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12/19(Mon) 09:44
節制ちゃん

「八尾…」
「はいっ…てぇ!?」

返事をしようと前を向きかけた瞬間に、急カーブの遠心力で身体が飛ばされそうになる。

「危ないから…前を向いてしっかり掴まれ………」
「良さん…もうちょい早く言ってくださいよ…吹き飛ばされるかと思った…」

俺が、その小さな身体にしがみついて死亡を回避した横で、茨子は嬉しそうに悲鳴を上げていた。
…タフだな、意外と。

「…もうすぐ国道に入るから…なるべく顔を下げていろ…」
「早い…どんだけスピード出してるんですか…?」
「…聴いたら、共犯だぞ…?…それでも聴きたいか…?」

フルフェイスヘルメットのせいで、表情こそ伺えないが…いやらしい笑顔が目に浮かぶので、それ以上は何も言わなかった。

それからは早いもので、走る車を次々と追い抜き追い越しを繰り返し、その途中で白黒の車に追われながらもそれを振り切り何とか祈常駅前に辿り着いた。

「ん…本当にここでいいのか…?」
「えぇ…ここで結構です。これ以上行くと、帰りが大変でしょうし…よいしょ、っと」

送ってくれた彼女に礼を言いつつ、モンスターマシンから降りる。

「いやー!楽しかったぁ!姉御、また乗せてねっ!」
「ふっ…気が向いたらな…それでは二人共…また会う日まで…」

ニヤリと笑い、来た道を颯爽と帰っていく良さんを見送り、俺と茨子は帰路を急ぐ。
蓮香、怒ってなきゃ良いけど………。


歩くこと数分。


良さんのお陰で、予想以上の早さで我が家に着けそうだ。
これなら蓮香も怒りはしないだろう…が、しかし…それも蓮香が先に帰っていればの話だ。
もしかしたら、俺達より遅いかもしれないしね。
どちらにせよ、早く蓮香の顔が見たいな、うん。
なんて、口元を緩ませながら歩いていたら、あっという間に我が家が見えてきた。
遠目ではあるが、何やら玄関前に人影が見える。

「蓮香かな…?」
『お兄ちゃん、隠れてっ!』

俺が、目を凝らして家の前の人影を確めようとしたら、小声で喋りながら茂みの中に俺を引っ張り込みながら入る茨子。

『何するんだよ』
『お兄ちゃん、良く見てよ…ほら』

彼女に影響されて、俺も小声で返すと、茂みに空いた小さな穴から見るように促してきた。
釈然としないものの、言われた通りに穴を覗くと………。

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12/19(Mon) 09:46
節制ちゃん

『あれは、蓮香と…銭兄!?』

何やら、二人はとても親しげな様子で話している。
流石に気になる俺は、息を殺し、耳に感覚を集中させて会話を盗み聞こうと試みる。

「…ふふっ…懐かし……銭…」
「いや………こそ………になって」

会話は断片的にしか聞き取れない。
やはり、俺の耳じゃ無理があるか………。

『お兄ちゃん』
『…ん?』
『イメージ、もっと強くイメージするの』

俺の心を読んだように喋る茨子に従い、言われた通りにイメージを膨らませていく。

『自らに狐耳があるように』

『雑音を消して、二人の声だけに的を絞る』

すると…不思議なことに、二人の会話がまるで目の前で話しているかの如く聴こえてきたのである。



「しかし…こんな所で再開するとはな。しかも、我が旦那の兄貴分とは…くくっ、これも奇妙な縁じゃな」
「えぇ、僕も驚きましたよ。まさか、縁が狐に入れ込んだ理由が九狐様とは」

…どうやら話の感じからして、二人は古くからの知り合いようだ。
出会ったときは、そんな素振りも見せなかったのに…。

「そう言えば、小さい頃の縁はどんなじゃった?」
「うーん…そう、ですね…今よりは感情表現が豊かでしたね。『あの』事故以来、少々暗くなったかな…?」
「そうか…そう、か」

あの事故、という単語に蓮香の表情が変わる。
嬉しそうで、それでいて悲しいような…そんな複雑な顔。

「…運命だったのかもしれんな…」
「詩人ですね、九狐様」
「…からかうな、銭。お主の小さい頃からの悪い癖じゃ…全く」
「はははっ!すみませんね…」

そこで会話が途切れ、沈黙。
そして、蓮香が屈み、深いため息をついて膝を抱えた。

「おや、どうしました?」
「…縁が帰ってこぬ…と思ってな。もしや、黙って出たことに腹を立てて、ワシを捨てて出ていってしまったのかのぉ…」
「くくっ…」
「…銭?」
「あっはっはっはっ!くくくっ…九狐様は愉快ですね…」
「なっ!何がおかしいのじゃ!?」

蓮香は、突然笑い出した銭に憤慨し立ち上がった。

「いやいや、申し訳ない…くくっ。心配しなくても大丈夫ですよ…縁はそんな男じゃないです。それに…腹を立てて家を飛び出したとしても…九狐様の安否が心配で、真っ先に僕を殺しに来るかな、うん」
「………え?」


『バレてるね、お兄ちゃん』
『う…なんかムカつく…アホ兄め』

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12/19(Mon) 09:49
節制ちゃん

「しかし、心配性ですね…」
「しっ、仕方無かろうに!ワ、ワシは………?」

と、会話を中断してコチラを見つめる蓮香。
もしかして、ついにバレたか…?

「…縁…かえ?」
「はははっ、それじゃあ邪魔者は帰るとしますかね…」

そう言うと、銭兄はこちらに向かい迷いなく歩いてきた。

『わわわっ!?コッチに来るよ、お兄ちゃん!?』
『いや…今更焦っても遅いよ茨子…』

案の定、俺達を守っていた茂みは開かれ、見慣れた笑顔がそこに現れる。

「盗み聞きとは感心しないな、ユー」
「…悪いとは思ってるよ」
「はははっ、なら良い。それじゃあ、蓮香ちゃんを大事にしろよー?」
「言われなくても」

俺の頭を二、三度くしゃくしゃと撫でると、銭兄は口笛を吹きながら去っていった。
そして、俺は蓮香の元に。

目の前に行くと、彼女はバツの悪そうな表情を浮かべて目を泳がせている。

「あ…縁…その…」
「あー…と、ただいま」

俺の言葉に伏せていた顔を上げ、不思議そうな顔をした蓮香にもう一度言う。

「ただいま、蓮香」
「お…おかえりなさいじゃ、縁」

暗い顔をした蓮香を見てたら、なんだか心が苦しくて。
俺は、屈んだ彼女の頭をそっと撫でた。

「おかえり、蓮香」
「ふふっ…ただいまじゃ、縁」

彼女も、それで心の支えが取れたのか…。
いつもの笑顔で応えてくれた。

「さ、入ろうか。外で待つのは寒かったろ?」
「ふふっ、なに…縁の事を考えていればポカポカじゃ」
「何気恥ずかしい事言う…」
「赤くなって、可愛い奴よのぉ…どれ!今日はワシが手料理を作ってやろう!」
「…本気か?」
「ぬぁ!?その目は疑っておるなぁ!見ておれ、そして味わうが良い!九尾狐の底力をー!!!」


妙に気合いが入っているので、一抹の不安があるものの、蓮香に夕飯の支度を任せてみた。


すると………。

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12/19(Mon) 09:51
節制ちゃん

「し、信じられない………何この料理………ホントに蓮香が作ったの?」
「えっへん!見たか、縁!九尾の狐に不可能は無いのじゃー!こーんこんこんっ!」

と、高笑いをする蓮香。
それもそのはず、アレほど料理が苦手だった蓮香が、ものすごく完成度の高い手料理の数々を俺に振る舞ってくれたのだから。
手際こそまだ悪いが、味も見た目も最高ランクを上げても良いくらい。
…店出せるぞ、これ。

そんな夕食を平らげ、蓮香と食後のお茶を飲みながら雑談を興じる。

「成る程…出掛けてた理由はコレだったのか」
「うむ…縁を驚かせてやろうと思って、毎日料理の修業に行っていたのじゃ」
「…大変だったろ…?」
「えっ!?…あ、いや、この程度、九尾狐なら軽いもんじゃよ、えへへへっ」

照れ臭そうに笑いを浮かべて、頬を掻く蓮香。
その手は、絆創膏や包帯だらけで実に痛々しかった。
俺のために、綺麗な手が傷だらけになるまで練習したんだな………あぁ、もう。

「蓮香」
「な、何じゃ?」
「…愛してる」
「…わ、ワシもじゃ…縁………ん」

俺は、照れる蓮香にそっとキスをした。
その柔らかな唇の感触をしっかりと確かめる。
唇を離して、余韻を味わっているときに、ふと頭に何かが過る。



『何か、大事なことを忘れている気がする』



しかし、目の前にいる潤んだ瞳を見れば、そんな疑問など消し飛んでしまうわけで。

「あ、あの…縁…もう一回してくれんか…?」
「あはは、そんなこと言うと何回でもしちゃうよ…?」

蓮香が至上な俺は、ひたすら至福の一時に心を蕩けさせるばかりであった…。

















「はぁーくしょんっ!?…うぅ、寒い…完全に入るタイミング逃しちゃったよー…茨子ちゃん、今夜は野宿でしょうか?…ぬぁー!アタイも彼氏欲しいよー!!!」



そうして、茨子は身を震わせながらも夜を過ごした…。
縁が、そんな彼女を発見したのは翌朝だったとか………。

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01/01(Sun) 22:37
第四話・閑話『風邪引き狐一匹』
節制ちゃん

春が終わりを告げ、暑い夏が始まろうとするこの時季。
こういった季節の変わり目というのは、得てして体調を崩し易いものである。

それは、人間だろうと狐だろうと違いはないようで…。



「それで、コッコちゃんはまだ寝込んでるのか?」
「あぁ…昨日なんて、飯も食わずにずっと寝てたよ」

休み時間。
まさにそんな時季、風邪を引いた茨子の話をネタに喋る俺とヨッシー。

「…マジか…心配だな」
「まぁね…あの元気な茨子が静かだと、流石にな」
「んー…そうだ!お見舞いに行って良いか?フルーツでも食えば少しは元気になるだろ!俺、買っていくからさ!」
「ヨッシー、お前っ…」

何だかんだで、茨子は大切な義妹な訳で…その気遣いが心に染みる。
普段はアホだけど、こういった所はしっかりしてるよな…うん。
少し見直したよ、ヨッシー。

「…サンキュー、ヨッシー」
「ハッハッハ!何言ってるんだよ、八尾っち!友達としてこれくらい当然だろー?」

と、そんな台詞を吐きながら、机の横に掛けてある鞄を上に置いて、授業道具や卓上フィギュアやらを片付け始めるヨッシー。



いやいやいや。



「何してんの、ヨッシー」
「ん?…見りゃわかるだろ、帰る準備さ!」
「まさかとは思うが、今から見舞いに行くとか言うんじゃないよね?まだ二限目終わったばかりだぞ」
「馬鹿っ!授業よりも大切なもんがあるだろ!それの一つが見舞いだ!…それに、次の現国面倒だし…って、訳だ!ほらほら!八尾っち、サボるぞ!帰る準備をしぶらはっ!?」

捲し立てるヨッシーの脳天に踵落としをくれてやる。
…前言は撤回しよう、やはりコイツはアホだった。

「馬鹿はお前だ、戯けが…終わってからににしとけ。ただでさえ、俺もお前も単位が心配なのに…ヨッシー、また留年するぞ?」
「ふふっ…久々に喰らったぜ…八尾流、頭蓋砕き…威力は落ちてないみたい…って、イデデデ!グリグリすんなー!?ハゲるっ、ハゲるぅ!」
「あのなぁ、少しは人の話を…?」

不意に勢い良く扉を開ける音がしたので、そちらに顔を向ける。

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