため息を抑えられない俺。

「うぅー…リッキーのシャツは汗臭いし、何か身体全部痛いし…それもこれも全部ゆーくんのせいだ…」
「…はいはい」
「責任取って黄金ちゃ…」
「やだ」
「えぇぇぇ!?まだ全部言ってないよ!?」
「はぁああ………ちっ、しょうがねぇな、何?」
「何で舌打ちすんのさ!?…ま、いいや…あの、その…黄金ちゃんと」
「やだ」
「最後まで言わせろー!!!」

そんな、枕で顔面を隠す俺と、毛布で身体を隠してプリプリと怒る黄金の漫才の最中。
俺が待ち望んだ助け船が、ようやく部屋にやって来た。

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05/18(Fri) 11:14
節制ちゃん

「失礼します」

静かだが、とても良く通る綺麗な声と共に保健室の扉が開く。
その声に、枕を正面に構えつつ振り向くと、そこに居たのは予想と違わぬ、見覚えのあるメイドさんだった。
少々童顔で、綺麗に整えられた黒髪のボブカットが妙に似合っている。
そんな彼女は、俺の顔を確認するなり無表情のまま言葉を発した。

「我が主が帰ったと、稀ヶ内様より連絡を頂き参った所存です。八尾様、赤青はどちらに?」
「げげぇっ!?その声はさっちゃん!?…こっ、黄金ちゃんはここにはいません!ゆーくんからも言って!」

俺が答えるより早く、自ら声を上げることで存在を示した黄金。
ベッドに潜り込み、毛布で全身を隠しているが…最早無駄である。

「えー…黄金はここにはいません」
「左様ですか」

俺の棒読み復唱に対し返事をしたメイドさんは、室内に残ったままワザとらしく音を立てて扉を閉める。
そして、俺に目配せしてから物音を一切立てずに黄金の立て籠るベッドの横へ。
流石に気が付くと思ったんだけど…そこは黄金である。

「ゆーくん…さっちゃん行った?」

この通り、見事に騙されているから驚きだ。
そんな彼女の言葉に内心大爆笑しつつ、冷静に言葉を返してやる。

「あぁ、もう行ったよ」

その言葉に、固く閉ざされた毛布の中からゆっくりと顔を出す黄金。
当然、横に立つメイドさんと顔を合わせる訳でして…。

「きゃああああ!?ささささ、さっちゃん!?」
「黄金様!!!帰るなら帰ると私に連絡をして頂かないと困りますっ!!!大体、主はいつもいつも面倒ばかり起こして後処理は全部私に押し付けて!!!処理する私の身にもなってください!!!」
「ゆーくんの裏切り者ー!」
「いや、ベッドの横に行ったって意味だったんだけど…」
「なにぃー!?」
「黄金様!聞いてるんですか!?私いい加減キレますよ!?」
「にゃあー!わーっ!きーこーえーなーいーよー!」
「黄金様!!!」
「黄金ちゃん悪くないもん!リッキーとゆーくんが悪いんだもん!」

激昂するメイドさんが余程怖いのか、再び毛布にくるまって叫びまくる黄金。
そんな彼女に呆れたのか、深いため息をついて俺の方に向き直る。
その強い視線に、少々たじろぎながらも言葉を返した。

「…な、何ですか?」
「黄金様の着替えを致しますので…」
「…あぁ、はい。出ていきます」

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05/18(Fri) 14:22
節制ちゃん

「ダメッ!」

と、部屋を出ていこうとした俺に対して大きな声がかかる。
目線を向けると、先程まで布団に潜っていた黄金が身体半分出して叫んだようだ。
心なしか、目が潤んでいるように見える。
俺も黄金も声を発すること無く黙っていると、咳払いを一つしてからメイドさんが口を開いた。

「と、言う訳なので八尾様…椅子に座って反対を向いて頂くだけで結構です」

色々と面倒なので、と言葉を締める。
俺は、仕方無く椅子に座って反対方向を向いた。
すると、着替えが開始されたようで…嫌でも耳に入る衣擦れの音。
それが妙に生々しくて、これがもし蓮香だったら…なんて、あらぬ妄想が広がるのでさぁ大変。
なので、俺は別なことを考えて気を紛らす事にした。

さっちゃんと呼ばれるメイドの彼女、名前は皐月(さつき)と言って、赤青の雇うメイドさん。
実の所、赤青は大金持ちなのだ。
何でも、富豪だった祖父の遺産を丸ごと貰ったとかで、祈常市郊外にある大豪邸を所有する程の富豪っぷり。
しかし、赤青の性格上…家に居ることが少ない上に、マトモに財産管理なんてする訳もなく…邸の管理から何から何までメイドである皐月さんに任せていると言う訳。
その為か、先程の様に主人である赤青に対して結構キツめに当たる事が多い。相当ストレスが溜まってるのだろう。
赤青がまだ在学していた時は、度々学校で力也に説教を垂れていたっけ…。
アイツも、女性関連で苦労してるな…昔は、ヨッシーと二人で指差して笑ってたけど…今となっては、ちょっと共感。あの時は『尻に敷かれて情けない奴だ』とか笑ってごめんな、力也…。
今の俺は、人の事言えそうにない…って、ヨッシーも人の事言えないんじゃね?

「ゆーくん!もーいーよー!」

と、誤魔化し程度に考えていた事も、黄金の明るい声によって終わりを迎える。
振り返って見ると、ピッカピカの新品である事が見て分かる祈常高校女子生徒用制服を着て、子供みたいにポーズを取って立つ黄金と、その横に仏頂面を貼り付けて鞄を持って立つ皐月さんの姿が。

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05/18(Fri) 14:24
節制ちゃん

「はーっはっはっ!見よ、ゆーくん!じょしこーせー黄金ちゃん!JKKだぞ?萌え萌えだぞー?さぁ、萌えろー!きらきらー」

はしゃいだ様子で自らをアピールする黄金を軽く流しつつ、皐月さんに話を振る。

「はいはい、萌え萌えきゅーん、これでいいか?…で、皐月さん。この後の黄金、どうする予定ですか?」
「むぅっ!?ゆーくん、話聞いてないし黄金ちゃんを見てないな!?」
「はい、残り28分程で三時限目の講義が終了致しますので…黄金様には、四時限目の講義から本日のカリキュラムに参加して頂く予定です。その後、屋上にて開かれる一流シェフを招いた昼食会に参加、午後のカリキュラムに備えて英気を養って頂く、と」
「こら!さっちゃん、邪魔すんな!…ゆーくん、見よー!この完全なる至高の至宝、じょしこーせー黄金ちゃんをー!きらきらりーん」
「へぇ、そうなんですか。で、その後は?」
「はい、そのまま予定の通りカリキュラムをこなして頂きます」
「ねぇー、JKKだよ?JKK」
「JKK(常識的に考えて空気読めや)。その後、放課後になりましたら」
「J!K!K!」
「おっしゃる通り、JKK(常識的に考えて帰宅)でございます。以上、本日の予定でございますが…何かご質問は?」
「じぇ、JKK…ぐすっ」
「JKK(十分に確認出来たので皆無)なんで、そろそろJKK(冗談で黄金をからかうの)やめません?」
「JKK(冗談抜きに黄金様が悲しんでおられる)みたいなので、そうしましょう」
「ぐすっ…ぐすっ」
「お似合いですよ黄金様」

すっかり落ち込んで泣いていた黄金は、不意に出た皐月さんの優しげな声に顔を上げた。

「…ふぇ?」
「あぁ、皐月さんの言う通り…JKK(女子高生黄金)はJKK(冗談抜きでかなり可愛い)」

そう言うと、先程まで泣いていた彼女は一転。
満面の笑みを浮かべて、座る俺に飛び付いた。

「ゆーくぅうううんっ!」

そんな彼女の頭を苦笑しながらも優しく撫でて、皐月さんに顔を向ける。
すると彼女は、ほんの少し、本当に少しだけ…微笑んでいた。

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05/18(Fri) 14:27
節制ちゃん

その後、黄金(と、常に付き添う皐月さん)との久しぶりの学校生活を送る事となった。
最初こそクラスの皆も、俺と繰り広げた死合や、過去に広まった噂のイメージのせいで距離を計りかねていたみたいだが…黄金の持つ天真爛漫さに引き付けられた様で、すぐに打ち解けてくれた。
稀ヶ内が気を効かせて開いてくれた、黄金歓迎レクリエーションのお陰もあるだろう。
ヨッシーの奴は本当に相変わらずで、久しぶりとは思えぬ自然な態度で黄金と接して、クラスの連中と黄金の溝を埋めるのに一役買った。奴の社交性の高さには度々驚かされる。
しかし、その過程で開かれた我がクラスの恒例行事『教室内無差別級タイトルマッチ』にて、黄金に文字通りボコボコにされてクラス中の笑い者になっていたが…まぁ、本人も笑っていたので大丈夫だろう…多分。
そんな中でも、俺は相変わらず一歩引いた所でその光景を眺める事に終始していた訳で…特に役には立たなかった。
まぁ…休み時間、暇人どもに質問攻め等で揉みくちゃにされて疲れていた彼女を、円の中から連れ出して屋上に避難させた位はしてやったけど…まぁ、大したことじゃないだろう。
屋上のベンチで、黄金がすごく嬉しそうに俺の肩へもたれかかってきたが………まぁ、他の人にはどうでもいい話だな。



「それじゃあ、ゆーくん!ヨッシー!まったなぁー!」



放課後、学校前で異常な程黒光りするあからさまな高級車に乗った黄金は窓を開けて、こちらに笑顔を振り撒きながら手を振って去っていく。
俺達は、それを各々の反応―俺は軽く片手を上げ、ヨッシーは両手を大きく振って―で見送る。
見えなくなるまで送ると、ヨッシーは不意に笑いだした。

「…にゃはは!」
「…どうした?」
「いやー、嬉しくってな」

そう言って、大きく伸びをするヨッシーは笑って言葉を続ける。

「久しぶりに三人揃ったからさ!」
「あぁ、成る程…俺としては、騒がしいのが増えて大迷惑だけどな」
「にゃははは!そんな事言って、本当は嬉しいんだろ?ん?…八尾っち、信号機と仲良かったからなー色々な意味で」

覗き込んでくるニヤニヤ顔。
とりあえず腹が立ったので頭突きを一発お見舞いした。
しかし、頭突きというのは諸刃の剣である訳で…当然、痛み分けとなる。

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