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12/19(Mon) 09:11
節制ちゃん

とりあえず、満足するまで叫んでから食卓に戻る。
こんな時は美味しいものでも食べて元気だそう、うん。
箸を持ち、蒸ししゃぶしゃぶを………って、もう無いし!?

「八尾っち、ごちそうさまっ!超美味かったぜ!」
「ぷはぁ…ホントホント。アタイをパスタ以外で満足させるなんて…お兄ちゃんは相当なテクニシャンね!」
「…テメェら、人の気も知らないで…くそぅ、俺まだ一口も食べてないのに…」

俺は、悲しくなりながらも残った白飯をかき込んだ。
ちょっぴり塩辛かった。
泣いてなんていないぞ、畜生…。



「うーん…やっぱり食後はブラックよね!」
「あぁ、八尾っちの淹れたコーヒーだから味も良いし…な!」
「はぁ…蓮香…」

飢えた野獣どもに、律儀にも食後のコーヒーまで淹れたしまった俺。
絶賛傷心中。

「何故にあんなアホの所なんかに…」
「アホ?」
「よし、コッコちゃん…それは俺が説明しよう!」

元気の無い俺の代わりに説明する根子月。
それを一通り聞いた茨子は、少々考えた後に口を開く。

「お姉ちゃん、ついに不倫か!」
「うーん…どうなの、八尾っち?」
「んな訳あるか!縁起でもない…そんなことないよ…きっと…」

信じてはいるものの、『不倫』なんて言葉を聞いたものだから…嫌な映像が次々と頭を過る。
…きっと蓮香は弱味を握られて、あのアホにあんな事やこんな事を要求されて、ついには………あ、段々腹が立ってきた…アホ兄めぇ………!

思い立ったが吉日、ということで立ち上がる。

「ん?どったの、お兄ちゃん」
「…ああ、ちょっとそこまで…」
「因みに八尾っち、包丁持って何処に行く?」
「…アホ兄を殺してくる…」

台所から、名工が作ったというお気に入りの良く切れるウン十万円の包丁『狐之尾』を持っていざ出陣!
…ってところで二人がかりで止められた。

「ごめん!悪ノリが過ぎたよ!謝るから行かないで!」
「落ち着け八尾っち!早まるな!!」
「離せー!蓮香を助けに行くんだー!畜生ー!!蓮香ー!!」



数十分後。



「はぁ…はぁ…お兄、ごめんなさい…」
「いや、二人ともマジごめん…俺が間違ってた…」

「ふぅ…なんとか正気に戻ったみたいだな…」

二人の必死の説得により、ようやく邪念から解放された俺は包丁をしまって絶賛正座中。

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12/19(Mon) 09:14
節制ちゃん

「二人の言う通り、蓮香を信じて待つよ…」
「うん、それが正しい判断だぜ!」
「狐分補給はアタイにお任せっ!」

二人の優しさ…か、どうかは正直疑わしいが…とりあえず感謝。
危うく前科がつくところだったからね。

「さっ!飯も食ったし、学校も休みだし…俺ん家で遊ぼうぜ!」
「…あぁ、そういやそんな話だったか…蓮香の事ですっかりさっぱり忘れてたよ…」
「えぇー!?お兄、遊びに行くのっ!?せっかくお姉ちゃんが居ない間に既成事実でも作ってやろうと思ってたのに!?」
「…いや、とりあえず黙って」

毎度毎度…この狐は学習能力が無いと言うか、煩悩にまみれてると言うか…。
お兄ちゃん、この義妹の将来が心配だよ。

「まぁまぁ、人数は多い方が良いし!良かったら、コッコちゃんも来る?」
「おい、ヨッシー…俺はまだ遊ぶなんて一言も」
「行く行く!いつも家で食っちゃ寝してるのに飽きてたところだったし!」
「いや、ちょっと人の話を」
「そうか!なら良かった!今日は三人でパァーッと行こうぜ、パァーッと!!」
「おぉ!パァーッと!?良いねっ!じゃあ早速、レッツコーンッ!」
「テメェら人の話を聴けぇえええ!!!」

あまりにもゴーイングマイウェイな二人に喝をいれ、とりあえず自らの食器を片付けさせる。
その後、洗い物までキッチリやらせてから、俺は蓮香の帰りを待つために惰眠を貪る事に…。



「いやー!獣ッ娘を家に招待するとか初めて!夢のようだ!!テンション上がってきたぁ!!!」
「何も知らない初心な狐を、言葉巧みに家に連れ込むなんて…キャー!ヨッシーの変態!!」
「…少し黙れよ、お前ら…道行く人々の視線が痛い」

…するはずだったが、二人に泣いて懇願されたので、渋々承諾して今に至る。
テンションについていけないので、早くも帰宅希望。

「そういえば、ヨッシーの家って遠いの?」
「いや!すぐ着くよ、コッコちゃん!」
「…自分の感覚でモノを言うな、ヨッシー…電車を利用する距離だろうが…」
「えぇー!?」

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12/19(Mon) 09:16
節制ちゃん

そう、実は根子月の家は俺の家から離れている。
と、いうか…山の方にあるので、離れているどころの騒ぎじゃない。
それこそ俺が言った通り、ごく一般的な人類なら電車を利用するような距離。
それを、この男は毎度徒歩でその距離を行ったり来たりしているのだから気持ち悪い。

「と、言う訳で…大人しく電車使おう」
「えぇー!?八尾っち、そりゃないぜ!?俺と一緒に爽やかな青春の汗を流そうよっ!コッコちゃんもっ!きっと楽しいから!」
「「ゴメン…無理」」

手を握られ、キラキラと輝く瞳で見つめられても、嫌なものは嫌だ。
そんな訳で、一同進路変更。
最寄りの駅に、レッツコーン。



早々に駅に駆け込み三人分の切符を買い、電車に乗り込む。
車内は、出勤ラッシュが過ぎたせいか空いていたので、適当な席に並んで座る。

「おー、電車久しぶりだ!」
「俺もだ!八尾っち、駅弁売りに来ないかな!?」
「…いや、お前らさ…修学旅行の中学生じゃ無いんだからさ、落ち着けよ…」

今更ながら、歩いていた方が平和だった気がするが…そんな思いも、発車のベルと共に閉まる扉と一緒に消えてしまった。


ガタン、ゴトン。


電車の走る音がする。
走り出せば静かなもので、一人は景色を眺めるのに、もう一人は居眠りをするのに夢中である。
そんな中、挟まれている俺は車内観察。

首を縦に振って眠りこける中年男性。
文庫本を読みふける制服の女子高生。
楽しそうに話をする親子。

静かな中でも、物事は動いているんだな…と、実感。

「あの、すみません」

そんな絶賛観察中の俺に声がかかる。
声の主に視線を移すと、そこには茶色のポニーテールが特徴的な小柄で可愛らしい女の子が。

「えと、なにか?」
「あのー…人を探しているのですが」

おや、何やら面倒事のようだ。
…ふむ、どうしたものか。

「友達がいなくなってしまって…長髪長身で、とても綺麗な子なんですが…見てませんかね?」

はて、そんな人は電車に乗る前も乗った後も見てないな。
しかし、例え居たとしても…俺が気に留めるとも思えないが。きっと狐耳も尻尾も生えてないだろうし。
と、心当たりも無いので順当な答えを返す。

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12/19(Mon) 09:19
節制ちゃん

「申し訳ありませんが、見かけていませんね…」
「そう、ですか…」

すると、予想通りな反応を示す。
たが、その後の台詞は意外なものが飛び出した。

「じゃ、じゃあ…九実穂(くみほ)に行きたいのですが…何処で降りれば良いですか…?」
「九実穂?」

そう、『九実穂』とは九実穂町のことであり、俺が住んでる町である。
そして、俺達が先程乗車した駅『祈常駅』を降りればすぐに着く。
それなのに、彼女は未だ電車の中。
九実穂はどんどん離れていく。

「えと…狙ってます?」
「はい?」

首を傾げて不思議そうにする彼女の表情から察するに、恐らく本気だ。

「…いいですか?とりあえず落ち着いて聴いてください」
「え?…はい」
「九実穂、通り過ぎましたよ」
「………え?」
「通り過ぎました」
「…もう一度」
「とーりすぎました」

彼女との間に微妙な空気が流れる。
お互いの愛想笑いが妙に痛々しい。

「はぁー…なにやってるの、ボクの馬鹿…」
「まぁ、次の駅で降りれば大丈夫ですよ」

空気に耐えられなくなり、先に折れたのは彼女だった。
深いため息をついて落ち込んでいる。
…流石に可哀想だ。

「…旅行ですか?」
「え!?………旅行?」
「いや、ここら辺の人で九実穂を知らないってのは変ですし…それに、ほら…貴女は友達を探してるって言ってましたから、旅行者かと思って」

それならば降り損ねたのも、友人を探しているのにも合点がいく。
何だかんだで、九実穂にある祈常神社には相当な御利益があるらしく…たまに観光客に道を聞かれることもあるので。
すると、彼女は急に表情が明るくなり、俺の顔を見ながら激しく頷いた。

「そっ、そうなんですよ!分かってくれますか!?」
「…えぇ、まぁ」
「いや、助かりました。お兄さんに話しかけて正解でした!」

にへらっ、と柔らかい笑みを浮かべて手を打つ。
…良く分からない子だな…。

「皆さん、中々話しかけにくくて…」
「おや、俺は話しかけやすかったんですか?」

その言葉に、彼女はスッと指を指す。
その先には、俺のポケットからはみ出ていた、蓮香特製・狐尻尾ストラップが。

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12/19(Mon) 09:20
節制ちゃん

「ちょっと恐い雰囲気だったけど、その尻尾を見て大丈夫かなって思ったんです。尻尾好きに悪い人はいません!」
「あー…そうか、成る程…」
「そうです!お兄さんは狐好きなのですか?」

すっかり信用されてしまったのか、最初の警戒心など何処かに消えて、今はコロコロと表情を変えながら楽しそうに喋っている。
俺の方も、他人と会話する時に感じる不快感が無いことに驚きつつも話を続ける。

「えぇ、好きですよ。とってもね」
「にゅふふ、お兄さん嬉しそう…本当に好きなんですね」
「はは、まぁね」

嫁は狐ですから。

「じゃあ、私の好きなのは何か当て………」

と、彼女が何か言いかけた所で、車内に駅到着のアナウンスが入った。

「っと、ここで降りなきゃヤバイよ?」
「うー…残念ですぅ…せっかくお兄さんと仲良くなれたのに…」
「まぁ、縁があればまた会えるさ」
「そうですねー…会えるといいな」

そう言って、彼女はゆらゆらとポニーテールを揺らしながら他の乗客に続いて電車を降り、ホームの中央辺りで振り返る。

「お兄さーん!良かったら名前!教えてくださーい!」

大げさに叫ぶ彼女が微笑ましくて、珍しく俺は体面も気にせず叫び返した。

「八尾!八尾 縁ー!八本の尻尾の縁だ!」

すると、彼女はほんのり頬を朱色に染め、はにかみながらも叫んでくる。

「八尾さーん!良い名前です!じゃあ、お返しにボクの名前を教えておきます!僕の名前は、た…」

しかし、その叫びを最後まで待つことなく電車のドアは閉じ、声はコチラに届くことは無かった。
そうして、元気に手を振る彼女を残して電車は走り出す。

「ふむ、面白い子…だったな。」

何と無しにそう呟いて、俺は彼女に小さく手を振り返しながら、俺達以外に誰もいない電車に揺られるのだった。

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