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02/17(Fri) 09:55
節制ちゃん

「………そうなんですかー、茨子ちゃんの」
「うん!こっち来て初めて出来たトモダチなんだ!」
「…ふっ、戦友と書いて…“トモダチ”と読む…」

集まった華の乙女三人は、繁華街を歩きながら会話に華を咲かせていた。

「所で…茨子ちゃん、これからどこ行く予定なの?」
「らぶりーん?女の子三人も集まってすることなんて女子会に決まってんじゃん!皆でパァーッとやろうと思ってた訳さっ!こーんこんこんっ!」

その言葉に、愛も手を合わせて喜びに声を高くする。

「わぁー!いいねいいねー!…で、結局何処に行くの?」
「………あ」

愛の二回目の質問で、ピタリと足を止めた茨子。
その顔は笑顔のまま固まっている。

「もしかして…考えて、無かった?」
「…うん…マジごめん…」

言葉と共に項垂れる二人。
しかし、そんな彼女らを見て良は言う。

「…ふふふ、そんな事だろうと思ってな…手は打ってある」
「きゃー!流石は姉御!好きだー!」
「…むぐっ…褒めるな…照れる…それに、抱きつくな…胸で…息が………苦しい」

ニヤリと浮かべた妖しげな笑みも、茨子の豊満な胸に埋もれたせいで誰にも見られる事は無かった。




一同は、良に連れられるまま辿り着いた居酒屋『たぬき屋』に入る。
元気の良い挨拶が三人を迎えた。

「おぉー、店員さん気合い入ってるねぇ」
「あぁ…ここは、安くて美味くて店員の教育も行き届いている…おねーさんイチオシの優良店だ…」

店員の一人が個室に案内してくれたので、三人は各々席に付く。

「お姉さん方、ご注文は?」

店員の声に、メニューをサッと確認した三人。
茨子は黒ビール、良は日本酒、愛は少し迷ってカシスオレンジを頼み、つまみは後から決めようと言うことで満場一致。
店員が笑顔を残していなくなると、女子達の正直過ぎる感想が飛び交う。

「うわぁー…見た!?イケメンだったねぇー…今の店員!」
「ふむ…黒狐はあの手のタイプが好みなのか…手広いな」
「どちらかと言うと、ワイルド系な男性ですもんねー…ボクとしては、もっと小綺麗な方がタイプかもです」
「………同感」
「えぇー!?なんでアタイだけアウェイな感じなの!?酷くない!?」

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02/17(Fri) 09:58
節制ちゃん

女子達の会話が丁度一区切りついた所で、頼んでいたお酒が運ばれてきた。
今度は別の店員だ。
先程とは正反対の色白で細見、爽やかな笑顔が印象的な青年である。

「ご注文の黒ビール、日本酒、カシスオレンジです!追加注文の際は、テーブル端の呼び出しボタンをご利用ください!それでは、失礼しまーす!」

これまた爽やかに、一礼して去っていく店員。
感想再び、である。

「ボクとしては、今みたいなのが好みです」
「えぇえ、マジ!?嘘だー!?…らぶりん、趣味疑うわぁー…耐久力無さそうだし、チャラそうじゃん。色々な意味で一発で終わりそう」
「ふぇえ!?そ、そんなことないよー!?ねっ、良さん!」
「ふぅむ…どうやら我々は男の趣味が合わなそうだな…今の、おねーさん的にはアウトだよ…」

そんなことより、と良は一区切り入れて続ける。

「一先ず、乾杯といこうじゃないか」

彼女が日本酒の入ったグラスを掲げたことで、二人もそれに倣う。

『かんぱーい!』と元気良い声が二つ、『…かんぱい』と静かな声が一つ…そして、グラスの当たる音が部屋中に響く。

三人は、一斉に持っているグラスを傾けた。

「ぷっ…はぁー!酒うめぇええ!!!」
「うん、美味し!…って、茨子ちゃん早ッ!?もう飲んだの!?」
「うん?こんなもん飲んだうちに入らないってー!ささ、じゃんじゃん頼もー!酒、酒ぇー!」
「…まぁ、慌てるな黒狐。食べる物が決まっていない…」

そう言って、もう一瓶空けかけている良が、テーブルの上にメニューを開いて置く。

「良さん、何が美味しいですかね?」
「…おねーさんは、ここの握りが美味いと思うぞ?…まぁ、大体味は良いから何を頼んでも外れはないはずだ…」
「なら、アタイは鳥モモの唐揚げとポテトー!」
「ボクは季節のサラダで」
「ふむ…なら、わたしは握りを頼もう」

ボタンを押すと、店内にチャイムが鳴り響く。
店員は待つことなく現れた。

「はい!ご注文承ります!」

良は、先程のメニュー、黒ビールと日本酒の追加をスラスラと頼む。
店員は、注文に間違いがないか確認すると素早く立ち去った。

「おぉ、姉御アナウンサーみたい。あんな風に喋れるんだね」
「わたしを何だと思ってる…本気を出せばアレくらい…」
「本気を出さなきゃダメなんだ…」
「まぁ…基本的に喋るの苦手だしね…息がもたん…」

そう言って、残った日本酒を一気に流し込んだ。

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02/17(Fri) 10:02
節制ちゃん

「…と、話は変わるが…今の女の子は可愛かったな」
「あー、確かに。声も綺麗でしたし」
「居酒屋の子って、結構レベル高いよねぇー!」

一同、うんうんと頷き合っていると、注文していたメニューが運ばれてきた。

「酒とイケメンキター!」

茨子は、先程来たワイルド系なイケメンから黒ビールを受け取ってご満悦である。
しかし、唐揚げとポテトがまだ時間が掛かると言われて項垂れた。
店員が去った後…。

「うぅ…畜生…使えねぇ…何故にアタイの分だけぇー」
「…仕方無かろう、時間がかかる揚げ物を二種類も頼んだ黒狐が悪い…」

そう言って、良はサーモンの握りを口に運んだ。
いつもは無表情な顔も、少しだけ緩んでいる。

「いいもん…アタイはイケメンから黒ビール貰ったもん…ぐすっ」
「茨子ちゃん、サラダ分けてあげるから泣かないでー」

愛が茨子の頭を撫でて宥めていると唐揚げとポテトが運ばれてきて、茨子の機嫌は元に戻ったのであった。

「酒!唐揚げ!酒!ポテト!酒、酒、酒!ひゃっはー!天国だぜー!もっと酒だー!酒もってこぉーい!」
「わわわわっ!?茨子ちゃん、落ち着いてぇ!飛ばしすぎだよ!?」
「ふふっ…愚かな…ペース配分も出来ぬとは、一番最初に潰れるタイプだな黒狐よ…」
「にゃ、にゃにおう!?このめろー!そんな事言うにゃら勝負だ、姉御ぉ!!!」

茨子は覚束ない足取りで立ち上がり、良に対し指を指して宣戦布告。
それを受けた彼女は、通常の人間が見たのならまず間違いなく背筋が凍り付く笑みを顔に貼り付けて応じた。

「ほぅ…黒狐…そんな状態でこのわたし…祈常の悪魔に勝負を挑むと言うか?…ふふふ、ふははっ!面白い…受けて立とうじゃないか小娘が…!」
「こーんこんこんっ!それはこちらにょ台詞らよ!八尾黒狐の本当の力を目の前にしてぇ…恐れ戦くが良いわっ!狸ぃ!貴様も道連れだぁー!!!」
「そっ、そんなぁー!?HELP!HELP MEEEEEE!」



―こうして、日が暮れ、夜が更けていった………―

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02/17(Fri) 10:04
節制ちゃん

「も…もう…飲めない…うぷ…」
「茨子ちゃん、しっかりー…」
「ふふふ…言わんこっちゃ無い…祈常の悪魔に…喧嘩を売るから…こういうことに…けふっ…」
「…ったく、何言ってるんだよ!姉さんもコッコちゃんと大差無いじゃないか!…まったく、身体悪くしたんだから酒は控えろって医者に言われただろ?」
「むぅ…好男の癖に生意気…けふっ」



結局、勝負は引き分けに終わった。
飲み過ぎて動けなくなった二人を運ぶために、良の携帯を借りた愛が良の弟、根子月 好男を呼んだという訳。

「いやー、愛さん。ウチの姉がご迷惑をおかけしました」
「いえ、ボクは別に迷惑なんて!」

首を横に二、三度振って愛は笑う。

「二人の元気、貰っちゃいましたし」
「そうですか。よく分からないけど、良かったですね!」

そんな愛を見て、好男は人好きのする笑顔を浮かべた。

「それでは、ボクはここで!」
「ん?夜も遅いし、家まで送りますよ?」

駅の前、愛は足を止めて言った。
好男の言葉に、一度だけ首を振ってから近くのビルを指さして…。

「あそこのホテルに部屋を取ってあるので」

その言葉に、好男は納得したように声を上げた。

「成る程、それじゃ…お気をつけて!」
「えぇ、好男さんこそ」
「…らぶりーん…ばいばーい…うぇっ」
「狸ー…今度は家でゆっくり飲も…うぷっ…」
「ちょ!?二人共、頼むから俺に吐くなよ!?」

その後、『絶対吐くなよ!?』と連呼する好男と、担がれ支えられる二人が完全に見えなくなるまで見届けた。
そうして誰もいなくなると、愛は深いため息をついた。

「ふぅ」

そして、懐から取り出した携帯で電話をかける。

「…あぁ、私だ…どうやら噂に間違いは無い…。現在、九狐 蓮香、茨子の両名は祈常市にいる…この目で確認したのだ、間違いはない。あぁ…暗殺こそ失敗したが、旦那の方に毒を持った…しばらくは狐の里に戻れぬだろ…。…茨子?…問題ない、奴は既に腑抜けだ…。うむ…そういう訳だ…長に伝えろ。娘が、狸田 嘘(らい)が里に戻ると…」

通話を終えた嘘は、髪を縛っていた赤色のリボンを乱暴に解く。
長く茶色い髪の毛が風に靡き、闇のような黒へと一瞬で色を変えた。

「くくっ…はははっ…あははははは!これだから化かすのはやめられない!…くくっ、嘘はなんて甘いんだろう…あぁ、愉快愉快…」

微笑む彼女は消えて行く…夜の闇へ。
そうして、狸田 愛は姿を消した。

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05/18(Fri) 10:31
第六話『鬼の帰還』
節制ちゃん

「八尾っちー、学校来ても大丈夫なのかぁ?コッコちゃんから聞いたんだけど…何かとんでもない病気で病院に緊急搬送されたとかされないとか…」
「随分と大袈裟に伝わってるのな…別に大した事じゃないよ、現に一日で治ったし…。それに、単位や授業の事を考えてたら休んでなんていられねぇよ」

朝一の学校、先日の病院疲れが原因か、珍しく寝坊した俺は遅刻ギリギリの所で教室に入った。
すると、これまた珍しく遅刻せず定刻前に席についているヨッシーがいて、そんな彼と会話しながら席につく。

「病気なら公欠に出来そうなもんだし、ノートなら…」
「ヨッシー、心配は有り難いけど…そうなったら逆に俺の体調が悪くなる、ドン底に、これだけは断言できるね」

自分の話題だと感付いたのか、チラチラとこちらを伺う委員長の方へ顔を向ける。
そうすると必然的に目が合うわけで、委員長は慌てた様子で前を向いた。
その事を確認してから、ヨッシーの方に向き直る。

「分かるだろ、ヨッシー…これ以上言わなくても」
「あぁ、納得。悪いな、気が付かなかった」
「いや、別に気にしちゃいないさ。そういや、ウチの茨子が世話になったみたいだな…迷惑かけた。これ、大したもんじゃないけど…良さんと食べてくれ」

俺は、鞄から取り出した大量の鮭缶(中骨入り)を入れたビニール袋をヨッシーに突き付けた。

「にゃはは、俺達は親友だろー?別に気にする事ねぇのにー。八尾っちも律儀な男だねぇ………って、うぉ!?こ、ここっ、これは!?金の缶詰でお馴染みのねこみこ食品が販売する世界一美味いと言われている伝説の鮭缶!しかも中骨入りぃいいい!?」

中身を見たヨッシーは、俺の手を取り感涙を流しながら言葉を続ける。

「サンキュー、八尾っち…これでしばらくは姉さんも大人しくなる…ううっ、ありがとう…本当にありがとう…」

そう言って手を離し、受け取った鮭缶を大事そうに鞄にしまうヨッシーを見て、銭兄に頼みこんで大量に買い込んだ甲斐があったなぁ、なんて思っていたら突然頭に衝撃が走る。

「楽しそうな所で悪いんだが二人とも。出席の返事くらいしてくれよー?」
「「すいません…」」

どうやらヨッシーも叩かれたらしく頭を押さえていた。
お互いそれに気が付き、顔を見合わせて苦笑。
こうして、祈常高校の『珍しい』一日が幕を開けたのだった…。

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