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05/18(Fri) 10:33
節制ちゃん

「そういや、今日の一時限目ってなんだっけ?」
「ヨッシー…何故覚えていない。今日は数学から…」

そんなこんなでホームルームが終わり、一時限目の準備中。
ヨッシーの奴がいつも通りアホな事を宣ったので、それを丁寧に拾って言葉を返してやろうとした時…教室の扉が開く。
まだ時間より早いので何事かと思いそちらを見ると、入って来たのは現代国語の教諭『稀ヶ内 光(けがない ひかり)』であった。

「あれ、八尾っち。ハゲが入って来たぞ?なんで?」
「…さぁね…そこら辺は『毛が無い』先生が説明してくれるだろ」
「くはは、確かに」

声を潜めて会話していると、教壇に上がった稀ヶ内が咳払いを一つして教室内の生徒達に一通り目を向けてから、とても響く低い声で説明を開始する。

「えー、不思議に思っているだろうから説明する。実は、数学の『間(はざま)』先生が風邪を拗らせて入院してしまった。なので、しばらくの間は私を含む数名の先生で交代して数学の授業を受け持つことになったからそのつもりで」

言い終えた稀ヶ内は、授業用のプリントを配り始めた。
それを見計らい、俺達は筆談を開始する。

「珍しいなー、間ちゃんが休むなんて」
「そうだな。人一倍健康に気を遣ってる先生が風邪を拗らせるとは…」

数学の間先生。
教員仲間はおろか、全校生徒の殆どが知っているほどの自他共に認める健康マニア。
授業そっちのけで繰り出す健康トークは勿論、暇さえあれば校庭を走ったり、空き教室に作った『間のトレーニングジム』なる所で運動に勤しむ様な超人。
おまけにかなりの美人なので男子生徒からはモテモテ、若くてフランクな性格なので女子生徒からも人気があるという、色々な意味で有名人。
祈常高校の名物教師の一人である。
因みに、彼氏はいないとか。

「夏だし、遠泳でもやったのかねぇ?」
「有り得る。しかしあの先生の事だ…海へ婚活に行った線も考えられる」
「ふは!間ちゃんならやりそう!あの人いっつも『彼氏欲しいなー』とか嘆いてるし」
「美人だし出来そうなもんだけど…そう上手くいかないんだろうね」
「あぁ、間ちゃんのタフさに見合う男なんてそうはいないだろうからな」

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05/18(Fri) 10:35
節制ちゃん

「…八尾に根子月、お前らプリントちゃんとやれ」

ヨッシーが筆談用ノートに書き込もうとした時に、それを引ったくり大きくて見やすい文字で書き込まれた文章を見せつける稀ヶ内。
俺とヨッシーは、それに『イェス、サー』と答えるのであった。
…勿論、筆談で。

…と、言うわけで…仕方無くプリントをやってみたのだが…。

「…終わった、暇すぎる」
「奇遇だな八尾っち、俺も分からな過ぎて終わった」
「…そうか」

案の定、俺もヨッシーも五分足らずでプリントを終わらせて暇を持て余している。
筆談もそこそこに、俺は窓の外、ヨッシーは携帯ゲーム機のディスプレイを眺めていた。

「しかしまぁ、今日は珍しい日だな」

不意に、ヨッシーが呟く。
言うまでもなく筆談である。

「何が?」
「いや、今日は珍しい事ばかり起こってるだろ?八尾っちが遅刻しそうで、俺が一番乗り。健康マニアの間ちゃんが病欠。その上、珍しく八尾っちが怒られた。しかも筆談で」
「言われてみれば…そうだな」

確かに、今日は珍しい事が起きている。
それも連続して…。
これは、もしかしたら………。

「これは何かの前触れ…かもな!」

そう、思っている事をヨッシーに代弁された。
たまに思うんだが…こいつ、本当はものすごく頭が良くて、何もかも知っているんじゃないか?アホなフリをしているだけで…。

「そうかもな…」
「おぉ!?八尾っち!?もう一つ珍しい事が!」
「なんだよ?」
「今、俺がやってるエロゲ…猫耳がいない!」

ダメだコイツ…前言は撤回しよう。
やっぱりアホだ、大アホだ。
一瞬でも美化した俺が馬鹿だったよ。
その思いをありったけ込めて文字を書く。

「いや、死ねよお前」
「えっ!?ちょ!?八尾っち!?俺何かし…たぐほぁっ!」

それを見て立ち上がり、明らかに狼狽したヨッシーが叫び散らす。
それを稀ヶ内が見逃すはずもなく、彼はチョークを放つ。
それは、立っている騒音の元凶目掛けて飛んでいき、気が付き顔を向けたヨッシーだったが…時既に遅し。
チョークは彼の眉間を直撃した。
声を上げて後ろに吹き飛ぶヨッシーを見て、稀ヶ内が『授業中に叫ぶな』と声を上げた事で、寸劇は幕を降ろす。



しかし…それは真の物語への序章に過ぎなかったのだ…。

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05/18(Fri) 10:38
節制ちゃん

「いやぁ…痛かったわー」
「随分とお早い復活だな、ヨッシー」

一時限目が終了すると同時に起き上がり、大して痛くもなさそうな明るい声を発しながら席につくヨッシー。

「おう!復活の早さには自信があるからな!」
「左様で」
「そういやハゲは?次もハゲの授業じゃなかった?」

そう言って教室内に居ない稀ヶ内を探すように見回す。

「お前…何故に稀ヶ内の現国は覚えている」
「え?」
「…もういい。稀ヶ内はいつも通りのティータイムだ」
「あぁ、そういやそうか…あのハゲ、一時限目終わると必ずお茶飲みに行くもんなー」

現国教師の稀ヶ内 光。
通称、ハゲ。
それ以外にも、緑茶マニア、筋肉オヤジ、完璧超人チョークマン…等々。
その通称の多さは学校内随一である。
それらが示す通り、彼の実力は相当高い。
全ての科目を受け持てる程の豊富な経験と知識。
齢50とは思えぬ高すぎる身体能力。
毛髪こそ犠牲になっているようだが、それを差し引いても実力、ネタ、双方共に学校随一を誇る…名実共に祈常高校一番の名物教師である。
余談ではあるが、祈常の悪魔在学時…俗に言う『祈常の悪夢』時代を乗り切った数少ない猛者である事も忘れてはならない…。

「そういや八尾っち、聴けよー」
「やだ」
「酷ッ!?まだ内容も言ってないんだけど!?」
「…しかたないなぁ…なんだよ」
「あのな、さっきハゲにやられて気絶していた時に夢を見たんだよ」

こりゃ珍しい…いつもは何をされてもピンピンしてるヨッシーが気絶とは。
本当にこれは、何かの前触れかも知れない…。
そう思いながらも、話に耳を傾ける。

「あのな、『信号機』の夢を見たんだよ」
「信号機?」

信号機って…赤と青のアレか?…あ、黄色も忘れちゃいけない。
大事だよ、黄色。

「そう、その『信号機』だ。俺、夢の中でも学校に居てさ…イキナリ殴りかかってきたんだよー」
「…信号機が?」
「うん」

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05/18(Fri) 10:40
節制ちゃん

とりあえず俺は、身を乗り出して隣に座るヨッシーの頭をノックしてみた。


コンコン。


うん、入ってない。



「?………イキナリ何すんだよ、八尾っち」
「いやぁ…だってさ、大丈夫かどうか心配になるじゃん、友人として」

手と足の生えた信号機に殴りかかられる様な夢を見る脳が。
でも、大丈夫。
元から無いなら悪くなりようが無いし。
そんな俺の心配を知らぬヨッシーは、不思議そうな顔をして喋る。

「え、と………何が?」
「あぁ、すまん。大丈夫だったよ、続けてくれ根子月君」
「変な八尾っち…まぁ、いいや。それでだな、俺は『信号機』に殴り飛ばされた事によってテンション上がっちまってさー!そっからはお互い殴り合い!」

俺は、その言葉につい想像してしまう訳だ。
真剣な顔で手足付き信号機と殴り合うヨッシーの姿を。

「で、最終的には戦い疲れて共倒れ。床に大の字に寝そべってさー…友情を語り合った訳よ!」
「…ぷっ」
「八尾っち?」
「あははははははっ!ヨッシー…くくっ…なんだよ、それ…あははは!」

爆笑。
耐えていた分、出てきた笑い声も相当だったらしく、周囲の生徒からの視線が俺に集中するが…そんなの知ったこっちゃないとばかりに俺は笑い続けた。

「あははは!ダメだっ!?止まらね…あははははははっ!」
「八尾が爆笑…!?」
「め…珍しい…」
「世界が滅びる前触れか…?」

周囲からの失礼な言葉が飛んでくるが、俺の笑いは止まらない。
頭の中で、信号機とヨッシーが肩を組んで夕日を見ながら友情を語り合うシーンが出てきたもので、それこそ大パニック。
完全に妄想が独り歩きしている。

「はい、そろそろチャイムが鳴るから席に…どうした?」
「ハゲ!大変だ!八尾っちが壊れた!」
「あははは!信号がっ…信号がー!?」

二時限目が始まる少し前に入ってきた稀ヶ内。
ヨッシーは助けを求めて、笑い続ける俺を彼に突き出す。
そして、稀ヶ内の手刀が俺の脳天を捉えた事により、事態は収拾したのだった………。

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05/18(Fri) 10:42
節制ちゃん

「…痛ッー…頭が痛い」
「そりゃ、あのハゲの手刀食らったからなー」

正気を取り戻した俺は、ヨッシーと絶賛筆談中。
二時限目が始まったからである。

「実に久しぶりに…毛が無い野郎から打撃を貰った…」
「にゃはは、八尾っちは真面目だからなー。殴られる方が珍しい」
「畜生…ヨッシーが信号機の話なんかするから…」

俺は、先程頭に浮かんだ手足付き信号機を思い出して、再び笑いそうになるのを堪えてノートを渡す。

「悪い悪い。確かに『信号機』がいた頃は、八尾っちもとばっちり食らって殴られたりしてたっけ…。てゆうか、さっきの夢にそんな面白い部分あった?」
「面白いってゆうか、何か滑稽。手足が付いた信号機と殴り合って友情目覚めるとか…」
「いや、八尾っち。『信号機』に手足が付いてるのは当たり前だろ?」
「いや、ヨッシー。お前、病院行けよ。手足が付いた信号機をデフォルトだと思っているなら、お前は間違いなくオカシイ」

それからしばしの間を置いて、ヨッシーが返事を寄越してきた。

「八尾っち、気のせいかもしれないけど…何か勘違いしてない?」

俺は、その文章を見た途端、腹の底で何かが蠢くような感覚に襲われる。

『何か、とてつもなく嫌なものが…ゆっくり、しかし確実に上へ上へと上がってくる感じ』

俺の脳は、間違いなく正体を理解できるし、しているのだろう。
しかし、理解した瞬間に俺の心は確実に後悔する。
そう確信が持てるコレを、俺は無理に引っ込めて忘れようとする。
しかし…。

「稀ヶ内先生!大変ですっ!」

叫び声と共に勢い良く開いた引戸。
その方へ、教室中の視線が集中する。
そこに居たのは、息を切らせた様子の教諭が一人。
彼は誰だったか…それは今、どうでもいいことである。

「どうしたんですか、何か問題でも?」

その様子とは対照的に、冷静そのもので対応する稀ヶ内。
それに対し、教諭は尚も慌てた様子で叫んだ。



「鬼が…『祈常の鬼』が帰ってきましたっ!!!」



現実とは、時に非情である。
その叫びによって、俺の押し込めたモノが一気に吹き出した。

『信号機』、そして『祈常の鬼』と呼ばれる人物…。

かつて友人であった…アイツの存在が…。

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