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02/16(Thu) 19:53
節制ちゃん

「狸族の者は、臆病な性格の奴が多い。故に、事を慎重に進めるであろう…戦となれば尚更じゃ。準備に相当な時間を費やすはずじゃから、まだ間に合うかも知れぬ」

いつもは見せぬ凛とした表情で語る蓮香。

うぉー!蓮香、格好良いぞ!素敵だぞ!今すぐ抱き締めてキスとかしたいぞー!そして続きはベットの上だー!

………あれ、なに考えてるんだ…何だこれ…今日の俺、変だ。
茨子だけが、すごく哀れんだ目で俺を見ていたのに気付いて項垂れる。

…もう、寝ようかな…。

そんな俺の思いも知られぬまま話は進むのである。



「ですよね!まだ間に合いますよね!後は九狐様にお力添え頂ければ、万事解決ですっ!!」
「うむうむ」
「で、茨子ちゃん。九狐様はどちらに?」

その言葉に、ものすごい勢いでテーブルに頭を叩き付けた蓮香。
心なしか、テーブルの上で握った拳がプルプルと震えている。
その光景を苦笑いしながら見届けた茨子は、指を指してこう言った。

「えーとね…コレ、なんだよね」
「コレ?」
「うん、この隣のチンチクリンがお姉ちゃん」

愛さんは絶句した。
そして、後に絶叫。

「う、う、嘘っ!?この小さな小狐巫女さんが九狐様!?だって九狐様といったら美しい白銀色の長髪を靡かせて艶かしい微笑みを浮かべるまさに世界が嫉妬する美貌を持つ絶世の九尾狐だったじゃないですか!?」
「…よくもまぁ一息で…」
「縁、この狸娘食っても良いかのぉ?」
「まぁまぁ落ち着け…蓮香は今でも十分可愛いから」

そう言って、包丁を取り出して立ち上がった彼女を羽交い締めにして宥める。
それを確認した茨子は、苦笑いしたまま対応した。

「あはは…まぁ、ちょっとコレには色々と事情がありまして…斯く斯く然々…」
「えー!?九狐様、八尾さんの命を助けるために力を失っちゃったの!?」

涙いっぱいの瞳で俺を見つめる愛さん。
その視線が痛いこと痛いこと…。
いや、ごめん…悪いとは思ってるんだ…だからさ、そんな目で見ないで…頼むから…。

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02/16(Thu) 19:55
節制ちゃん

「と、言う訳で…お姉ちゃんをキズモノにした責任を取る形で二人は夫婦になりましたとさ…めでたし、めでたし」
「ふ、夫婦!?八尾さん、結婚してたんですかっ!?」

それを聴いた愛さんは、部屋の隅で蹲る。
周囲に色が移りそうな位、真っ青なオーラを全身に漂わせて…。

「おーい、らぶりーん。大丈夫かー?」
「ボクは、知らないこととはいえなんて失礼な事を…しかも八尾さんが九狐様の旦那様だったなんて…せっかく素敵な人見つけたと思ったのに…ブツブツ…ブツブツ…」

うわぁ…何かとんでもなく落ち込んでるよ…。
と、眺めていると…不意に脇腹をつつかれた。

「ん?なんだよ、茨子」
「や、お兄とらぶりん、面識があったみたいだけど…何処で知り合ったのかなー、と」
「あぁ、なんだそんなことか…ほら、何時だかヨッシーの家に遊びに行く時に電車乗ったろ?その時にちょっと。まさか、探してるのが蓮香とは思いもよらなかったけどな」
「へぇー、ほぉー、ふぅーん…そうなんだぁー」

聞き終えると、何が愉快なのか知らないが、いやらしい笑みを浮かべる茨子。

…何だっていうんだよ。

「縁ー」
「今度は蓮香か、何?」
「狸と人間、味比べして見たくなったわい…どっちが美味いかのぉ…?」

そう言って包丁を輝かせる。
いや、どっちも食うな。
てゆうか、何故標的が増えた?

「まぁまぁまぁ!皆、とりあえず落ち着こうよー!ほら、お腹も減ってきたし…お昼でも食べ」
「ポンポコポーン!それならボクにお任せですぅー!」

茨子が場を取り持とうと喋りだしたのに合わせて、復活した狸娘が大きく手を上げて叫んだ。

…結構立ち直り早いな…。

「およ?もしかしてらぶりん…アレやっちゃうの?」
「はい!今までのお詫びも込めて最高の昼食を作らせて頂きます!」
「あー…それは…どうする、二人共?」

露骨に困った表情を浮かべて、こちらに回答を振る茨子。
明らかに『代わりに断れ!』と顔に書いてある。
うーん、困ったな…断ったら絶対に落ち込むしなぁ…。
しかし、何故に茨子は断れと言うのだろうか?
もしや、とんでもなく料理がヘタで、それを自覚していないとか?
だてしても、それをツッコめば落ち込みそうだしな…この狸娘は。
はぁ…どうしたもんか。

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02/16(Thu) 19:58
節制ちゃん

しかし、俺のそんな気遣いなど気がつく訳もなく、蓮香がその場を一刀両断した。

「?…茨子、その狸…いや、愛とやらは料理が下手なのか?」
「ちょ!?蓮香!余計なこと言うな!」
「いや…でも、茨子の顔には代わりに断れと書いておるぞ?」
「そーゆーところで空気読まないでよ、お姉ちゃん!」

すると、やはり予想と違わぬリアクションで応えた愛さん。
再び部屋の隅で蹲り、ブツブツと何かを呟きだす。

「どーせボクなんて…可愛くないし…最近太ってお腹のお肉プニプニだし…どーせボクなんて…うぅ…」
「だっ、大丈夫だよらぶりん!らぶりん全然太ってないし可愛いから!ねっ!?お兄ちゃん!?」
「あ、あぁ!それに今、ものすごくお腹が減ってきた!あー!愛さんの料理が食べたいなー!」

俺と茨子の決死のフォローで少しだけ元気が出たのか、愛さんは涙目ながらに振り返る。

「ほ、本当ですか…?」
「ホントもホント!ねっ、蓮香?」
「いや…ワシは別に不味い料理を食べる趣味なぞ無いぞよ?」
「「空気読めや!?」」
「うわーん!どうせボクなんてー!?」


と、そんなやり取りを幾度も繰り広げた末…ようやく愛さんを宥める事に成功した。



そう、確かに成功したのだか………。

























「茨子さん」
「………あんまり聴きたくないけど、なんでしょうか?縁お兄様」
「…我々の目の前でグツグツと煮えたぎり大量の湯気を上げる、この季節には絶対に食べたくない物ランキングの五指に入るであろう、季節に全くと言っていい程そぐわないコレは、いったい何でしょうかね?私には鍋料理に見えるのですが…」
「お気を確かに、縁お兄様………目の前のコレは、間違いなく鍋料理と思います」
「………ですよね、わかってました………せめて、幻覚でも良いから…かき氷とかに見えて欲しかった………」



二人で、まったく同時にため息をつく。
そう、宥めるのに成功したのは良かったのだが、このクソ暑い時に激熱鍋を食う羽目になった。
一難去って、また一難といったところか。
ともかく、俺達はこの試練とも拷問とも取れる状況に立ち向かわなければならない。

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02/16(Thu) 20:02
節制ちゃん

『『この我慢大会にっ!!!』』



「二人共、体調不良でお休みになった九狐様の分まで一杯食べてくださいね!」
「「ははっ…はぁ…」」

蓮香がいると面倒だったので、昨日買っておいたサラダ巻きを餌に隣の部屋に突っ込んだ。
こんな状況、俺の嫁なら十分と待たずにキレて雷を落とすだろう。
物理的に。
故の隔離だったが、今思えばその方が良かったかも知れないなぁと、全力で後悔中。

「お兄…目が遠いよ?」
「あ、いっけね。危うく他界するところだった」
「うふふ、八尾さんそんなに鍋が好きだったんですねー。作った甲斐があります!」
「あははは…で、愛さん。何故に鍋料理なの?」

俺は、自らの服の中から取り出したガスコンロの上でグツグツと音を立てる、これまた自らの服の中から取り出した土鍋に具材やスープを入れていく愛さんに、それとなーく問う。
とりあえず、何故に服の中からこんなデカイ物が出てきたのかはスルーしておく。
すると、愛さんは笑顔で即答したのだ。

「狸ですから、やっぱり鍋でしょう!だって、狸ですもん!」
「は?」
「狸ですから!!」

うん、ダメだこの狸、頭が沸騰してて話にならん。
狸=鍋、っていう公式が彼女の根底にあるようです。
一体どんな教育を受けて育ったんでしょうね?

「さー!煮えてきましたし、最後の仕上げです!」
「仕上げ?」
「らぶりん…まさか…」
「どばー!!!」

掛け声と共に入れたものは、そう、大量の赤い粉末。

『狸田特製!粉末唐辛子、業務用』

グツグツ煮える半透明なスープが、みるみる内に赤くなり…それはさながら地獄絵図!!!

…食えるのか、これ?

「出来ましたー!愛ちゃん特製地獄鍋、純愛編!」
「あはは…やっぱり、地獄なんだ…」
「お兄…本当の地獄は…ここからだよ…!」
「は?一体どういう事…」

茨子の発言に、疑問の声を上げた俺は直後に理解したのである。
鍋から上がる湯気を吸い込んだ事によって…。

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02/16(Thu) 20:28
節制ちゃん

「!?…ゲホッ!何だコレ!?ゲホッ、ゲホッ!?」
「………これが、らぶりんの作る恐るべき地獄鍋………第一の、試練」
「湯煙地獄!食べる者の視覚、嗅覚、そして味覚を立体的に破壊していく刺激はまさに地獄!これを越えずして地獄鍋を食べる資格は無しですぅ!」

食わす気無いだろそれ!?馬鹿じゃないの、この狸!?
そんな思いも言葉に出来ず、立体的に襲ってくる刺激に悶絶する事しか出来ない俺。
そんな俺の様子を見た愛さんは、片手を頬に当ててウットリとした表情を作り語り出した様に見える。
湯煙地獄でやられた俺の目は、止めどなく流れる涙で視界が歪んでいる為、あくまでも推測。

「ほわぁ…八尾さん、そんな身を捩らせる程鍋が好きだったんですねー…気が合いそうですぅ…」
「…そ、そうなんだよ…ね、お兄…?」
「う゛…う゛ん゛」

喉もやられてきたのか、言語機能に異常が見られる。
このままでは、生命の危機だ…早く片付けねば…!
本当の地獄に行ってしまう…!

「やっぱり!なら早速、次の地獄に行っちゃいましょう!Go to hell!DEATH!」

そんな俺の空気も察せない狸は、楽しそうに流暢な英語で死の宣告を唱えた。
俺の頭上に、カウントダウンの数字が出現した気がしてならない。

「さぁ!次の地獄は血の池地獄!グツグツ煮えたぎる真紅のスープの巻き起こす辛さと汗の大波に飲まれて死んじまえ!ですぅ!………ささ、二人共スープをどうぞー!ぐいっとやっちゃってください!」

飲む気の失せる説明、どうもありがとうございます。
俺は、受け取った小鉢の中で揺らめく赤いスープを眺めて息を飲む。
隣に目をやると…茨子もまったく同じ反応を示しており、小鉢を持ったまま固まっていた。
が、しかし…次の瞬間、決心を固めた茨子が動いた!

「えぇい!ままよ!」

掛け声と共に、赤いスープを音を立てて一気に啜る。
細く真っ白な喉元が、嚥下の度に動く。
そして、全てを飲み干した茨子は、小鉢を乱暴にテーブルへ置いた。

「ぷ…はぁー…っ!」
「Wow!茨子ちゃん、良い飲みっぷり!It's so cool!」

愛さんに手を叩いて称賛される茨子だが、その目は遠く、顔中を玉の汗が伝い、辛さでやられた喉からは、ぜぇぜぇと荒い息が漏れている。

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