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12/19(Mon) 09:23
節制ちゃん

それから、何駅か通り過ぎてからの事である。

「ペッ、ペペロンゾーラ!?」
「…いや、どっちかにしろよ。おはよう、茨子」

謎の奇声と共に、景色を見ながらすっかり眠りについていた茨子が目を覚ました。

「う、おはよう…お兄、まだ着かないの…?」
「あと、2駅だったかな…」
「えー…ならもう少し眠………ん?」

突然、鼻をクンカクンカと動かして、必死に周囲の臭いを嗅ぎ始める。

「どうした、ペペロンゾーラの匂いでもしたのか?」
「ん、ちょっと静かにして」

珍しく真剣な表情で俺の冗談を手で制し、尚も鼻を動かし続ける茨子。
しかし、目的は達成出来なかったようで、少々不安げな表情で座り直す。

「むー…気のせい、だといいけど…」
「で、結局何の臭いがしたんだよ」
「知りたい…?…実は………」
「…実は?」

俺の問いに対して、黙りを決め込む。



はっ!?



もしかして、蓮香を狙う新たな狐の刺客が乗っていたのか………!?






「ぐぅー…」
「寝てんのかよ!?お兄さん、深読みして損したよ!」

と、結局臭いの件は有耶無耶にされたまま、俺は目的の駅に到着する。
寝惚けた二人を抱え引きずり、何とかホームに。

「いやー!良く寝た!なっ、八尾っち!」
「へぇ、随分自然が多いじゃん!空気が美味しい!ねっ、お兄ちゃん!」
「お前らさぁ………いや、もういいよ………突っ込むのも馬鹿らしいし」

腹からこみ上げた黒い何かを、ため息と共に吐き出して周囲を見回す。
『大山音(おおやまね)駅』と書かれた、錆び付いて今にも壊れそうな看板以外は何もない、閑散とした駅。
茨子の言う通り、自然そのままの景色が周囲を埋め尽くしている。

「へぇー、大山音って言うんだ、ココ………って、あ」

物珍しそうに看板を見ていた茨子がそれに触れると、バキッ、という音と共に看板は死んだ。
涙目でコチラに助けを求める狐が一匹。
それを見た根子月は、腹を抱えて爆笑する。

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12/19(Mon) 09:25
節制ちゃん

「いや、それ、いっつも勝手に壊れるから気にしないで!」
「…ホント?…お仕置きとかない…?」
「大丈夫、大丈夫!俺なんて、もう三十回は壊してるから!」
「いや、そんなもの放置するこの村はどうなんだ…?…いい加減、村長に言って新しいの買えよ…」

何度か来たことがある俺も、一度壊したことがある。
その時も、今とほぼ同じ台詞を口にされた。
因みに、その時は十五回だった根子月の破壊数。
何故、更新するんだろう………?

「ん?…あぁ、村長ボケてるからすぐに忘れるんだよねー」
「…成る程」

と、いう訳で…壊れた看板を放置して駅を出る。
整備されていない地面を歩き、根子月宅へ進む。
坂道を上がる途中、農作業をしている青年達を見かけたり、片眉を剃った格闘家らしき人物などとすれ違いながらも尚進む。

「ヨッシー…まだー…アタイ、お腹減ってきたよ…」
「おう!もうすぐ着くから頑張って!」

険しい山道を進むこと、十数分。
ようやく家が見えてきた。

「よっしゃ!着いた!」
「相変わらず奥まった所に住んでるな…」
「茨子ちゃん、空腹也〜…」
「二人とも、お疲れ!まま、狭い家だけで入って!」

なんて言いながら、今まで見た中で一番大きな家の玄関を開く。

「「おじゃましまーす」」

と、二人して入ると…根子月家、恒例のもてなしを受けることに。

「にゃー」
「およ?猫りーたではないかー!よしよし、ごろごろー」
「あっ、茨子…屈んじゃダメ」

近寄ってきた一匹の猫に反応した茨子は、反射的に屈み、その猫を撫でた。
俺は、止めようとしたが…時、既に遅し。


「「「にゃー!」」」

奥から、今だとばかりに無数の猫達が茨子に飛び掛かってきた。
そして、あっという間に猫まみれになった茨子。

「ぬぁー!?なんだこの猫りーた達は!」
「あははっ!コッコちゃん、気に入られたね」
「…しばらく、そのままだな」
「なにぃ!…うひゃあ!?こらっ!どこを触っている!…くっそー!アタイの本気を見せてやるっ!覚悟しろ猫ども!!撫で殺してくれるわー!!!」

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12/19(Mon) 09:27
節制ちゃん

妙なスイッチが入り燃えている茨子を置いて、俺と根子月は居間へ。

「八尾っち、何が良いー?」
「何でも良い」
「じゃあ、オレンジジュースだな。ちょっと待ってて」

そう言って、根子月は台所に消えた。
勝手に座るのも何なので、入り口付近で立ち呆けている。
すると、足元に柔らかな何かが触れたのを感じる。

「ん…?…って、あぁ。久しいね、アッシュ」
「………ナゥ」

静かに鳴く猫、アッシュ。
彼女は、根子月曰く『変わりもの』の最長老らしい。
家に居る他の猫と仲良くするわけでもなく、かといって、人に懐く訳でもない。
いつも一人でフラフラ、現れたり消えたりを繰り返しており、猫に好かれる体質の根子月ですら滅多に見ないし、あまり懐かないレアキャット…らしい。
しかし、そんな風に言われても、俺としては実感が湧かない。
何故なら、俺は来る度彼女と遭遇するし、こうして擦り寄ってきたりもするのである。

「そんな君が『変わりもの』だって言われても…ねぇ?」
「…ナァー」
「第一、君のが猫らしいと思うけどなぁ…ここの猫は人馴れしてるせいか、あんまり猫っぽくない気がするのは俺だけなんだろうか…?」
「…ナゥ」

屈んで彼女を撫でると、気持ち良さそうにノドを鳴らして返事をしてくる。
もしかしたら、親近感を覚えてくれてるのかもな…俺も『変わりもの』って呼ばれるし。

「ナゥ、ナゥー」
「ちょっと、何を頷いてるんだよアッシュ。俺の心読んだのか?」

なんて、そんなやり取りをしていると、台所からオレンジジュースを乗せたお盆を持って、根子月が帰ってきた。

「いやいや、悪い!待たせたな!…って、八尾っち何してんの?」
「ん?………いや、今アッシュと遊んでた…ってアレ、もう居ないや」

視線を足元に戻すと、既にアッシュは居なくなっていた。
どうやら、根子月の気配を察知して逃げてしまったようだ。

「あぁ、成る程ね。相変わらずアッシュに縁があるな」
「うーん…どうなんだろう。単なる偶然だと思うけど」
「どちらにせよ懐かれてるさ…羨ましすぎる!アイツは家の猫の中で一等美猫だからな!」
「や、可愛いとは思うが…ヨッシー程に違いがわからん」
「何ィ!?いいか!あのキャットはだなぁ…」

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12/19(Mon) 09:29
節制ちゃん

と、根子月の『緊急特番!アッシュちゃんの魅力に迫る!』的な企画話を半ばまで拝聴させられた所で、閉めていた入り口の扉が開く。
そして、現れた人物を確認するなり、根子月は身体を硬直させた。

「………やぁ、おはよう」
「あ、良(りょう)さん。お邪魔してます」

現れたのは、この暖かさにも関わらず厚手のパーカーを着込み、それでいて、下は屈めば下着が見えそうな超ミニのスカートにニーソックスで決めている女性。
グレーがかった長い髪を左右で結んだツインテールが目を引く彼女こそ、根子月 良さん。ヨッシーが恐れる姉上様である。

「…好男、おはようは…?」
「おっ、おはようございます姉さん!」

眠たそうな目で睨まれたヨッシーは、お盆を俺に渡して土下座した。

「ん…とりあえず…立ち話もなんだ。八尾、そこのソファーにでも座ると良いよ…」
「あぁ、どうも」

土下座に満足したのか、彼女は小さな手で俺の手を引き、ソファーまで案内してくれる。
そして、俺を座らせると、その横にちょこんと腰かけた。
…相変わらず小さい。

「…小さいのは…嫌いか?」
「いや、寧ろ最近は小さい娘の方が…って、何を言わせるんですか」
「ふむ…そうか…八尾は…幼女に発情するのか…ロリコンなのか…」
「いや、人の話聞いてます?」
「…冗談だ」

上目遣いに俺の顔を見ながらそう宣う。
うぅむ、相変わらず不思議な人だ。

「…八尾…オレンジ、飲んでも良いか…?」
「えぇ、どうぞ。なんならコップも使っていい…って、あ」

俺の言葉を最後まで待たずに、大きなペットボトルのオレンジジュースを両手で持って、直接口をつけてグビグビと音をたて飲み始める。

「あのー…姉さん、八尾っちの分は…?」

少しだけ頭を上げたヨッシーがおずおずと申し立てると、ピタリと動きを止めた。

「…わかってる…少し黙れ…」
「はい!黙ります!」

大きく傾けていたペットボトルを下げて、ヨッシーに向かい一言。
勿論、それに対して即座に体勢を戻すヨッシー。

「…八尾、半分こ…はい」
「え?…あのー…」
「半分こ」

そう言って、先程まで自らが口をつけていたペットボトルを直で俺に差し出す良さん。

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12/19(Mon) 09:31
節制ちゃん

うぅむ…これは受け取りに困るな…色々な意味で。

「…今なら、もれなくおねーさんの唾液入り…わー、おっとくー…」
「通販みたいな販促されても…全然気が進みませんよ、何ですか唾液入りって」
「…更に、今なら狐グッズ」
「いただきます」

俺は、彼女からオレンジジュースを受け取り、一息に飲み始める。
これを飲めば狐グッズ…ボロいな。
どんなのかなー。

「…の代わりに、おねーさんの唾液をもう一本お付けしまーす…わー、おっとくー…」
「そっちかよ!?期待して損したよ!」

俺は、思わず飲むのをやめてツッコミを入れてしまった。
だって…頑張ったのに、狐グッズ貰えないんだよ…?

「…ふふ、また騙されたね…八尾は単純…」
「ぬぁ…狐に弱いことを知られていたなんて…」
「おねーさんは、八尾の事なら何でも知ってるのだ…いつも見守ってるからね…ふふ…」
「怖いですから。ホントはヨッシーから聴いたんでしょう?」
「すまん!猫美ちゃんを人質に取られて、言わないと猫美ちゃんを辱しめるって脅されて!うぅ…」

ちらりと視線を向けると、彼は土下座したまま両手を合わせて泣いていた。

「おー…ばれてーら…あ」
「今度はどうしました?」
「かすてぃらが食べたくなった…好男…かすてぃら」

そう一声かけると、彼は素早く居間から飛び出していった。

「どんだけ恐いんだ…ヨッシー…」
「こんだけ恐いのだ…えっへん」
「俺に胸張られても…全然恐さが分からないです」
「そ…そうか…残念だっ…」

言葉の割に、全然残念そうじゃない良さん。
寧ろ、少し嬉しそう。
その時、居間の扉が勢いよく開く。
俺達は、同時にそちらへ顔を向けた。

「「「「「にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!」」」」」

猫たちが、開いた扉から規則正しく隊列を組んで入ってきた。
そして………。

「おいっちにー、さんしー!にぃーにぃー、さんっしー!」

その後ろから、何故か軍服を着込んだ茨子が、指揮を取りながら現れた。

「全体ぃー、止まれぃ!」
「「「「「にゃ、にゃ!」」」」」


指示が飛ぶと、猫たちはリズム良く止まる。
その猫たちを良く見ると、軍帽をかぶらされていた。
…軍服といい、何処から調達したのやら…まぁ、十中八九、ヨッシーの部屋からだろうが。

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