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05/18(Fri) 10:58
節制ちゃん

先に動いたのは赤青だった。
その豪腕を振るい、縁の身体を破壊しにかかる。
しかし、身体を後ろに反らすことでそれをあっさりと避けた縁は、自らの『武器』で赤青の身体を切り裂く。

「っ!?」
「…浅かった、か。顔を削ぎ落とすつもりだったんだがな…」

正拳に合わせてバック転からのサマーソルト。
赤青の肌着は切り裂かれ、まるで刃物でつけられたような赤い線の傷がついていた。

そう、縁の『武器』は脚である。

「…へっ、腕は鈍っちゃいねぇようだな…八尾。てっきり腑抜けたかと思っていたぜ」
「…お喋りとは、随分と余裕だな赤青。この一年ちょっとで身に付けたのは話術だけか?」
「はっ!言うじゃねぇか!なら、手加減はしねぇぞコラァ!!!」
「…初めからそうしろ」

再び縁に向かって行く赤青。
しかし、そんな彼の攻撃はまたしても防がれる。
縁が、足元の土を蹴り上げて赤青の目を潰しにかかったからだ。
一瞬だけ目標を見失った打撃は空を切り、代わりにその身を切り裂かれる。
打撃のかわしざまに放たれた腹部への一撃でだ。
視界を取り戻した赤青は、腹部からの出血量に思わず笑みを溢した。

『これだ、この感じだ!…俺が求めていた相手!』


祈常を去ってから今まで、赤青は世界を巡り修業に明け暮れていた。
自らを高め、粛清された恨みを晴らすために。
しかし、修行を積み重ねる内に、彼は物足りなさを覚えていく。
肉体強化のトレーニングをしても、旅先で会った格闘家と対決しても、果ては動物相手に戦いを挑んでも…彼の心が満ち足りる事はなかったのだ。

何故なら、彼の心には何時も『ある男』がいたから。
かつて心を許し、共に戦い、そして笑った『友』の姿が。
自分が本当に『死合』たい奴の存在が。

それに気がついた時、赤青は修業の旅をやめて祈常に戻る事を決意した。
蟠りを残したまま決別してしまった『友』の所へと………。



「…逆十字だ。『鬼』のお前には、こっちの方が似合いだろ?」
「フフ…ハハハッ!面白ェ事を言うじゃねぇか、えぇ!?もう勝ったつもりか!?」
「いや。お前が『負け』を認めるか、『死ぬ』か…どちらかを満たすまでが勝負だ。だから、この死合はまだ続く」
「ハハハハハッ!流石だ『狐』ぇ!話がわかるじゃねぇか!なら、まだまだ行くぜオラァ!!!」

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05/18(Fri) 11:00
節制ちゃん

会話を終えると、再々度の激突。
お互いの武器である拳が、脚が、激しくぶつかり合い血飛沫を散らす。
二人は、そんな激しい戦いの最中にも関わらず、大声で会話をしていた。

「八尾ぉ!テメェ何故、あの時助けに来なかったぁ!?」

叫び、赤青が拳を振るう。
それが縁の胸を擦り、傷を作った。

「行くわけねぇだろ!バカかお前は!?俺は散々反対してただろ!暴動起こすなんてバカな真似はよ!」

赤青が繰り出す怒濤のコンビネーションを皮一枚で避けて、鞭のようにしなる脚で赤青を攻める。
時に胴を、足を、確実に捉えていく。

「テメェや根子月に裏切られたせいで俺は稀ヶ内に負けたんだぞ!?しかも、旅へ出る前に出した果たし状まで無視しやがって!!お陰で俺はこの一年半、満ち足りねぇ生活を送る羽目になった!!責任取れやコラッ!!!」

蹴りを受けても尚、勢いを増す連撃を放つ赤青。

「はぁ!?知るかそんなもん!この大馬鹿野郎!!第一、一番悪いのはテメェだろう…がっ!?」

連撃を紙一重で避けてはいたが、それに集中し過ぎたのか…先程の稀ヶ内戦で出来たクレーターに追い込まれていたのに気が付かなかった縁は、足を取られた様でバランスを崩す。そこにすかさず赤青の拳が飛んだ!!!



「俺の勝ちだ八尾ぉおお!!!」



攻撃が身体を捉え、勝負は決した!










「がっ…はっ…!?」

重い息を吐き出し、ゆっくりと膝をつく赤青。
最後まで立っていたのは縁だった。

バランスを崩した様に見せかけて赤青の攻撃を誘い、放たれた拳をギリギリの所でいなしながら懐に飛び込み、全ての力を込めて顎に拳を叩き込んだのだ。
赤青自身の勢い、それに合わせて縁の全力で振るった拳の勢いが合わさって…『鬼』を仕留めるトドメの一撃となった訳だ。

「…どうする、赤青。まだ、やるか?」

膝をついた赤青に対し、鋭く冷たい瞳と声を向ける縁。
しかし、その息は荒く、言葉も途切れ途切れ発している。
それに対し赤青も、先程の攻撃で脳震盪が起き、意識がはっきりしないのであろう…やっとの思いで声で返した。

「…俺の…『負け』だ…ハハッ」

赤青はもう一度大きな声で、それを宣言した。
とても嬉しそうに。

「俺の『負け』だぁあああ!!!アハハハハハハハハハッ!!!」

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05/18(Fri) 11:02
節制ちゃん

「ふふふっ…バーカ、負けて喜んでるんじゃねぇよ気持ち悪ぃ…立てるか?」

何故か嬉しそうに笑う赤青へ、同様に笑って手を差し伸べる縁。
その手を取り立ち上がった赤青は、直ぐ様縁にボディブローを食らわせた。

「痛ぇじゃねぇか、この野郎がっ!」
「…っう!それはコッチの台詞だっ…!」

それを受けた縁は、苦笑混じりの顔面パンチで返す。

「…っう!フハハハハッ!いってぇ!?」
「顔面に拳貰って笑ってんじゃねぇよ、ホントに気持ち悪ぃなお前は…よく帰ったな、力也」
「おぅ、ただいま帰って来てやったぜ…縁」

言葉が終わった瞬間、校庭全体に響く程の笑い声を上げる二人。
そして、一頻り笑うと…二人同時にパタリと倒れてしまった。

「おわっ!大変だ!?ハゲ、保険医のねーちゃん呼んで!」
「…ったく、やれやれ…手間のかかる生徒を持ったものだな、私も」

それを見た根子月は、慌てた様子で二人に駆け寄り、救援を呼ぶよう頼まれた稀ヶ内は、ため息をついてから少しだけ微笑んで、校門前で気絶していた教師達を引き連れて校舎に入っていった…。










「…痛くない?」
「…まぁ、痛いといえば痛いですけど…別に我慢出来ないほどでもないです」
「…そう」

無口で有名な保険医のお姉さんに、先程の死合いで負った傷の治療をしてもらっている俺。
意識を失って、次に目を開けた時には保健室にいた。
話によると…気絶した俺と赤青を、ヨッシーが一人で運んでくれたとか。
今は授業に戻った、というか、稀ヶ内に強制的に戻されたのであろうせいでこの場に居ない彼に、心の中で礼を言う。
後、赤青にやられた教諭達も大した怪我はしていないみたいで、今回の件は大事にはならかった様だ。
校門の件は…ま、赤青だし…大丈夫だろ。

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05/18(Fri) 11:03
節制ちゃん

「…終わり」

そう呟いて、ポンと背中を叩く保険医のお姉さん。
俺の胸についた傷の包帯を巻き終わったようだ。
俺は、何度か腕を動かして調子を確認してから、死合のせいですっかりボロボロになった制服の上着を着る。
…新しいのを注文しなきゃな…。
そう考えて、俺は横にあるベッド、正確にはその上で寝ている奴に目を向けた。

「…全く…ちゃんと弁償して貰うからな?」

俺は、帰ってこないのを承知で声をかける。
やはりといった所、返事は寝息で返ってきた。

「…ふぅ、とりあえず一段落…か?………あぁ、授業」

立ち上がろうとしたら、肩を押されて椅子と再び仲良しになってしまう。

「…ダメ。とりあえず、あの子が目覚めるまで八尾君は待機…」
「え?…いや、でも単位が」
「稀ヶ内先生の指示…」
『あンのハゲ!………はぁー、まぁ良いや…赤青のお守りは馴れてるし…つってもなぁ…一年半も離れてたから対応に困るところだ…あの頃と今とじゃ、俺の事情も異なる訳でぇ…でも、赤青だし…大丈夫かな…?』

心の中で色々と葛藤していたら突然、保険医のお姉さんが思い立ったように部屋を出ていこうとしたので呼び止める。

「…何処へ?」
「…タバコ吸ってくる」
「あぁ、左様で。行ってらっしゃいませ」
「八尾君………」

扉を開けた所で止まって、俺を呼んできたので一応返事をする。

「何ですか?」
「………君は、独り言が多いんだね………」

そう言い残して、彼女は素早く部屋を出て扉を閉めた。

『…口に出てたか』

保険医のお姉さんに突っ込まれたせいで、俺は少し恥ずかしい思いをしながらも思案を打ち切った。
赤青の事は仕方無いと割り切って、俺は深い深ーいため息をつく。
このため息は、後に起こるであろう事態を予測して出たものだ。
まるでそれを見計らった様に起き上がる赤青。

「うぅー………ここは?」

寝惚けているのか、自らの状況を把握出来ていない様で、キョロキョロと周囲を確認している。
そんな赤青に、俺は苦笑混じりに声をかけた。

「あー…お、おはよう…力也」
「う…?…『力也』…?」
「あっ、と…しまった…」

俺は、首を傾げる『赤青』に向かってもう一度。
咳払いをしてから『名前』を呼んだ。

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05/18(Fri) 11:05
節制ちゃん

「おはよう、『黄金(こがね)』」

そう、彼女の名を呼ぶと、寝惚けた表情から一転。
嬉しそうに笑って返事をした。

「あぁー!ゆーくんだ!おっはー」
「うん、で、黄金。早速だけど今の状況は分かるか?」
「ぜーんぜん。あははっ!」
「左様で………なら何処から説明すりゃいいかな………最後の記憶は?」
「うーむ…わかんね!ちーと待ってーな、寝腐ってる『リッキー』叩き起こして聴いてみるふぃーゆー」

会話を区切った黄金は、目を瞑ってパタリと倒れ込むように再び横になる。

『中に居る力也と会話する為に』

そう、『赤青』は二重人格なのだ。
俺と死合した暴力的な巨漢の『力也』。
そして、今しがた出てきた『黄金』は、無邪気で少々幼稚な所がある小柄な女の子。
赤青は、この二人の精神で構成されている。
どちらが主人格という事はなく、両方とも独立しており、二人の人間が一つの肉体を共有している感じ。
そのせいか知らぬが、人格変化と共に肉体まで合わせて変化してしまうという…驚くべき特異体質なのである。
その理由というのが、嘘か真か…赤青が『鬼』一族の末裔だからだそうだ。
その家計では本来、鬼が持つ怪力だけを受け継ぐのだが…極稀に変化能力まで受け継ぐ場合があるとか。
その場合、男女両方の人格特性を保有して生まれる為か、結果として自分のように特異な二重人格になってしまう…と、過去に力也から聴いたことがある。
あの当時は、こういう奴なんだ、と…別に深く考えずに納得していたが…今思えば、スゴい事なんじゃないかって思える。
だって、鬼だよ鬼!
妖怪といったら狐!鬼!天狗!…その鬼だよ?スゴくない?
実際、(元)九尾狐を嫁に貰っている俺としては他人の様な気がしない…いや、他人なんだけどさ。
因みに、力也か黄金どちらが表に出てくるかは、朝起きた段階で決めるらしい。早起きした方が表に出る権利を得るとか。
最も、大抵の場合は黄金が表に出てくるのだが。
その理由は………。


「…よっしゃー、黄金ちゃん復活!黄金ちゃん復活!黄金ちゃん復活!」

会話が終わったのか、横になった黄金が元気良く手をあげて起き上がった。

「わかったから…で、どうだった?」
「えへー、ボコボコにして白状させたのだー!どやっ?」

これである。
力也は黄金に頭が上がらないらしい。

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